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紫倉 紫
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#地雷系
トド村
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#執着
さぶれ
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アイさんは静かに……しかしはっきりと話す。
「おねがい……死なせて……。お願いします……。」
涙をポロポロと零し、次第に声が大きくなっていく。
「おねがい! 私にはもう、生きる意味がないの! だから死なせて!」
涙を零し、懇願するような表情を浮かべて目を見開きながら絶叫する。
「私には何もない!!! 私を必要としてくれる人なんて誰もいない!!! 私なんて生きている価値がないんだから!!! 死なせてよ!!!」
俺はアイさんに馬乗りになり、暴れるアイさんのことを床に押さえつけた。
「ミィちゃんが心配していましたよ。もし、アイさんが死んだらミィちゃん、悲しみますよ。」
違う……。
「それに、博巳……ひーくんだって、アイさんのことを推していて、亡くなったら悲しむと思うな……。」
違う……!
「俺の小説の新作、ここだけの話なんですけど、アイさん、マイちゃん、ミィちゃんの3人を三姉妹に見立ててストーリーを検討しているんです。だから……。」
違う……!!! こんな表面的なことを言ったところで何も伝わらない! 伝わるわけがない!!! 本当に俺が思っていることを俺の言葉で伝えなければ、何も伝わるわけがない!!! 話す内容や順序がまとまっていなくても、泥臭くても、本当の気持ちを伝えなければ伝わらない!!!
「俺、アイさんと話したこと……あまりないですが……それに、アイさんのことを何も知らないですけれど……でも、そんなアイさんを小説のヒロインにしたいって本気で思ったんです! もちろん、メルラブの女の子たちは全員魅力的だし……マイちゃんや、ミィちゃんもヒロインにしたいって思ったことは事実なんですが……とにかく、少なくともヒロインにしたいと思った3人に対しては一目惚れっていうか……何だか上手く言えませんが、とにかく3人にいてもらわないと困るんです。」
初めて、アイさんが目を丸くして俺の方を見る。
「俺はマイちゃんやミィちゃんだけじゃなくて、アイさんのことももっと知りたいんです。 だから……だから、俺のために生きてください! これは自分勝手なお願いだと思いますが、俺にはアイさんがいないと困るんです! だから、俺のために生きてください!!! もし、それでも……どうしても死ぬというのなら……俺も一緒に死にます……。」
アイさんは顔を歪ませ、嫌悪するような表情でこちらを見て呟いた。
「……最低……。」
「え?」
「本当に……最低……! だってユウト君、私”だけ”が好きなわけじゃなくて、『マイやミィのことも好きなんだ。』ってことでしょ! 普通、嘘でも良いから『アイさんのことが好きです。愛しています。』っていうものじゃないの?」
「ご……ごめんなさい……。」
確かに、俺の言動は「アイさんに生きてもらいたい。」と言うよりも、「アイさん、マイ、ミィの3人に一目惚れしました。」と言っている……。本音としては3人のうち、誰が欠けても困るのだが……。この場では「アイさんに生きてもらいたい。アイさん好きです。」と言うべきだっただろう……。
アイさんは片目だけ開き、チラチラとこちらを観察するように見る。
「あ~……もう、本当に死んじゃおうかな~。確か、私が死ぬ時はユウト君も一緒に死んでくれるんだよね。」
「だから……死なれたら困る……っていうか……。」
アイさんは夜風に当たり冷たくなった両手で俺の頬を包み込み、瞳を閉じて、俺のおでこに自分のおでこをコツンとぶつける。
「まあ、ユウト君から『俺のために生きてください!』ってお願いされちゃったし……仕方がないから、ユウト君のために生きてあげよう……かな……。そして……必ず……『3人が好きです。』じゃなくて『アイさんが好きです。』って言わせるんだから……。」
「俺も今度は『アイさんが好きです。』って胸を張って言えるくらい、アイさんのことを知ろうと思います……。」
その瞬間、ドアの方からカタンと音が鳴った。音の方を見ると、ミィが立っている。ミィの表情は氷のように冷たく……まるで何もないかのように俺たちをただ見下ろしていた。
その場にいた全員が気まずくなり……どの程度沈黙が続いたのだろう……。30秒も経っていない気もするし、1時間近く沈黙が続いていた気もする……。そんな中、ミィが口を開いた。
「へ~……。ユウト君とアイさんって、そういう関係だったのね……。」
俺は飛び起きて弁明をする。
「か……勘違いだ。俺はアイさんに、まだ何もしていない!」
「ふ~ん……。”まだ”何もしていないんだ~……。」
「そういう意味じゃなくて!」
「そ……そうよ。私がベランダから落ちそうになっていたところを、ユウト君が助けてくれたの! ただ、それだけよ。」
「分かっているわ……。」
ミィはまるで生気が抜けたかのような――人形のような顔で俺たちに一礼を行い、扉を閉めて廊下を駆け出した。
すぐにミィを追おうとしたが、ふと、アイさんがまた自殺を図らないか心配になり、足を止めてアイさんの方をチラリと見る。アイさんは「もう大丈夫」と言わんばかりに頷いたので、アイさんの部屋から飛び出してマンションのエントランスに駆け降りた。
しかし、ミィはすでにタクシーで去っていた……。ミィの乗るタクシーのテールランプの明かりだけが、やけに眩しく感じた……。
コメント
1件
うわあ……第26話、すごく重くて美しい回だったね。アイさんの「死なせて」は本当に苦しくて、でもユウトくんの泥臭い本音——「おれのために生きて」には胸が熱くなった。あの場面で嘘の「好きです」を言わなかった誠実さが、かえってアイさんに刺さったのが分かる。そして最後のミィちゃん……「まだ何もしていない」の言い間違えが逆効果になる切なさよ。この3人の三角形、どう転ぶのか本当に気になる。尾津さん、心揺さぶる構成をありがとうございます。