テラーノベル
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ここ数日、ワシは困っていた。チビ和泉がちょっとしか飯を食わないんだ。
『和泉、もーうちょっと食べないか? もうちょっと!』
野菜の煮物とか柚子ジャムの鶏照り焼きとか、好きそうなものを作って、なだめたりあやしたりしても、少し食べてすぐお腹いっぱいになってしまうらしい。
「ないないなの」
チビ和泉は、ぎゅっと口を結んで首を横に振った。
『そう言わずに』
「ないない!」
あんまりしつこくすると、チビ和泉は泣きそうになってしまう。困ったな……。
うーん、和泉はもともと少食だし、こんなもんなのかな? でもはっきり言ってやせっぽちだし、もうちょっと肉つけて欲しい。
チビ和泉連れて買い物に行って、星野さん(※事情は話してある)にチビ和泉が食べないと愚痴ったら「偏食なの?」と聞かれた。
『うーん、そんな感じじゃなくて、ただ単に胃が小さい感じ』
「それは……困るわね」
『チビって、もっともりもり食うもんじゃないのかなあ?』
「それはその子によるわよ。うちの子も食べなかったし、孫も好きなもの以外食べないし」
「じゅーちゅのむ」
チビ和泉の合いの手が入った。
『オレンジジュースは飲むんだよなあ』
和泉、小さい頃はオレンジジュースが好きだったのかな?
星野さんが言った。
「和泉さん、今の好みは子供の頃のなのかもね。和泉さんのお母さんに、小さい頃何が好きだったか、聞いてみたりできない?」
『う、うーん……』
和泉の母ちゃんは……ちょっとな。少し連絡取るだけでまたチビ和泉が大泣きしそうだ。ていうか病気らしいし。
ん? いや? これまでの和泉と和泉のおばあさんのやりとりからして、和泉に飯作ってやってたのは、おばあさんじゃないか?
ワシは、チビ和泉に聞いてみた。
『和泉、小さいときに飯作ってくれてたの、誰だ?』
「ばーば!」
チビ和泉は元気に答えた。
『ばーばかあ』
そうか、じゃあ、和泉が小さい頃好きなものはおばあさんが知ってるのか。
……聞きたいけど、そのためには孫が幼児になってるって言わなきゃいけないぞ。どうしよう……。
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コメント
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読了しました。番外編とはいえ、この「チビ和泉がご飯を食べない」という日常の困りごとが、ちゃんと世界観の設定(幼児化・祖母との関係・連絡の難しさ)に繋がっていくのが好きです。「オレンジジュースは飲む」という細かい情報から「ばーば」に辿り着く流れが自然で、金谷さんが「孫が幼児になってるって言わなきゃ」と気づく最後の一文で、思わず「あっ」と声が出ました。童話みたいな設定を現実に適用するときの、この“説明する難しさ”がじわじわ来ますね。