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第六章 余熱を抱いて
蓮を求めて伸ばした腕に、クスッと笑った彼の笑顔は俺に安心を与えた。素直になれなかった言葉達、求められなかった温もりを、夢だとわかっていても、無意識に愛を探して蓮にしがみ付く。
「蓮……会いたかった」
まるで帰国のことなどなかったかのように、自然と出た「会いたかった」。
目尻を下げて頭を撫でた蓮は、「俺も」と短く返す。キスを交わすと、首元に触れた唇の温もりで、心の蟠りがゆっくりと溶けていった。
蓮に心ごと攫って欲しい——そんな願望を抱きつつ、背中に腕を回して必死にしがみ付く。
「蓮……きて」
蓮の舌が首筋を這った。ピクリと反応するたびにクスッと笑う蓮。吐息がかかってくすぐったく、甘い痺れが体を巡る。
蓮で頭がいっぱいになる幸福感に満たされながら、グッと掴んだシーツの冷たさで、自室の床の冷たさが蘇る。
不安で揺らぐ瞳に蓮はすぐ気付いて、「大丈夫……どこにも行かない」と言い、おでこにそっとキスをした。
自分勝手で都合のいい夢に救われる。
「こんな夢なら毎日でも見たい――」
「えっ?ふふっ……いつまで寝ぼけてるの、可愛い過ぎ」
舌を抱き合わせると、高揚した肌に、蓮の男らしい指が背中をなぞり、服を剥いだ。なんだか恥ずかしくて目を伏せると「ちゃんとこっち見て」と言って優しく頰を撫でられ、涙が流れた。
「泣くなよ」
「また会えるよね……離れたくない」
蓮は答えない。だってその答えを蓮も知らないから。
優しく胸を撫でていた蓮の手は後孔に這い、胸の突起に舌が這う。思わず手を口に当てると「ちゃんと声聞かせて」と手を取られて頭上に重ねた指に、蓮の指輪はなかった。仕事だから外しているだけだと分かっているのに、夢のくせに胸が苦しくなった。
久しぶりに蓮に抱かれた体は休息を求めてベッドに沈み込んで行った。
〝夢なら覚めないで…〟と言う俺の声を無視して暗闇が青を奪っていく。
夢のような夢は一気に現実へと引き戻す。
ベッド脇の隅っこの壁に持たれたまま目を覚ますと、体の至る所が痛くて疲労困憊だった。
それでも、夢の中で会えた蓮は優しくて、心は温かかった。今日も頑張るぞって、力が漲った。
「なんてエッチな夢なんだ……」
俺欲求不満か?なんて思いながらも、また夢で会えますように……なんて、朝日にお願いしちゃったりして。
2月の空に眩しく燦々と降り注ぐ紫外線にだってへっちゃらな顔をして、大通りを歩いた。
久しぶりに一人で訪れた喫茶店に入りモーニングを食べる。
温いコーヒーを一口飲むと、胸の奥までじんわり広がった。
まだ寒いはずなのに、その熱が妙に心地よかった。
少しだけ強くなれた気がした。
喫茶店を出て、雲一つない青空を眺めた。
手を伸ばせば届きそうなほど濃い青が、冬の寒さを忘れさせる。
前へ繰り出した足は軽やかで、少しだけ世界が明るく見えた。
途中寄ったコンビニで、コーヒーを片手にレジに並ぶと、いつまで経っても来ない店員に、全く苛立たなかった。
「すいません……」
ようやく俺の存在に気づいたバイトの若い男の子が、驚いた顔をしてレジに立つと、〝ふっ……袋はご利用になりますか?〟だなんて聞いてきて、ちょっとほっこり笑ってしまった。
澄んだ青空を写メった。蓮のトーク画面を開く。
〝今どこ?元気?〟送れなかったメッセージ。再び消して書き直した。
翔太📩「蓮ごめんね俺ひとりで頑張るから、蓮も頑張って!空は繋がってる。今日も夜空を眺めて蓮を想うよ」
心を強く保てば、少しの事で世界は違って見えた。たった一度の夢で、こんなにも前に進めるのだからきっと一人でも頑張れる……そうだよね蓮。
青空に手をかざす。
いつもより青が遠くに感じて、踵をあげて背伸びすると、〝ハイタッチ〟と言って青に誓った指先は冷たかったーー
コメント
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センシティブ要素あるやん!😍😍かわい〜ラブラブ💓