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4 - 毒林檎 中編

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2022年10月06日

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前回の続きです。嘔吐表現があります。

もう少し続きます。長くなってしまい申し訳ないです💦

なんでもOKな方はどうぞ⬇

ーーーーーーーーーーーーーー

それから度々チャンスがあれば、少しだけ、そう思ってはまた少しだけ。止めようと思っていても止められなくて。

続けていくうちに、段々とエスカレートしていった。手を握るから始まって、膝の上に乗ってみたり、後ろから抱きついてみたり。

それでもめめは拒まんかった。だからもっと、もっと触れたくなって。


翔太「おい」


帰ろうとするとふと呼び止められて振り向く。


康二「…なんや、しょっぴーか。どしたん?」

翔太「お前、いい加減やめろよ」


なんの事を言っているのかすぐにわかった。でも気づかないフリをして。


康二「なんの事や?」


作った笑顔でそう答えた。しょっぴーならここで引き下がってくれるかと思ったんやけど、そう都合良くはいかんかった。


翔太「わかってんだろ、目黒のこと」


わかっとるよ。しょっぴー優しいもんな。


康二「…それで、なんか用事あるん?」


こんなことやめなあかん、そんなことわかってるんよ。でも、もう戻れんくて。


翔太「こんなこといつまで続けんだよ」


いつまでなんやろうな。止めようとはしたんよ。1回、2回…もう数え切れん程に。

もう、わからんくなった。


翔太「お前、自分がしてることわかってんのか」


段々しょっぴーの声が大きくなっていって、同じ楽屋で待機していたメンバーがこっちを見ているのが分かった。


翔太「あいつらがどんな気持ちでいるか…」

康二「わかってんよ」


貼り付けた笑顔が解けていく。

わかってるんよ。自分がどれだけ最低かなんて。こんな事しても惨めなだけやって、余計に苦しいだけなんやって。頭ではわかってても、身体は言うことを聞いてくれんくて。

毎回毎回自己嫌悪で苦しくなる。俺なんかおらん方がいいんやないか、ぐらい思ったことだってある。

もう、嫌なんよ。もう、止めたいんよ。

それでもまだあの時の、告白する前の笑顔が、距離感が恋しくて。壊したんは、おれやのに。

自分が気持ち悪くて仕方がなくて。


翔太「…康二?」


ぐちゃぐちゃになった感情が頬を伝って落ちていく。俺のせいなんやから、泣いたらあかん。そう思っても涙はどんどん零れて、落ちて。

滲んだ視界で異変に気付いたメンバーが駆け寄ってくるのが見えた。真っ先に駆け寄ってきたのは照兄で。

こんな俺を見んといて。こんな汚い所見せたない。触らんで、放っといてや。


照「康二、」

康二「触らんといて…っ!」


反射的に手を叩いてしまって。

俺がおるだけで、空気が悪くなっていく。


康二「ぁ、ごめ…な、さ…っ」


怖い。気持ち悪い。ごめんなさい、こんな俺でごめんなさい。

もう頭の中はこんがらがっていて、照兄の呼び止める声を振り切ってその場から駆け出してしまった。

急いで家に帰って、そのまま玄関に座り込む。拭っても拭っても止まらない雫が地面に染みを付けていく。

泣きたいのはきっと俺やなくてあのふたりなのに。そう思うと余計に苦しくなって。

こんなになってもまだ、温もりを求めている自分が嫌で。気持ち悪くて。迫り上がってくる感覚に急いでトイレに駆け込む。


康二「お゛ぇ…っ」


食欲が無くて大したものを食べていないからか、胃液だけが吐き出される。ツンと鼻をつく不快な匂いが更に吐き気を催して。

身体が苦しいのか、心が苦しいのか。

何も分からなくなって、そのまま意識を手放した。

目が覚めたらもう朝になっていて、まだくらくらする頭を必死に起こして顔を洗いに立ち上がる。幸いにも今日はオフの日で、迷惑をかけずに済んだ事に少し安心する。

カバンの中に入れっぱなしだったスマホには大量の通知が来てきて、ほぼ全てメンバーからのメッセージか、不在着信だった。

心配かけてしもうたな、とメッセージ欄を流し見する。

その中の一通に目が止まって。阿部ちゃんから、一通だけ。


「話がある」


ああ、やっとか。

そう思った。明確に拒絶されれば、止められる。軽蔑して、怒って、俺の事、嫌いになって。

電話で話そうかと思ったけど、直接話したいって言われて。

阿部ちゃんの家に向かおうとすると、電話が鳴った。


「今から行くね」


電話の向こうの声はいつもと変わらない声で。だからこそ怖かった。メンバーとしての絆が壊れてしまうことを分かっていたから。もう既に、壊れているんやろうとは思っているけど。

何を話そうか、何を言おうか。そうグルグル考えている間に、その時が来てしまった。

静かな部屋に響くインターホンの音。ドアを開けると普段と変わらない阿部ちゃんが居て。


阿部「急に来ちゃってごめんね?」


いつものようにあざとく、両手を合わせて謝っていて。


阿部「あ、そうそうこれお土産!家にあったお菓子なんだけど大丈夫だった?」


すぐに話し始められると思っていただけに、少し拍子抜けしてしまう。


康二「……阿部ちゃん、話って」

阿部「久しぶりの康二の家、なんか緊張する…」


おれの言葉を遮るように、笑いながらそう言う阿部ちゃん。


阿部「…折角お土産持ってきたし、食べよ?」


それからお土産を食べて、ゲームをして、ただ一緒に過ごした。なんども話を切り出そうとしたけどその度に遮られて。こんな状態で集中できるわけがなくて、全く楽しめなかった。


康二「…なぁ、阿部ちゃん」

阿部「ん〜?」


阿部ちゃんは呑気にスマホを触りながらそう答える。


康二「話って、何なん?」


もう何回目かの質問。答えなんて分かっているくせに。

でも、なんで阿部ちゃんが切り出そうとしないのかわからんくて。


阿部「…わかってるでしょ?」


阿部ちゃんの笑顔が消える。

遂に来てしまった。そう思った。

俺たちのことだよ、そう言った阿部ちゃんはまた笑っていて。少しだけ、悲しい笑顔だった。

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