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阿笠博士の家を出ると、まだ朝の光が肌寒く感じた。
「まったく、世話焼かせるやっちゃな」
ポケットに手を突っ込みながら、服部はため息混じりにつぶやいた。
熱で真っ赤な顔して、それでも「ありがとう」とだけは言いたそうにしてた。いや、たぶん言ってた。声は小さかったが、聞こえてた。
「あほやな、あいつ」
そう思うと、自然と頬がゆるむ。
それにしても、まさか寝言で「蘭、ごめんな……」とか言い出すとは。あれを聞いたときは、さすがの服部も胸がざわついた。
強がりで、自分のことはいつも後回しで、他人のことばっかり気にする。あんな状態でも「蘭の心配」やもんな。
「ま、らしいっちゃらしいけどな」
コンビニでポカリとゼリーを買い、薬局で解熱剤と喉スプレー、それからやたら高級そうな冷えピタも手に入れた。ついでに見つけた、子ども向けのプリンも一個。
「子ども用でも味は一緒やろ」
再び博士の家に戻ると、コナンは少し目を覚ましていた。
「服部……」
「おぉ、起きてええとは言うてへんぞ。口動かす元気あるなら、これ食えや」
プリンを差し出すと、コナンが眉をひそめる。
「なんだよそれ……子ども用じゃねぇか……」
「お前、いまガキやろ。何を文句言うてんねん」
むくれたように見えるその顔も、平次にはもういつもの調子に思えた。
「熱は……?」
「さっき測ったら37.9や。もうちょいで平熱やな」
「そっか……」
言葉が途切れ、静寂が戻る。
しばらくして、コナンがぽつりとつぶやいた。
「……ありがとな」
「ん?」
「昨日さ、お前が冷やしてくれたタオル……気持ちよかった」
なんともないふうを装って言ったその一言に、服部は思わず目をそらした。
「……そんなん、当たり前やろ。友達やんけ、俺ら」
それだけ言って、薬の袋をコトリと机に置いた。
「しっかり寝て、ちゃんと治せ。治ったら──また勝負や」
「ああ」
布団の中で笑ったコナンの声が、昨日よりずっと元気に聞こえた。