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#雪男BL
透子
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1,223
yuka🌃🪽💎
236
ホテルのラウンジ。
💛「待った?」
辰哉は一瞬、返事が遅れた。
写真で見ていた人。
でも、実際に会うと想像以上だった。
💜「……あ、ううん」
💜「俺も今来たところ」
照は柔らかく笑った。
💛「ならよかった」
その笑顔だけで、辰哉は少し罪悪感を覚える。
(ごめんなさい)
(俺、本当は兄じゃない)
そんな言葉を飲み込んだ。
────────
「行こうか」
💛「ご両親、もう来てるみたい」
💜「う、うん」
並んで歩く。
辰哉はなるべく兄らしく振る舞おうとする。
でも緊張で足がぎこちない。
そんな様子を見ていた照が、小さく笑った。
💛「緊張してる?」
💜「え?」
💛「珍しいなって」
💜「……そう?」
💛「今日は顔合わせだからかな」
💜「あー、そうかも」
何とかごまかす。
(危なかった……)
────────
個室へ入ると、両家の両親が席についていた。
「照くん、いらっしゃい」
「お待たせしました」
照は丁寧に頭を下げる。
辰哉も慌てて続く。
食事が始まり、和やかに会話が進んでいく。
「結婚式は春頃かな?」
「新居はもう決めたの?」
そんな話題が飛び交う。
辰哉は相づちを打ちながら、何とか笑顔を保っていた。
(無理無理無理……)
(胃が痛い……)
────────
デザートが運ばれてきた。
照の前にはガトーショコラ。
辰哉の前には抹茶プリン。
💛「あれ?」
照が首を傾げる。
💜「どうした?」
💛「今日は珍しいなって」
💜「え?」
💛「いつも抹茶よりチョコ選ぶのに」
辰哉の心臓が止まりそうになる。
(知らない……!)
兄からそんな話は聞いていない。
💜「き、今日はなんとなく」
💛「そっか」
照はそれ以上聞かなかった。
でも。
一瞬だけ、不思議そうな表情を浮かべていた。
────────
食事を終え、両親たちは次の予定があると言って先に席を立った。
部屋には照と辰哉だけが残る。
💛「送るよ」
💜「え?」
💛「駅まで」
💜「悪いよ」
💛「婚約者なんだから」
その言葉に胸が痛む。
「婚約者」
本当は違う。
全部嘘だ。
────────
ホテルを出る。
外は少し風が強かった。
歩き始めて数分。
照がふと口を開く。
💛「仕事、忙しい?」
💜「うん?」
💛「最近、疲れてるように見えたから」
💜「……そうかな」
💛「前はもう少し笑ってた」
辰哉は思わず照を見た。
そんな細かい変化まで覚えているんだ。
💜「ごめん」
💛「謝らなくていい」
💛「心配しただけ」
その一言が優しすぎて。
辰哉は余計につらくなった。
────────
駅が見えてきた。
💜「じゃあ」
💛「うん」
別れようとした時。
💛「あ」
照がポケットから小さな紙袋を取り出した。
💛「これ」
💜「?」
💛「この前、美味しいって言ってた店の限定クッキー」
💛「買っておいた」
辰哉は目を見開く。
兄に買ったものだ。
なのに。
受け取るのは自分。
💜「……ありがとう」
💛「甘いもの好きだろ」
💜「……うん」
紙袋を受け取る手が震えた。
照は何も気付かず笑っている。
その笑顔を見るたびに。
辰哉の胸には、罪悪感だけが積もっていった。
────────
夜。
病院。
兄が嬉しそうに聞く。
「どうだった?」
辰哉はしばらく黙っていた。
そして、小さく息を吐く。
💜「……最悪」
「え?」
💜「あんな優しい人」
💜「騙しちゃダメだよ」
兄は少し笑って肩をすくめる。
「一週間だけだから」
💜「一週間でもだよ」
辰哉は紙袋をテーブルに置く。
中には照が買ってくれたクッキー。
💜「これ」
💜「照が買ってくれた」
兄は少し驚いた。
「覚えててくれたんだ」
辰哉は俯く。
(こんなの)
(好きにならない方が無理じゃん)
まだ会ったばかり。
それなのに。
優しさに触れるたび、この嘘が苦しくなっていく。
コメント
1件
あおいです🌷 第2話、読ませていただきました。 ホテルのラウンジでの第一印象、「想像以上だった」っていう辰哉の呟きがもう切なくて。照さんの「緊張してる?」とか「前はもう少し笑ってた」って言葉が、知らない間に積み重なった時間を感じさせてすごく響きました。 それなのにクッキーを「買っておいた」って渡す照さんの優しさが、逆に辰哉の罪悪感を強くしてしまって…胸がぎゅっとなりました。 まだ2話、続きが気になります。更新楽しみにしてますね📖