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朋也さんは鍵を持ってるから、先に家に帰ってるだろう…
うん、大丈夫。
あまり気にしないでおこう。
元はと言えば、朋也さんが勝手にうちに転がり込んできたんだから…
もう、いろいろな事がありすぎて疲れる。
私は片付けを終え、部屋を出た。
『早く行くよ』
石川さんが、部屋の前で私を待っていた。
『すみません。お待たせしました』
会社の前にタクシーが到着し、私達はそれに乗り込んで出発した。
どこに行くのかもわからないけど…
ちょっと疲れて、眠くなってきた。
ダメダメ、こんな所で寝たら石川さんになんて怒られるかわからない。
しっかりしなきゃ…
目的地に着いて、私達は相手企業の方と食事をしながら時間を過ごした。
相手の方が良い方で、楽しく食事が出来た。
全て終え、ホッとしたら、石川さんが帰りもタクシーを呼んでくれた。
石川さん、手際がいいな。
私達は、またタクシーに乗り込もうとした。
その時、声が聞こえた。
『どこに行く?』
朋也さん!
どうしてここに?
『も、本宮君、なんで…』
石川さんの顔色が変わった。
『あなたのことは上層部まで届いてます。彼女とあなたは帰る方向が全く逆なのに、なぜ一緒にタクシーに乗るんですか?』
『本宮さん…』
『…わ、わ、私は、森咲さんを送り届けようと…』
かなり慌ててる石川さん。
『そんなことをする必要はないだろ?悪いがあなたのことは信用出来ない。今回のことは、社長にも進言する。これ以上、女性と会社の名誉を傷つけることは止めるんだ』
『…な、何を言うんですか。私は本当に何も…』
『森咲、帰るぞ』
『あ、は、はい』
私もちょっと気が動転してる。
『…ま、待ってくれ、私は本当に…』
『とりあえずあなたは自宅待機だ。会社からの指示を待って』
私達は石川さんから離れた。
振り返ると、石川さんはその場に立ちすくんだまま動けずにいた。
朋也さんは…私の横にぴったりくっついて歩いてくれた。
…優しい香りだ。
『大丈夫か?』
朋也さんがポツリと言った。
『…は、はい。すみません…』
『なんで謝る?』
『だって…私、軽率だったかなって…石川さんの家の方向とか知らなくて、同じ方向なのかな?って簡単に考えてて…』
そう、悪いのは、私。
私が馬鹿だったんだ。
ごめんなさい。
あなたが来てくれて…
本当に良かった。
もし朋也さんが来てくれなかったら…
私、どうなってたんだろう。
『あいつは…近いうちに男性しかいない子会社に異動になる。その話は決まってたんだ。クライアントの女性社員にセクハラ発言をしたりしてクレームが来てて、うちとしては大問題だった。だから…恭香をあいつと行かせるのは…』
そう言って、朋也さんは黙った。