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### 第3話 「静かな昼休み」
昼休みのチャイムが鳴る。
「購買行く人ー!」
「俺、焼きそばパン!」
「めめ、走るぞ!」
教室はあっという間ににぎやかになった。
翔太はいつものように席を立つ。
小さなポーチだけを持ち、静かに教室を出ていった。
誰も止めない。
誰も気にしない。
……はずだった。
「阿部ちゃん、行かないの?」
佐久間が声をかける。
「あ、ごめん。ちょっと生徒会室に寄ってくる。」
亮平はそう答えて教室を出た。
本当は、生徒会室へ行く用事はなかった。
体育の時間に見た翔太の様子が、どうしても気になっていた。
(少しだけ様子を見よう。)
そう思っただけだった。
廊下を歩き、階段を上る。
しかし、どこにも翔太の姿はない。
「いない……。」
亮平は少し探したものの、見つからず、そのまま生徒会室へ向かった。
一方、その頃。
翔太は旧校舎のさらに奥にある、誰も使っていない空き教室にいた。
窓際に座り、水筒を開ける。
薬を取り出し、静かに飲む。
「……。」
飲み終えると、壁にもたれて目を閉じた。
朝から続く動悸は落ち着いていたが、今度は胃が重い。
食欲もほとんどない。
買っておいた小さなゼリー飲料を少しだけ口にする。
それだけで昼食は終わりだった。
「……ごちそうさま。」
誰に言うでもなく、小さくつぶやく。
その直後だった。
ズキッ……
「っ……。」
今度は頭痛。
思わず額を押さえる。
「今日は……多いな。」
苦笑いを浮かべるが、その顔には疲れがにじんでいた。
少し休めば授業には出られる。
そう信じて、静かに目を閉じる。
教室では。
「そういえば渡辺、昼食べてるとこ見たことある?」
康二がふと尋ねた。
「ないかも。」
ラウールが首をかしげる。
「購買にも来ないよな。」
蓮も思い返す。
「まあ、どっかで食べてるんじゃない?」
照はあまり気にしていない様子だった。
亮平だけが、少し考え込む。
(昼休みも、体育の後も、一人でどこかへ行く……。)
(でも、理由を聞くほど親しいわけでもないし……。)
結局、その日は何もできなかった。
五時間目開始のチャイム。
翔太は時間ぴったりに教室へ戻ってきた。
コアラと木の実
790
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1,720
さや
132
顔色は少し青白かったが、普段から無表情なため、誰も変化に気づかない。
席に着き、教科書を開く。
そのとき、亮平と一瞬だけ目が合った。
「……。」
「……。」
翔太はすぐに目をそらした。
亮平も何も言わない。
二人の間には、まだ言葉一つ交わしたことのない距離があった。
そしてその日の放課後。
翔太は部活動にも寄らず、一人で校門を出ていく。
その背中はどこか小さく、少しだけふらついて見えたが、それに気づいたのは偶然窓から外を見ていた亮平だけだった。
コメント
13件
しょたシナ様の作品をいつも楽しく見させてもらっています!!前作もそうでしたが、思わず泣いてしまいました🥲 これからも楽しく見させていただきます!続き待ってます💕

💚が少しでも💙に寄り添えれば良いのにな 素直に受け入れるかどうかだけど… 続き待ってます。