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ゆり組といい、今回のめめなべといい、なんか、夢とか潜在意識の世界にいくなあと思いながら読んでます。でも、美しい。とても。続きが楽しみ😊言うほど暗くないよ?
第五章 熱に触れて
初めは驚いていた蓮。
慌てるようにフロントで鍵を受け取ると、「とりあえず移動しよう」と言って、部屋に通された。
扉が開くなり、後ろから蓮に抱きつき背中に頰を寄せた。いつも使っている蓮の柔軟剤の香りがふわっと立ち込めて、胸がギュッと締め付けられた。
匂いまで再現されるなんて。
なんてハイブリッドな夢なんだ……
「やっぱり……蓮の背中、大きいなあ……」
「どうやって来たの?仕事は大丈夫?」
「秘密だよ……言ったらもう会えなくなりそう」
これは俺の夢だよって言ったら、次から同じような夢見れなくなりそうで〝魔法使ったの〟なんて茶目っけたっぷりに笑って見せると、皺を寄せて笑った姿が、ずっと見たかった蓮そのもので安心した。
あんな別れ方をして、離れてしまったのに、夢の中の蓮は優しかった。
「ねぇちゃんと顔見たいんだけど振り向いても構わない?」
背中にピッタリくっ付く俺の手を取って、迎え合わせに顔を突き合わせると、頰を撫でた蓮の手が温かかった。
「泣いてたの?」
涙の跡があると言って、優しく顔を包まれてすぐにでもまた、泣いてしまいそうだった。先程まで部屋の隅に蹲ってカーテンに頰を寄せて泣いていたのを思い出す。
再現度高い夢だ……
「ごめんなさいあの……別れ難くて……辛くて……だからその……」
夢なのに……
それでも嫌われる事の恐怖からか、蓮を直視出来ずに彷徨わせた視線の先に、腰を屈めて捉えられた俺の瞳は、吸い込まれるように蓮に釘付けになった。
「やめよう?俺も悪かった……翔太くんの気持ち分かってたのに優しく出来なくてごめん……それで、いつまでここにいられるの?」
「蓮がお望みならいつまでも//ふふっ」
〝バカいうなよ〟そう言って額をコツンと合わせると、自然と上がった口角に添えられた蓮の唇は、温かかった。
目が覚めたら、きっとまた一人だ。
そう思ったら、今のうちに言っておかないといけない気がした。
「愛してる」
喉に支えて言えなかった〝愛してる〟を夢ならこんなにも簡単に言えちゃうなんて、蓮も目をまん丸くしてやけに素直だねなんて笑いながら、優しく啄むようなキスが降ってきて、俺は幸せで蕩けちゃいそうな程、蓮に首ったけなんだ。
優しくお尻に添えられた、蓮の大きな手に抱えられて、まるでお姫様みたいに大事に抱き抱えられれば、自然と蓮の首に回された俺の腕は、離れてしまわないように、必死でしがみ付いた。〝お願いだからまだ夢から覚めないで〟心の中でそう呟きながら、ベッドに横たわった俺を、愛おしそうに眉根を下げた蓮は〝夢見てるみたいだ〟なんて言って、その一言に、胸がギュッと苦しくなった。
「翔太、大丈夫?」
今朝と同じ言葉……素直になれない俺は、はぐらかして蓮を怒らせた。不安に揺れる瞳に気付かれないように絞り出した〝平気〟は震えていて、勢いよく背中に回された蓮の腕が強く俺を抱きしめた。
「翔太、心配ないから、頑張ろう俺達ーー
愛してる。会いに来てくれてありがとう」
夢でも泣いちゃった……
滲んだ視界の中で、唇が頰に触れたのが分かった。
そのまま首元に落ちてきて、息がかかるたびに、力が抜けていく。
抵抗する理由も、離れる理由も見つからなくて、ただ身を委ねた。
夢だと思えば、拒む必要なんてなかった。
その温度が残るように、無意識に身を縮めた。
蓮 side
「触れても構わない?」
可愛らしく、コクリと頷いた翔太の鎖骨に、唇を押し当てると、異常なまでに冷たい彼の体は、最後に寝室の隅で蹲っていた時に触れた、あの時と同じ体温だった。
急に不安が過ぎる。
突然、前触れなく現れた翔太の精神状態が心配でならない。多くは語らず、言葉を選んでいるようにも見える。〝夢見てるみたい〟と言った俺に、不安の色を漂わせた翔太は、今何を思っているのだろうか。
不安は、安心を求めて、温もりを探した。
ここに居るはずの翔太が、どこか別の場所へ行ってしまいそうな……そんな儚さがあって、必死で彼を求め、繋がった。
鎖骨に触れた唇が、離れることを拒む。
そのまま、軽く歯を立ててしまった。
しまった、と思う前に、翔太が小さく息を吸ったのが分かる。
こんなことをして、もし——
もし、何かが残ってしまったら。
それでも構わないと、どこかで思っている自分がいた。
消えてしまうより、ずっといい。
夢だとしても。
そうでなかったとしても。
しがみ付くように背中に回された腕。舌を抱き合わせて服を剥いだ。確かめるように唇を押し当てて、体の輪郭をなぞった。「くすぐったい」と言いながら身を捩らせ吐息を漏らした翔太は背中に爪を立てた。ピンと立った胸の突起を指先で優しくなぞると、恥ずかしそうに頰を赤く染めて顔を逸らした。
久しぶりに重なった肌は冷たくて、隙間なく抱き合うと温かさが伝わった。
「苦しい……息ができない」
「俺も」
「ほんとう?蓮も苦しい?」
絞り出すように小さな声で「会いたかった」と言った翔太に、余裕なんて全くなかった。初めて繋がった夜のように心臓の鼓動が早い。小さな冷たい手を胸に押し当てた翔太は
「すごい早鐘だ……大忙し///」
と言って笑った。
「君もね」
〝同じ〟だと嬉しいね翔太――
緊張する夜も、不安な夜も、翔太はいつだって〝同じ〟が好きだ。〝自分だけ〟がきっと怖いんだ。
大丈夫、俺たちちゃんと愛し合ってる。離れていても乗り越えられるよ。
寒空に舞う雪が外を白く染める中、二人の体温で温まった室内の窓は曇り、水滴を纏っていた。
静かな室内に、翔太の甘い喘ぎ声が響いた。