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宮毘羅
20
バルト将軍とわかれると、俺は馬を降りて砦へと入る。
すると、廊下でトニーと出くわす。
今日も真面目なリスのように、せっせと働いているようだ。
「やぁ」
「お、王子! こんにちは、ご機嫌麗しゅう」
「夜会じゃないんだから。今日も仕事?」
「は、はい、仕事です」
「聞きたいんだけどさ、フリーデ将軍と喧嘩した?」
「…………」
何その複雑そうな顔。例えるなら、腹痛いけど便所行くほどでもないんだけど痛いんだよなって顔。
何かしらトラブルが起きてることは確定だろう。
「家事を少しサボってしまったので、それで怒ってるかもしれません」
「それだけ?」
「は、はい」
「他に何か思いつくことない? なんかトラブル抱えてるとか」
「いえ、全く……見当もつきません」
「例えばさ、ギャ――」
「あーすみません! 仕事がありますので失礼します」
トニーは言葉を待たず、逃げるように去っていく。
その時また何か紙を落としていった。
拾い上げると『ゴージャスカジノ、豪華777イベント開催!』と書かれた、この前と同じカジノのチラシ。
「ギャンブル好きだな……」
賭博で金使いすぎて怒らせたんじゃないの? 秘密にギャンブルやってるのがバレてフリーデ将軍を怒らせた。そんな気がしているが、さすがにそこまで愚かではないか。
だとしても、彼女のあの態度はそれだけとは思えない。
俺はフリーデ将軍を追いかけると、彼女はシャワー室から出てきたところだった。
黒のタンクトップ姿で、体からは湯気が登っていた。
「えっ、はやっ。もうシャワー浴びたの?」
「はい、後がつかえますので」
つかえるって、まだ砦に戻ってきて10分くらいしか経ってないのに。他の騎士は、まだ馬を厩舎に入れてる最中だろう。
俺はチラッと彼女の肩を見やると、何か噛み跡のような痣が見えた。
「噛まれた?」
そう聞くと、彼女はハッとしてタオルを自身の肩にかけて隠す。
「ゴ、ゴブリンにやられました」
嘘だな。ここ最近肩にケガを負ったところなんて見ていない。
「……そうか。随分歯並びの良いゴブリンだな」
「…………」
「フリーデ将軍、後で剣術教えてほしいんだけど。俺もソウルイーター使いたい。あの技は中二心をくすぐる」
「すみません、この後……ドリコ侯爵と会う予定があります」
フリーデ将軍の変化と共に、よく名前を聞くようになったドリコ市長。彼はここ最近、毎日のように砦へと視察に来ている。
俺の頭についている|NTR《エロゲ》センサーがビンビンと立っている。
もしかしたら、俺と接触したことによってフリーデ将軍のNTRイベントが進行している? だとしたら今どの段階だ?
NTRゲーは、フェーズが存在し、竿役との接触イベントを数回経た後、NTRイベントが数回発生、完全堕ち状態へと移行していく。NTRイベント最終段階である性交が終了していると、ヒロインの救助は不可能に。攻略不能なヒロインリストへと登録されてしまう。
しかし逆に、そこまで至っていないなら食い止めることは可能だ。
「…………断って」
「はい?」
「”余”の頼みと市長の頼み、どちらが優先かわかっておらんのか?」
「…………し、しかし」
「やはりそなたも余のことを第三王子と思ってなめているのだな」
「い、いえ、決してそういうわけでは!」
「いや、なめてる。お前なんか後回しでええわと思っている」
いじけてみせると、フリーデは困ったなと顔をしかめる。
「違うのですが、し、仕方ありませんね……」
「そういえばフリーデ将軍、余が将軍に勝ったら専属の指導者になってもらうという話、忘れたわけではあるまいな」
「覚えていますが……」
「今日から余は、連日挑戦し続けるからそのつもりでいるのだ。勝つまでやる」
「し、しかしこちらにも予定が」
「知ったことか! なぜ余との予定より優先する予定が存在するのだ! それでも帝国将軍か!」
「は、はっ!」
思わず敬礼をしてしまうフリーデ。
「余もシャワー浴びたらすぐ行くから、砦の中庭で待っとれ。勿論予定はキャンセルするのだ」
「わ、わかりました」
フリーデは心底困ったなという表情を浮かべながら、中庭へと向かっていく。
「……王子からの呼び出しなら、言い訳もつくだろ」
『ラウル鋭いねぇ~あの将軍からエロのオーラが漂ってたよ』
聖剣の中から見ていたナハトが、にひひと笑い声を上げている。
「やっぱりか、そうなんじゃないかと思ってNTRインターセプトした」
『こういうとき王子って便利だよね。君の命令を最優先にしなきゃいけないから』
「特に帝国軍騎士だからな。お上の言うことには絶対服従だ」
おまけにフリーデ将軍は、話した感じ押しに弱い。強気に攻められると相手に対応しようとしてくる。
わがままな男に弱いダメンズメーカーと見た。
『やっぱドリコって奴が悪いのかな?』
「だろうな、奴が動き始めてからフリーデもトニーもおかしくなっている」
原因は恐らく聖剣絡みと見て間違いないだろう。
「ナハト、ヨハンナと一緒に市長とカジノを洗ってくれるか?」
『いいよ~。ラウルはあのフリーデって将軍落としにいっちゃう?』
「落とすというか、帝国の強い騎士簡単に潰されてたまるか」
ガレスやらゾルデムやら面倒な国が出てきているんだ、将軍クラスを故障者リストに入れてたまるか。後の俺の生存率に関わってくる。
「それにフリーデ将軍を救えたら、バルト将軍は恩に着てくれるだろう。そうなればラウル派が設立できるし都合がいい」
『とか言っちゃって~』
「……まぁ不幸にはしたくないからな」
『将軍いいカラダしてるしね。湯上がりの体すごかったよね』
「スケベ悪魔と会話してると話が噛み合わん」
コメント
1件
**はる。だわ。** お、ラウルがNTRインターセプト決めたね! フリーデ将軍の肩の噛み跡とトニーのカジノチラスの伏線、上手いな。 「王命令で強引に予定キャンセルさせる」って、脳筋じゃないけど押しが効く主人公のいいとこ出てる。ナハトとの軽口がシリアスになりすぎないバランスも好き。この展開、どう転ぶか楽しみすぎる🔥