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スタート!
翌日。
一時間目は体育だった。
校庭では体力測定が始まろうとしていた。
「今日は50メートル走からなー!」
先生の声に、クラスは盛り上がる。
「よっしゃ!」
「負けねぇ!」
照や蓮、ラウールたちは笑いながら準備運動を始めた。
翔太は少し離れた場所で、静かにストレッチをしている。
その表情はいつも通り無愛想だったが、胸の奥では違った。
(今日は……少ししんどい。)
朝から動悸が続いている。
それでも、欠席するほどではない。
「渡辺。」
先生が近づいてきた。
「無理そうなら見学でもいいぞ。」
翔太は小さく首を振る。
「……走れます。」
短く答える。
先生は少し心配そうな顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。
翔太の事情は、学校側には最低限共有されていたため、無理をさせないよう配慮されていた。
しかし、クラスメイトはそれを知らない。
「先生、渡辺には甘くない?」
誰かが小さくつぶやく。
「ヤンキーだから怒られないだけじゃね?」
そんな声も聞こえた。
翔太は聞こえていた。
でも、何も言わなかった。
50メートル走。
「位置について……よーい。」
パンッ!
スタートの合図。
全員が一斉に走り出す。
翔太も遅れずにスタートした。
足は速い。
昔、体が今より動いた頃は運動も得意だった。
だが、30メートルを過ぎたあたりで胸が締めつけられるように苦しくなる。
(まずい……。)
息が浅くなる。
それでも表情は変えない。
最後まで走り切ると、翔太は何事もなかったように列を離れ、校庭の隅へ歩いていく。
木陰までたどり着くと、誰にも見えない位置でしゃがみ込んだ。
「……っ。」
胸を押さえ、ゆっくり呼吸を整える。
浅い呼吸を少しずつ落ち着かせ、脈が戻るのを待つ。
数分後には立ち上がれるくらいまで回復した。
「……大丈夫。」
自分に言い聞かせるようにつぶやく。
その様子を、遠くから一人だけ見ている人がいた。
阿部亮平だった。
「……今の。」
翔太は苦しそうにしていた気がした。
でも、すぐに普通に歩き始めた。
「気のせいかな……。」
亮平は首をかしげる。
体育が終わると、翔太はまた一人で教室へ戻っていった。
誰も気づいていない。
ほんの少しだけ抱いた亮平の違和感も、まだ確信には変わっていなかった。
コメント
12件
拝見するのが遅れました💦 正直に、泣きました(T ^ T) 阿部ちゃん、早く気づいてあげてよ 1番すぐ気づくの多分君なんだよ〜 翔太くんを救ってやって〜 とずっと思いました。 しょたシナさん!続き楽しみにしてます! しょたシナさんのペースでいいので、頑張ってください! いつでも待ってます
誰か気づいて!!
うぉーん😭(きも)強がらないでよ〜