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「そして、その上が大魔族」
フェンリルやティポーンといった神々を相手に戦うことが出来る神話レベルの怪物たちとレメゲトンの悪魔の内、中級から上級の悪魔がここに区分されていた。
「天界の連中はね、大魔族に区分される魔族を強さと戦闘力で4段階にカテゴリー分けしてるんだ。その内、最も強いカテゴリー4とその次の3の大魔族については創造主の命令が無い限り、天使側から手を出してはいけないことになってる」
「姉御も手出し出来ない相手に入ってるのか?」
「入ってるよ、只、姉御は合成獣ってことで、身分としては1つ下の上級魔族になるんだけど、実力としては大魔族扱いされてる」
「生まれが複雑ってのは聞いたけど、身分制度でも複雑な立場なのか……」
「本人は、気にしていないみたいだけどね。で、ピラミッドの頂点に立つのか偉大なる七柱の魔王、七王様たち」
フリーダが読み上げていく。
「闇の王・ルシファー。クモの女王・バエル。ハエの女王・ベルゼブブ。暴力の王・アスモデウス。これがボクの父親」
「えっ何?おまっ、ロイヤル・ファミリーじゃんか」
根岸が驚きの声を上げた。
「血が繋がってるってだけで、ボクには権力も役職もないんだけどね。残りの3柱が発明と発見の女王・ベルフェゴール。竜の王・アスタロト。欺瞞の女王・ベリアル。この七柱の支配によって魔界帝国は成り立っているわけ」
「初めて知ったよ」
「だろうね」フリーダは頷くと説明を続けた。
7柱の魔王のうち、ルシファー、ベルゼブブ、アスモデウスの3柱は、今すぐにでも天界との戦争を始めようとする強行派で、残り4柱は戦争を始めるにしても充分な準備が必要とする慎重派だった。この数千年の間、何度会議を開き、何度多数決を取ろうとも4∶3の一票差で最終戦争は回避されてきた。
「4∶3か 」
根岸がポツリと呟く。
「そう。七王のポストは奇数だから、採決を取れば必ず結果が出るようになってる」
フリーダが説明した。
「国連の会議みたいに誰かが拒否権を使って決議できなくするとか、誰かが棄権して引き分けになるとか、ないのか?」
「七王の会議に拒否権なんてチート技はないよ。それにね、棄権って、権利を棄てるって書くんだよ。棄権票ってのは七王の座を退いて、全ての権利を棄てる替わりに、1回だけ使えるんだってさ」
「厳しいな」
「厳しいよ」フリーダが返す。「決められない者は王に非ず。決断できぬ者は統治者に非ず。が帝国の理念だからね」
説明は続く。
魔界帝国で、政治の潮目が変わったのはつい数十年前−−
魔界帝国の経済を担当する黄金公マモンが「これ以上、魔界の軍勢を拡張し続けると、百年以内に国内経済が崩壊し、戦わずして魔界帝国は敗戦する」と報告。
「軍拡を止め、現在の規模を維持するだけに留めても、500〜1000年以内に経済破綻が起きる」とも予測した。
強行派は、これを経済破綻が起きる前に最終戦争を始めるべき根拠としたが、慎重派は逆に、これを魔界の軍勢の軍縮と組織再編成を行う機会だと主張した。
強行派は憤ったが、いつも通り4∶3で慎重派の意見が通り、帝国経済を「延命」させるための軍縮が始まった。
軍隊の規模を縮小した上で、戦闘力をこれまでと同等か、これまで以上にするのは至難の業だった。慎重派は36号のような単騎で大火力を持つ生体兵器を大量に配備して軍団の主軸にする考えだった。
天使長ルシファーの蜂起以来、ルシファーに付き従ってきた古参の大魔族からは不満の声が上がった。伝統と血統を重んじる彼らは、自分たちより格下で雑種の合成獣たちに地位や仕事をを奪われることは我慢ならなかった。