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うわ…このエピソード、読んでて胸が苦しくなりました。郁己くんが「Ωだ」っていう噂に振り回されて、周りの視線がどんどん刺さるものになっていく描写が本当に痛々しい。それでいて最後の電車の中、あの違和感がまさか…と思ったらあのフェロモンの持ち主、これはもう次の展開が気になって仕方ないですね。花壇で靴の土を掃除してるところとか、UVカットパーカーで肌が白いって背景も、設定がちゃんと生きてる。体質と向き合わざるを得ない日々がリアルに伝わってきました。
休みが明け、水曜になっても、木曜になっても、金曜になっても郁己は来なかった。
その間に、席替えをして二人の席は大分離れた。郁己の席は変わらなかったが常盤の席は廊下側から2列目のあたりになった。
そしてまた一週間が経ち、迎えた月曜の朝
「おい、蒼司、楪来たみたいだぞ」
「……」
廊下で壁に凭れ掛かり話していたのを遮るように晃が言った。
(よかった…、席、離れたから大丈夫な、はず…)
教室に入ってきた郁己は発情期の間、食事もままならなかったせいでいつにもなく
げっそりとしている。
救急車が来たこと、その時に郁己と常盤がいなかった、その上、それから郁己は
1週間以上学校に来ていない、そんなことが重なったからかチクチクと周りからの視線が突き刺さる。
こちらを見ながらひそひそと話をしたり、チラチラと見てくる視線が痛くて、ぎゅうっと胸が痛くなる。
(どうしよ…、やすんだ、ほうが…よかった……?)
発情期で消耗した体力が戻って来ず、席に座ってから少しの間、息が荒いまま青白い顔を俯ける。
息が整った頃に顔を上げてみると、刺すような視線はほとんどなくなり、席に座り始めている人が増えてきていた。
「郁己、おはよう。顔色悪いけど大丈夫?」
声のしたほうを見ると、一年の頃に仲良くなった尚太が机の横まで来ていた。
ざわっ…と周囲がざわめく。
「お、おはよ…、大丈夫、土日あんまり寝れてないだけだから…」
「、そう…あ、あのさ、噂ってほんと、なの…?」
「…へ…?」
こんなに周りからの視線が刺さっているわけ、この間の事のことだろうか、それともそれとは違うことなのだろうか。どちらにせよ、尚太が歯切れ悪そうにしている時点で、いいことではないと分かってしまった。
「あ、ごめん、やっぱいまのなし…」
「なに?うわさって…」
少し目を伏せた後、尚太はそっと口を開けた。
「少し、ここを離れようか。人目があるし…」
「うん、わかった…」
席を立ち、廊下に出ると尚太が目を彷徨わせながら口を開いた。
「郁巳が…Ωだっていう噂が流れてて…。っでも噂だから、気にしなくていいからっ」
尚太はα、なんとなく分かっていた。でも、こんなにいい人とは思っていなかった。
冷水をぶっかけられたように血の気が引く。郁己を気遣おうとして何か色々言ってくれてる尚太の顔がみえない。
「郁己…?大丈夫…?」
「あ、…うん、ありがとう…。おしえてくれて…」
見えてるはずなのに、頭が理解してないのか視界がおかしい。真っ暗でも真っ白でもない、でも、なにかかが見えているわけでもない、自分が立っているのか、どんな表情でどちらを向いているのか、呼吸しているのかさえわからない。
予鈴がなって、尚太が教室に戻っていく。郁己も戻らなければと思うが視界がおかしいままでみえない。
どうしようと動こうとした途端、視界がみえてくる。
ほっとして教室に戻ろうと体を扉に向けかけたその時、さっき尚太が言っていた言葉が反芻する。
(もどらないと…でも、)
鉛のように重たい体をどうにか動かして教室に入り席に座る。
チャイムが鳴って担任が入ってくる。ちらっとこっちを見た担任は直ぐに目を逸らしたが、多分、見透かされてるんだろうな、と思いながら出欠確認の声を外の景色を眺めながらきく。
「え……?」
気が気じゃないままだった一日が終わると、もう少し頑張ろうと下校時刻を示している時計を見て奮い立たせた気持ちは一瞬で砕けた。
尚太から噂のことを教えてもらってから視線が痛いものに変わった数日間、一週間の折り返しだから、と思ってベッドから起き上がったのは今朝なのか昨日なのか分からない。
でも、確かなのはこれがいやがらせだということ。
下駄箱は扉がついているから周りにはバレないと思ったのだろう、中の靴には土が入っていた。
(花壇ってどこにあったっけ…?)
抉られたように痛い胸を無視するように上靴のまま、土の入ったスニーカー持って花壇へ向かう。
花壇には誰かが掘ったのであろう跡が残っていて、その上でスニーカーから土を出す。
爪の間に土が入って気持ち悪くて、日差しはまだ季節も変わってないのにじりじりと照りつけ、郁己の体力をごっそりともっていく。
(ほんとになんでこんな体質なの…)
粗方取り終えると、ふらつく体でどうにか昇降口に戻り上靴を片付けて、まだ綺麗に土をとりきれてないスニーカーを履く。
(このスニーカー洗うしかないじゃん…)
気持ち悪い足の感触に顔を歪めながら折りたたみの日傘を取り出す。
郁己の体質では周りの目など気にしてられず、小学校の頃から母親にUVカットパーカーを着せられ、中学生になった頃には日傘をさしていた。周りから嗤われることなど少なくなかったが、倒れるよりはマシだと自分に言い聞かせていた。
紫外線対策をしていたせいか肌は女子も顔負けするほど真っ白で女の子に間違えられたことも少なくない。
(あつ…、夏休み外出られないかも…. )
もうそろそろブレザー片付けないとかなぁ、なんて考えながら歩いていると、駅に着く。
傘をしまって改札を抜け、ホームに降りると、すでに電車は来ていてのりこむと、次から次へと後ろから押し込むように乗ってくる。
(あー、先生からのお願いとか掃除押し付けられたから帰宅ラッシュと被った…)
図書室では顧問が来て、面倒なことをお願いされ、図書委員の業務があるの知ってるのに同じ当番の子には掃除を押し付けられる。
息が詰まるような思いでぎゅっと目を瞑れば、体の後ろのあたりに違和感を覚える。
(な、に…これ…?)
ひゅっと息が詰まる、体が竦んで、頭の中が真っ白になる。
違和感は強くなっていくばかりで、確信した頃には降りる駅まで後二駅になっていた。
(っいや…、だれか…、きもち、わるい…)
動けようにも体が固まって声も出ない、何分このままなのだろうか、と息がうまく吸えない。
違和感は腰の方へと変わってゆく。
(やだ…っ、はなしてっ…いやっ…やだっ…)
心臓が冷える。ドクドクと嫌な音を立てる。
ふいに、ぴたりと気持ち悪い感触が消えた。
ぱっと顔を上げてみると、郁己と同じ学校の制服。
ズボンからはみ出しているシャツは第2ボタンまで空けられていて、
だるそうに片手をズボンのポケットに入れている。
そんな制服を着崩しているやつは…こんな心地いいにおいがするやつは…
俺は一人しか知らない…
投稿遅くなってすみません!!!!
当分の間、忙しくなりますが、ぼちぼち投稿していきますので読んで頂けるとありがたいです。