「決め手……と言われると、難しいですね」
ふむ、と唸ると、堤がわかりやすく渋い顔をした。
「何ですか」
「村尾が可哀相になってきた……お前な、無理にでも何か出してやれよ」
「無理にでもって」
堤の言い方に、ふ、と笑みを零した。
フォークにくるくるとパスタを巻きつけながら言葉を探す。
けれど結局、整然としたものは見つからなくて、点を拾うように口を開いた。
「……思えば、ずっと隣にいたんです」
「うん?」
堤が話し出した私へと顔を向けた。
フォークが皿に垂直に立ち、ぴたりと動きが止まる。
「何を今更って話だけど、過去を振り返った時、私の思い出にはいつも総一朗がいたんです」
総一朗が語ったことにより開いた懐古の扉は、閉じることなく私の中を占めている。
一度開いたら、溢れたら、満たされたら、
忘れることがとて******************
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