七王の命令故に逆らうことは出来なかったし、軍隊の再編成でポストを失った者たちには新しい就職先が与えられたとはいえ、慎重派への不満から多くの古参悪魔たちがルシファーを旗頭とする強行派の派閥に参加していった。
一方で、旧弊な古参悪魔たちの指揮下で息の詰まる思いをしてきた「戦後世代」の若い悪魔たちは組織の改編を喜んだ。今まで無碍にされてきた意見具申や改善提案は、組織全体が若返ったおかげで通りやすくなり、下級指揮官たちにも自由裁量権が与えられ、自分のやり方で仕事ができるようになった。彼らは慎重派の派閥に積極的に参加する者は少なかったが、慎重派が出す様々な施策の殆どを好意的に見ていた。合成獣に対しても偏見が無く、彼らと肩を並べることに対する拒否感も無かった。
こうして魔界帝国は天界と対立する一方、内部では強行派と慎重派、年長者と若者という対立軸を抱えることになっていた。
「いつも4∶3の一票差で負けちゃうとなると、強行派の魔王たちはストレスが溜まりっぱなしだろうな」
「それが、全てがそう言う訳じゃなくてね……」
根岸の一言にフリーダが答える。
最終戦争開戦については七王は4∶3で意見が割れているが、強行派の魔王が提出した税制改革案に慎重派の魔王が賛成票を投じることもあるし、新しい社会保障制度の法案が、全会一致で可決されることもある。
人間の政治家と違い、魔王たちは欲得や個人の感情に流されることなく、是々非々で国家運営を行っていた。
「それに、強行派が間違っていて、慎重派が正しいって訳でもないしね」
フリーダが説明する。
年寄りが始めた戦争の責任は年寄りが負うべきであって、このまま睨み合いを続けて子や孫の世代に負の遺産を残すべきではないというのが強行派の意見。どんなに巧妙な作戦を立てても犠牲が出るのは止められないから、せめて若い兵士たちの犠牲が少しでも減るよう、装備や軍備を整えてやろうというのが慎重派の意見。
「準備不足で戦争を始めたら、不利になるのは明白。でも、此方が準備をしているのなら、敵だってしている訳で、準備に時間をかければ圧倒的に有利になれる訳ではない。ボクは頭が悪いから、どっちが正しいのか分からないけど」
「姉御の身の上も複雑だけど、魔界帝国も複雑な問題を抱えているのか」
「その辺は、また時間のある時に詳しくやろうよ。悪魔談義を花を咲かせてたら、こんな時間だし」
フリーダの言葉で、根岸は時計代わりのスマホをスタンドから持ち上げた。
「うわ、もうすぐ12時じゃないか。風呂入ってくる」
「はーい。学生さん1名ごあんなぁ〜い」
コメント
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暫くお待ち下さいませm(_ _)m
はっ、完全にDance with Devilsハマってしまった、、、! いつ続き出ますか!?!?