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やっぱり…
浜辺さんとカメラの調整をしていた俺は、いてもたってもいられず、
『悪い。あと頼む』
そう告げて、すぐに会社を出た。
社用車は何台か止めてある。
ただ、キーが無い。
たまたま一台に乗ろうとしてた社員に、
『悪い。申し訳ないがすぐに車が必要なんだ。譲ってくれないか?』
『あ、はい。どうぞ使って下さい』
俺のことを知っていてくれたようで、すぐに話がついた。
助かった。
俺はすぐにキーを差し込み、車を走らせた。
良かった…石川の車は目の前にいる。
気づかれないよう、わざと数台離れて後を追った。
もし恭香に何かあったら…
そんなことがあったら、絶対に許さない。
俺が必ず恭香を守る。
ハンドルを握る手に力が入った。
店について二人が食事をしてる間は、近くに止めて出てくるのをひたすら待った。
2時間ほどして、タクシーに乗り込もうとしたところに俺は飛び出した。
結果的にあいつから恭香を離せたのは良かったが、胸に何かがつかえた感じがしてる。
自分の不甲斐なさを感じてしまったのか…
もしも…
とか、最悪なことを考えたら、胸が張り裂けそうだった。
マンションの部屋に入ると、2人でソファに腰掛け、俺は恭香を抱き寄せた。
ホッと安心したのか、しばらく俺の胸に顔をうづめていた。
『本当に…ごめんなさい。今日は…来てくれてありがとうございました…』
『もう…いいから。忘れるんだ、あいつのことは。これからは絶対にお前を1人にしない。側にいて守るから』
『…そう言うのは自分の彼女に言うセリフですよ。その人のために…大切に取っておかないと…でも、やっぱり嬉しかったです。来てくれたこと感謝します。もう…忘れますね…』
『ああ』
俺は…まだ、それ以上何も言えなかった。
次の朝、恭香は少し疲れた様子だった。
『休むか?』
『まさか。大切なプロジェクト中ですから。私は大丈夫です』
『わかった。俺も支度する』
恭香が心配で一睡もしてなかったから、ひどい顔になってるかもな…
洗面台で顔を洗い、鏡を見て思った。
やっぱり…ひどい顔だ。
参ったな…
正直、昨日のことから立ち直れてないのは、俺の方かも知れない。
恭香がもし…
そんなことばかり考えてしまった。
俺…
自分が想う以上に、その何倍も恭香を想ってたんだと、昨日改めて分かった…
本当に…
恭香を…愛してる。
大切な人をこれから先もずっと守り続けたいって、心の底から思う。
彼女の優しい笑顔と、仕事を頑張る姿勢…何もかも全部が愛おしい。
それは…ずっと前から変わらないんだ。