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Side 青
コンビニで市販の鎮痛薬を買って、慎太郎の家にまた行く。
リビングに入ると、出たときと全く同じ格好で慎太郎はソファーで丸くなっていた。
「大丈夫?」
こくんと小さく首が動いた。
買ってきた痛み止めの薬を取り出し、キッチンでコップに水を注いで渡す。
「ごめん、こんな遅くに呼んじゃって」
「俺が来ないと、お前ずっと廊下でうずくまってただろ」
かもな、と苦笑した。
「ってかほんとに心当たりないの? 冷えたのかな」
「……わかんない。夕方、飯食う前に急に痛くなってさ」
「食べてないならお腹空いてるんじゃないの?」
「…食べられそうにないから」
そうは言うけど、ちょっと薬の効果が出てきたのか表情は少し穏やかになってきた。
「てか良かった、鍵持ってて。それより、これからは気をつけろよ。大事な仕事の前だったらヤバかったぞ」
慎太郎はしょんぼりとしてうなずいた。
「明日、休み?」
「いや…個人仕事あったと思うけど」
スケジュールを確認すると、確かに「収録」と入っていた。
「……休んだほうがいい。最近忙しかったし、無理して行って我慢すんのも辛いだろ」
え、と慎太郎の口から一文字零れ落ちた。
「俺連絡するから」
リビングのテーブルに置いてあった慎太郎のスマホを取ると、「パスワードは?」
しばらく沈黙したあと、ぼそっと伝えてくれる。それを入力して電話を開くと、マネージャーの名前を探した。
最初はなぜか慎太郎の電話から聞こえてきた俺の声に困惑してたけど、事情を話すとわかってくれた。「調整しますね!」と快活な声を残し、お大事にって言ってくださいと電話は切れる。
「お大事に、だって」
「そんな大事じゃないんだけどな」
俺は一瞬眉をひそめるが、「まあ案外元気そうになってきたな」と苦笑した。
「そろそろ帰っても大丈夫そ?」
「うん。ありがとな」
「別に。じゃ、明日も無理すんじゃないぞ。ちゃんと大人しく家にいろよ」
はーい、とわかってるのかわかってないのかもわからない返事をする慎太郎。
「…なんかあったら電話な。あと朝ごはんくらいはちゃんと食べろよ」
釘をさして、部屋を出る。
慎太郎が玄関まで見送りに出てくれた。それで俺は一安心だ。
「じゃあ、ゆっくりお休み」
「おやすみ、樹」
翌日。起きてスマホを見てみると、慎太郎からメールが一通入っていた。
『なんかもう全然治ったけど、樹に仕事なくされたから大人しくしてまーす
昨日はほんとありがとう』
若干照れくさく感じながらも、いつもの慎太郎でやっぱり安心する。
良かったな、とか言おうかなと思ったけどやめておく。
『おう』
2文字だけ打ち込んで、紙飛行機マークを押した。
『おい何だよそれ素っ気ないな!
こっちは樹に強制的にオフにさせられたんだよ』
変わらずガヤガヤとうるさいトークルームを一旦閉じ、微笑して仕事の準備を始めた。
続く