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#普通
野々さくら
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ありあ
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茜は涙を拭いながら鼻をすすり、ようやく笑顔を浮かべた。
「ぐすっ・・お父さん、かっこいい」
その一言に、多摩雄は照れくさそうに頭を掻きながら笑う。
「あはは、ありがとう」
それを聞いていた焔垂も、素直に感心したように頷いた。
「同じ男として、すげー尊敬しますよ」
銚子は懐かしむように目を細めた。
「またこの時期にたった一人の家族だった母の
病死も重なって意気消沈していた私に
夫は常に理解者として寄り添ってくれたの」
多摩雄は責めることも、焦らせることもなく、ただ理解者として寄り添い続けてくれた。
「この日に俺は誓ったんだ」
多摩雄は穏やかな笑みを浮かべる。
「この人を・・銚子を一生涯護って生きたい」
それは格好をつけた言葉ではなかった。
心の底から誓った、人生そのものだった。
「ずっと一緒に居たいってね・・・」
銚子は照れくさそうに視線を伏せる。
「あなた・・・」
信愛は二人を見比べながら、微笑んだ。
「それで二人は結婚したの?」
「ええ・・・」
銚子は頷き、小さく笑う。
「まぁ、式は挙げなかったけどね」
その言葉に朝陽が首を傾げた。
「マスコミがうるさいからですか?」
多摩雄は苦笑いを浮かべる。
「ああ、式を挙げて、それを嗅ぎ付けたマスコミが
大勢押しかけて来たら色々面倒だからね」
静かな幸せを守るための、小さな選択だった。
銚子は優しい眼差しで信愛を見る。
「それから信愛・・あなたが産まれた」
その時、焔垂が腕を組みながら口を開いた。
「なんで子供を作ろうと思ったんですか?」
茜は思わず呆れたような声を漏らす。
「はぁ?何言ってんの?」
焔垂は慌てて手を振る。
「いや、お母さんの過去を聞いてふと思ったんだ」
「なにを?」
「産まれて来た子供が御船愛子の
子供だってバレたりしたら、いじめを
受けたりする可能性もありましたよね?」
部屋の空気が少し静まる。
銚子はゆっくりと頷いた。
確かに、そんな未来を想像したことは一度や二度ではない。
「だから──」
焔垂が言葉を続けようとした瞬間。
茜が大きくため息をついた。
「はぁ〜・・・」
その様子に焔垂は戸惑う。
「な、なんだよ」
茜は呆れたように笑った。
「アンタがホームラン級のバカだからでしょ?」
「な、何がだよ!」
茜は焔垂の額を軽く指差した。
「いい? 理屈じゃないの!」
好きな人との子供が欲しい。
その想いに損得勘定も打算も存在しない。
「理由なんて探さなくていいの!
計算じゃないの!衝動なの!願いなの!
愛なの!分かる?分かりますか〜?」
焔垂は思わず肩をすくめた。
「そ、そういうもんなのか・・・」
茜は呆れながら肩を落とす。
「これだからガキは困りますよね〜お母さん」
焔垂はすかさず言い返した。
「俺とお前、同い年だろーが!」
そのあまりにも息の合った掛け合いに、部屋中がどっと笑いに包まれた。
張り詰めていた空気が一気に和らぐ。
銚子も優しく笑いながら二人を見つめる。
「まぁ、八乙女くんが言ったような未来・・」
私も何度だって想像したわ、でも──」
銚子はそっと自分の腹部に手を添えた。
あの時の温もりを思い出すように、ゆっくりと目を閉じる。
「お腹に宿った命を手放すなんて事
私には出来なかった・・・」
信愛は母の横顔を見つめ、小さく呟く。
「お母さん・・・」
銚子は優しく微笑み、娘へと視線を向けた。
「でも信じてた。 どんなに世界が冷たくても
どんなに理不尽な現実が待っていても
私たち家族は愛で結ばれているんだって」
その絆さえあれば、必ず乗り越えられる。
そう信じ続けていた。
「どんな逆境や困難にも立ち向かって行ける
跳ね除ける事が出来るって・・・」
静かな言葉だった。
けれど、その一言一言には、人生を懸けて守り抜いてきた者だけが持つ強さが宿っていた。
さくらは感慨深そうに目を伏せる。
「信じてた愛か・・・」
朝陽は何かを思いついたように鈴子を見た。
「だから名前を信愛にしたんですか?」
「あ!」
茜が納得したように声を上げる。
信愛自身も驚いたように母を見つめる。
「それが私の名前の由来だったの?」
鈴子は穏やかに頷く。
「ええ・・・そうよ」
その隣で、多摩雄が優しく笑った。
「たとえ世界が敵になったとしても
我が子だけは浮かんでいて欲しかった」
それは、世界中から否定されても、我が子だけは希望を失わず生きてほしいという願いだった。
多摩雄は少し照れくさそうに続ける。
「ノアの方舟みたいにね」
信愛は小さく笑い、ゆっくりとその言葉を噛みしめる。
「だから・・ノア・・」
自分の名前。
その由来を信愛が初めて知った瞬間だった。
コメント
1件
もうもう最高すぎて泣いた😭💕「理由なんて探さなくていいの!計算じゃないの!衝動なの!願いなの!愛なの!」って茜ちゃんの言葉、胸に刺さりすぎる…!信愛の名前の由来が「ノアの方舟」だったっていうラスト、エモすぎて声出たよ…。家族の絆と愛がぎゅっと詰まった回だった…!