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「ゆず、ゆず君!?」
「こういうの、上書きっていうんでしたっけ。まー、今回は、演技でもないし、台本もないですから、全部アドリブ。クソだっさいかも知れませんし、付け焼き刃かも知れませんけど」
「ごごご、ごめん、何言ってるの?」
「だから、昨日のやり直しです」
と、さも当然かのように言うゆず君。
頭が追いついていなくて、俺は、クエスチョンマークを頭の上に何個も浮べる。
(やり直し……)
ゆず君はクスリと笑って、俺の髪をほどくと、その髪の毛にキスを落とす。
「昨日、酷く抱いてしまったので、今日は優しく抱きたい気分なんです。それに、まだ、紡さんには上書きしたい。他の男の痕跡、全部消したいんですよ」
そういって、チュッと、俺の首筋に吸い付く。
「ひぇっ」
ビクリと体が跳ねて、思わず変な声が出てしまう。そんな俺の反応に満足げに笑った後、ゆず君はまた首に噛みつく。
そして、今度は、胸元まで顔を近づけると、強く吸われた。ピリとした痛みが走る。痕になってしまったんじゃないかと自分の首を触っていれば、ゆず君が深い宵色の瞳でじっと俺を見下ろしてきた。魅了にかかったように、俺は動けなくなる。『お願い』何かよりも、もっと効力のある何か。
「ゆず……」
「仲直りえっちなのに、ソファはあれですね! じゃ、寝室に移動しましょう♪」
「切り替えが早すぎない?」
「『俺』ってそういうものですって。ほら、紡さん、僕に抱かれるために、寝室に移動しましょーね」
「ゆず君……」
るんっと、語尾を弾ませて、立ち上がったゆず君は俺の手を引く。
ああ、もう、何なんだろ。この子、本当にずるいなあ。
けれど、何処か無理していないかって心配になる、気の変わりようで、俺は若干の違和感を覚えてしまう。けれど、何かいうわけでもなく、俺は彼に手を引かれるがままに、彼のベッドへと押し倒された。
「優しくしますから」
「だい、じょうぶだから……そんな、すぐに壊れないし。ほら、丈夫でしょ。俺」
「ほんとですか? でも、今日は、僕に優しくされて下さい。そうじゃないと、僕、自分が許せませんから」
「ゆず君」
「何て言うのは、まあ、建前っていうからあれで。仲直りえっちって、ゲロ甘雰囲気でお互い気持ちよくなって、愛を確かめ合うものじゃないですか! だから、今日は存分に甘やかしますからね!」
「ゲロ甘って言葉が」
「まあ、まあ」
ゆず君は、自分の発言を誤魔化すように、俺の服の中に手を忍ばせる。優しく、といったとおり、昨日のような性急さはなく、ゆっくり、ゆっくりと脱がされる。昨日は乱暴に剥ぎ取られたけど、今は丁寧にボタンが外されていく。それが、妙に恥ずかしくて、でも、嬉しい。
上半身を裸にされると、ゆず君はうっとりとしたため息をついて、俺の上半身に手を這わせた。
「くすぐったいよ。ゆず君」
「紡さんって、肌綺麗ですよね。色も白いし……ずっと触っていたいです」
ゆず君は、俺の胸に顔を埋めると、ペロリと舐める。それから、舌で乳首を転がされた。
何だこれ……むず痒い。
暫く、そこを弄られたあと、下半身に手を伸ばしていく。ズボンを下ろすと、下着越しにそれを揉まれる。
そこは既に熱を持っていて、形を変えていた。
「よかった、反応してくれてるんですね」
「そ、そりゃ……反応するよ」
「僕だから?」
「…………そう、ゆず君だから」
自分で言わせておいて、照れているゆず君。そんな姿に、俺もつられて赤面してしまう。
ゆず君が俺のモノを撫でながら、俺の耳元に口を寄せる。熱い吐息がかかって、また身体全体が熱を帯びる。
「嬉し……僕も、同じ気持ちです。紡さんだから、反応してるんですよ。ほら」
と、自分のモノを俺に押し当ててくる。ゆず君のそれも、しっかり勃ち上がっていた。
俺で反応してくれている、そんな言葉にキュンと腹の奥が疼いた。
それから、ゆず君は、俺の足を大きく開くと、その間に体を入れた。それから、自分の指を口に含んで唾液で濡らすと、その濡れた手で俺の尻に触れた。
「っ……」
昨日とは違う感覚。
優しくを有言実行しているゆず君は、毎回俺の反応を見て、力加減を考えてくれる。
「大丈夫ですから、力抜いてください」
「……うん」
俺は、なるべく力を抜くようにして、深呼吸をする。
すると、ゆず君は俺の後ろの穴に指を入れてきた。異物感に、思わず声が出そうになる。そのまま、一本の指で中を掻き回された後、二本目が入ってきた。けど、それじゃあ、足りない。物足りないって思ってしまう。だって、いつもゆず君、容赦無いから。
「も……もう」
「え? でも、もっとゆっくりやらないと、後で痛いですよ。紡さん」
「で、も、っ、ゆず君……足りない」
「……あーもー優しくしようとしてるのに。煽らないで下さいよ。ほんと、調子狂うな」
ゆず君は、少し苛立ったような声を出すと、自分のベルトを外す。そして、自分のモノを取り出すと、数回手で扱いた。そして、俺の腰を掴むと、自分の方へ引き寄せる。
「挿れていいですか?」
「う、ん。うんっ」
俺は何度もこくりと首を縦に振る。そして、ゆず君は俺の後ろに自分のモノをあてると、一気に貫いた。
「ひぁあああっ」
「っく……」
あまりの質量に俺は体を仰け反らせる。そして、同時に果ててしまった。
「へ? 今のでイッたんですか?」
「う……いわないで」
「ははっ……でも、また勃ってる。紡さん、そんなに僕が欲しいんですか」
「ほし……から。ゆず君しか、いらないから!」
「あー、だから、そうやって」
クソッ! と舌打ちしながら、ゆず君は強く腰を打ち付けた。怒っているのかと思ったけれど、彼の体温から察するに、恥ずかしさや嬉しさ隠す、照れ隠しだったんじゃ無いかと思う。自惚れかも知れないけど、俺の中で熱く大きくなっているそれを感じたら、一目瞭然だろう。
「ほんっと……ずるい」
そういって、ゆず君が唇を重ねてくる。それから、激しく揺さぶられる。
これまでなっていなかったベッドのスプリングが、ギシギシと鳴りだして、だんだんと激しさが増していったのが、聴覚からでも分かった。
「あ! や、はげし」
「すっごくいい、です。紡さん、その顔。すっごく、いい」
正面体位なんて、初めてしたかも、と、頭の端っこの方で思う。だけど、すぐにそんな余裕はすぐに霧散する。
いつもより深く刺さって、密着して、まるで本当に一つになったみたいで、気持ちよくて仕方がない。
「ああ! ゆずくん! すきぃ!」
「僕も好きですよ。紡さん」
「うれし……っ」
「紡さんは僕のことだけ考えていれば良いんです」
「ゆず君……っ」
「はっ……!」
それからは、ただひたすら快楽を求めて二人で求め合った。
何度も何度もお互いの名前を呼び合って、愛を確かめ合う。キスをしたまま、お互い絶頂を迎えると、ゆっくりとゆず君のものが引き抜かれて、それから、おでこに軽く口づけられた。
ああ、幸せだなって、満たされながら、俺は重たい眼を閉じた。