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side真希
俊太の両親は広島北部の呉に住んでいる、広島は呉の坂道ばかりの、一番てっぺんの戦後建てられた大きな鯉の池がある庭があり、家の正面は小石打ちこみ仕上げになっている。大きな牡蠣漁の網元で二階建てだった
よく手入れされた花壇に遅咲きのツル薔薇が咲いている。俊太の両親はあたしが来ることを知っている
俊太と喧嘩した夜よりずっと以前に、あたしは彼のスマホを盗み見して、彼のお母さんの電話番号を自分のスマホに移していた
初め俊太のお母さんに電話をして、あたしの事情を説明した時にはお母さんはとても驚いていた、俊太はあたし達の事を両親に話していなかった。そして耳の障害がある彼の高校生の弟がいることは知っていたけど、彼にもあたしの事は何も言っていないらしい
俊太との事を詳しく話をしたいからおうちへ伺っていいかと聞くと、広島は駅から坂だらけだから、迎えに行くと言ってくれた
あたしはタクシーで行くから、住所だけ教えてくれと答えた
あたしは一番上等の服を着た。赤ちゃん本舗で買った可愛らしいAラインのワンピースで、グレーの水玉ワンピースはヒラヒラしていて、あたしのふっくらしたお腹を強調して初々しい妊婦を彩ってくれる
これなら彼のご両親は、未来の義理の娘としてあたしを見てくれるはず
彼の家の玄関に立ち呼び鈴を鳴らす
すぐにドアが開く
俊太のお母さんが満面の笑みをあたしに向ける
電話の話内容で想像していた通り
彼のお母さんは編み物をし
パンを焼き
盆、正月の祝い事があるときには一族を家に招き、料理を振舞うような典型的な専業主婦だ
お父さんは彼女の背後の廊下に立っていて、小さな廊下の電気の明かりに剥げた頭が光っている
俊太の髪が無くなることは想像していなかったから、少し心配になった