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レトルトさんとの初めての顔合わせ。会議室には俺たち主演2人と監督、プロデューサーが揃った。俺は、テレビやスクリーン越しに見ていたレトルトが目の前にいるという事実に緊張を隠せない。その存在感の前に俺は身体がこわばっていた。
「レトルトさん、今日からよろしくお願いします!」
俺は持ち前の元気を全面に出して、頭を深々と下げた。
レトルトさんは台本から一瞬目を反らして、
「こちらこそ、よろしく」
とだけ言ってまた台本に目を戻す。
ちょっと冷たいその態度に、不安が募る。
そして本読みが始まった。冒頭の、二人の役が出会う重要なシーン。レトルトさんの放つセリフは、役の持つ孤独や冷徹さを完璧に表現しており、俺は圧倒された。
(よし、俺の出番だ)
そこで問題が生じた。
役の感情が徐々に高まり、攻め役が受け役への想いを爆発させる場面だった。
「…愛してる」
俺の口から出たセリフは、ただの棒読みだった。気持ちが全く乗っていない、文字を読んだだけ。自分でも驚いた。こんなに感情を乗せるのが下手なんだと。
それに気付いたレトルトさんが俺を見る。さっきの役のような冷たい目線で 。
「キヨくん」
彼声は低く、淡々としている。
「本当に俺を愛してる? 」
俺はハッと息を飲んだ。
「あまりにも棒読みすぎるよ。君は誰かを愛したこと、あるの?そんなんじゃ本番なんてとても無理だよ。
…一緒に主演は難しいかもね」
レトルトさんの核心を突く指摘に、俺の顔から血の気が引いた。役を演じていて初めての、演技への本気のダメ出しだった。
To Be Continued…