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俊太のお父さんの仕事は牡蠣の養殖業の職人で、日本では最もらしい、養殖の肩書がついている。お母さんは以前まで小学校の教師をしていて手話ができる。俊太の弟の耳が不自由だからだ
知能も少し弱いのではないかと思うけれど、今はそういう言い方はしないのかもしれない
玄関で礼儀正しく挨拶を交わした後、あたしは応接室に案内されたので、ソファの端に膝をぴったり揃えて行儀良く座った
カーテンもクッションもゴミ箱も花柄で、部屋全体に統一感がある。紅茶とレモンケーキが運ばれてくる、あたしはお腹が空いていたけれどお母さんとまず話をするまで手をつけなかった。
「さぁあなたが来ると聞いたから特別に焼いたのよ」
俊太のお母さんが言う
「はい、ありがとうございます」
あたしは爽やかに答える
二人はどちらもあたしが妊娠していることに気づいていたけれど、あたしはその事にはまだ触れず、その代わりお天気の話や乗ってきた列車や、レモンケーキはおいしいと言う話をした
「彼からあたしの事を何も聞いているかどうかは分からないのですが・・・」
「私達・・・俊太からほとんど何も聞いていないのよ」
お母さんがチラリと夫を見る
「一月に俊太さんが船から降りていた時に知り合ったんです」
「あの子は友達の家に泊まると言って来たわ」
「その友達があたしなんです、彼は次の船に乗るまでずっとうちで暮らしていました」
二人は何の反応も見せることなく、肘掛け椅子に浅く腰かけたままだ、今の所はあたしの話をじっと聞いてくれている
良いご両親だ