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#恋愛
ばたっちゅ
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meyu0530
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それから、平凡な日常が戻ってきた。伊織さんは毎日たくさんの愛を注いでくれるし、直接的なスキンシップも多い。彼以外と結婚生活を送ったことはないので比べようもないが、おそらくとても甘やかで幸せな結婚生活なのだと思う。
仕事終わり、シフトが被った郁ちゃんに近況を報告すると、彼女は心底羨ましそうな声をあげた。
「いや~ん、ラブラブで羨ましい! 私も結婚したいよ~」
「元はと言えば郁ちゃんのおかげだよ。ありがとう」
「私なんてちょーっとアドバイスしただけだよ? なのに、元々一目惚れで想い合ってましたなんて、運命みたい。お見合い結婚も侮れないね」
郁ちゃんの言葉に照れくささを感じながらも、嬉しく思う。改めて、お見合いの相手が伊織さんでよかった、と。
「それに緋真ちゃん、ちょっと変わった気がする」
「変わったって?」
「なんだろう、雰囲気とか。服だって前まで明るい色のものとか着るイメージなかったし」
指摘をされて、自分でも意識していなかった変化に気付かされる。
ここ最近、前まで諦めていたお洒落にも少しずつ気を使うようになった。傍から見れば劇的な変化ではないが、私の中では普段着ない色の服を買うだけでも大きな進歩に思えた。
もちろん、きっかけは伊織さん。彼がいつだって私の自己肯定感を高めてくれるから、もう少し自信を持ってもいいのかな、と思い始めていた。
この年になって、そんな風に思えるなんて……。伊織さんにはやはり感謝しかない。
「あ~緋真ちゃんの惚気話もっと聞きたい! ちょっと寄り道して帰らない? あ、でも伊織さんのご飯の準備あるか」
「えっと、今日は伊織さんとご飯に行く約束をしてて……」
「デート? 羨ましい!」
普段、伊織さんと仕事終わりに会うことはまずない。彼の仕事が終わる時間は日によって違うし、基本的に夜遅い帰宅になるからだ。
今日は終わるのが早そうだと伊織さんから連絡があり、たまには外食でもしようかと連絡を取り合っていた。
「でも、上手く行っててよかった。前に白鷹さんのこととかあったから心配してたんだ。最近は教室にも来なくなったみたいだね」
久しぶりに聞く智美さんの名前にドキリとする。彼女とは、以前ビルの下で待ち伏せされていた時以来顔を合わせていない。また何かされるのではないかとしばらくは不安だったが、ぱたりと気配を消した。
伊織さんから聞いた話によると、前は病院でも伊織さんに話しかけてくることが多かったらしいのだが、最近はめっきりなくなり、業務上での関わりしかないとのこと。
あまりの変わりように嵐の前の静けさのような恐怖を感じたけれど、今のところ平穏な毎日を過ごしている。
「職場まで来るって相当だし、念のため気を付けたほうがいいかも」
「うん、そうだね……」
「まあ緋真ちゃんには、伊織さんがいるから大丈夫だと思うけど!」
そうこう話をしているうちに、伊織さんから病院を出たと連絡が入る。郁ちゃんに断りを入れると、足早に教室をあとにした。
◇
伊織さんと合流した後は、近所のカジュアルフレンチで食事を済ませた。お互い明日も朝から仕事があるため滞在時間は短かったけれど、充実した気分で帰路につく。
伊織さんはごく自然に私の手を握ると、体が触れ合う距離まで引き寄せた。
「どうしたの?」
「こうして一緒に外歩くことも少ないから、恋人気分を堪能しようと思って」
「ふふ、何それ」
「大事だろう。恋人期間を飛ばして夫婦になったんだから」
言われてみればその通りだ。こうして仕事終わりにデートをすることも、手をつないで歩くことも、世の中の恋人たちが普通にしている行動は、私たちには不足している。
「普段も一緒にいられる時間は長くないから、こういう時間は大切にしたいんだ」
「……うん、そうだね」
私を想う、彼の心に胸が温かくなる。
自宅への道を軽い足取りで進んでいくと、マンションのエントランスの近くに佇む人影に足を止めた。
「え……」
予想外の人物に、理解するのに時間を要する。
私たちの姿を見つけて歩み寄ってきた人物――それは智美さんだった。
「……どうして白鷹さんが」
伊織さんも、なぜ彼女がここにいるのかと戸惑っている様子。
そして、何かを感じたのか私をそっと背中のほうへと隠した。
「伊織さん……?」
「緋真は、何も言わなくていい」
そう言い切った伊織さんからは、ただならぬ雰囲気を感じる。
すぐそばまでやってきた智美さんに視線を移すと、彼女は虚ろな目で私たちを見ていた。
「思ったより遅いお帰りでしたね。デートですか?」
「……白鷹さんには関係ないことだよ。どうしてここへ?」
「同じ職場なんですから、伊織先生のお家くらい調べればすぐわかりますよ。でも残念、私は緋真先生に会いに来たんです」
「用件は? もう妻には関わらないでくれと言ったはずだけど」
「私、言うことを聞くとは言ってませんよ」
あくまで冷静さを欠かない伊織さんに、智美さんはどこか苛立っているようにも見える。
それにしても、なぜ私に会いに来たのだろうか。
もしも今日、伊織さんと一緒に帰宅していなかったら、彼女に待ち伏せをされていたのだと思うと、背筋がゾッとした。
「とにかく、家まで来られるのは困る。さすがにこのことは――」
「ねえ伊織先生。どうして緋真先生なんですか? 昔怪我をさせたからですか? 責任をとって結婚したんですよね? 事実上夫婦ってだけで、仕方なくですよね?」
伊織さんの話を遮って、智美さんが矢継ぎ早に質問を重ねる。
つらつらと壊れた機械のように出て来る言葉に、恐怖すら覚えた。
コメント
1件
うわ、24話でこの終わり方か…!最後の智美さんの「仕方なくですよね?」がめっちゃ怖いわ。デートからの帰り道で待ち伏せされてるって、日常にじわじわ忍び寄る狂気って感じでゾッとした。伊織さんのさりげない守り方も渋くて好きだ。次どうなるかマジで気になる🔥