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#ざつだぁぁぁぁあん!!
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入れ替わってから、数日が経った。
けれど。
仁人と大智は、いまだに元へ戻っていない。
最初は、朝起きるたびに期待した。
今日こそ戻っているかもしれない。
けれど、鏡を見れば。
仁人には大智の顔。
大智には仁人の顔。
何日経っても、それは変わらなかった。
そして。
人間、不思議なもので。
数日もこの状態で過ごしていると、少しずつ慣れてくる。
もちろん。
慣れたからといって、困らなくなったわけではない。
むしろ。
慣れてきたからこそ。
別の問題が出てきた。
その日の楽屋。
仁人の姿をした大智は、ソファに座りながら、少し離れたところをじっと見ていた。
勇斗がいる。
その隣には。
大智。
――の姿をした仁人。
「これ見て」
勇斗がスマホを仁人へ向ける。
「何?」
仁人が自然に身体を寄せた。
二人で一つの画面を覗き込む。
肩が触れる。
勇斗が何かを言えば、仁人が笑う。
その距離が。
あまりにも普通だった。
「…………」
大智の眉間に皺が寄る。
二人が付き合っていることは。
もう知っている。
最初は驚いた。
何で黙ってたんだとも思った。
けれど。
付き合っていようが。
普段どれだけくっついていようが。
二人の好きにすればいい。
そこに文句はない。
ただ。
今。
勇斗の隣で笑っているのは。
どう見ても。
自分だった。
「…………」
無理。
やっぱり無理。
大智は立ち上がった。
そのまま二人のところまで歩いていく。
そして。
大智の姿をした仁人の腕を掴んだ。
「ちょ、何?」
ぐいっと。
勇斗から引き離す。
「離れろ」
「は?」
「近いねん」
「何が?」
「お前らが」
仁人が眉を寄せた。
「別にいいじゃん」
「よくない」
「何で?」
「嫌やから」
「だから何が嫌なんだよ」
「…………」
言えるわけがない。
俺の身体でイチャイチャするな。
本当は。
それだけなのだ。
けれど。
同じ楽屋には柔太郎と舜太もいる。
二人は。
仁人と大智が入れ替わっていることを知らない。
「……とにかく離れろ」
「意味分かんねえ」
仁人が勇斗の隣へ戻ろうとする。
大智が、また腕を引いた。
「だから行くなって」
「何なんだよ!」
「嫌や言うてるやろ!」
「……じんちゃん?」
舜太の声がした。
「何や」
反射的に答えて。
大智は止まった。
「…………」
しまった。
舜太が不思議そうにこちらを見る。
「最近、めっちゃ関西弁出るよな?」
「…………」
「だいちゃんと喋りすぎて移ったん?」
苦し紛れに。
大智は顔を逸らした。
「……そうかも」
舜太が笑う。
「そんな自然に移る?」
柔太郎まで楽しそうにこちらを見る。
「しかも結構うまいよね」
「もうええやろ!」
「…………」
笑われて。
大智は面倒そうに顔を逸らした。
そんな大智を。
舜太がしばらく眺めていた。
そして。
勇斗を見る。
その隣にいる、大智の姿をした仁人を見る。
もう一度。
仁人の姿をした大智を見る。
「あ」
「何や」
舜太が、にやっと笑った。
「じんちゃん、ヤキモチ?」
「は?」
大智が固まる。
柔太郎も。
二人を見比べて、納得したように頷いた。
「今日ハヤちゃん、ずっとだいちゃんのところにいるもんね」
「いつもはじんちゃんの近くにおるのにな」
「違うわ!」
即座に否定する。
「絶対違う!」
「でも、さっきから二人引き離しとるやん」
「それは……」
言葉に詰まる。
理由はある。
ちゃんとある。
でも。
言えない。
その沈黙が。
二人には、ますます図星に見えたらしい。
「じんちゃん、寂しいん?」
「寂しない!」
「じゃあ別にええやん。勇ちゃんがだいちゃんの隣おっても」
「それは嫌や!」
「ほら」
「違うって!」
舜太が笑う。
柔太郎まで。
「じんちゃん、意外と可愛いところあるね」
「可愛ない!」
「あ、また関西弁」
「…………」
何を言っても。
全部、嫉妬にされる。
大智は苛立ちながら二人を睨んだ。
けれど。
ふと。
その表情が止まった。
「…………」
待てよ。
今の自分は。
仁人だ。
少なくとも。
柔太郎と舜太から見れば。
勇斗を取られてヤキモチを妬いている仁人。
「…………」
だったら。
いっそ。
そういうことにしてしまえばいい。
その方が。
勇斗を自分の身体から引き離せるかも。
大智の口元が。
ほんの少し上がった。
その変化に。
本物の仁人だけが気づいた。
「……お前」
大智を見る。
「何考えてんの?」
「別に」
「絶対なんか考えてるだろ」
大智は答えなかった。
代わりに。
勇斗を見る。
「勇斗」
「何?」
さっきまでの関西弁を消す。
少しだけ。
声の調子も変える。
「……大智から離れて」
「…………」
勇斗が止まった。
「何で?」
「嫌だから」
言葉は。
それだけ。
大智は少しだけ顎を引いて。
勇斗を見上げた。
「…………」
勇斗が黙る。
中身は大智。
そんなことは分かっている。
分かっているのに。
顔は仁人だった。
しかも。
本物の仁人なら。
自分がどんな顔をすれば可愛く見えるかなんて。
わざわざ考えたりしない。
無意識に見上げられることはあっても。
意図的に。
こんな顔を作られることはない。
だからこそ。
仁人の顔で。
わざとそんな表情をされると。
「…………」
弱い。
「……分かった」
勇斗が素直に仁人から離れた。
「おい!」
大智の姿をした仁人が、すぐに反応する。
「何で言うこと聞いてんだよ」
「いや……」
仁人が声を潜める。
「中身、大智だぞ」
「分かってる」
「じゃあ何で」
「……顔が仁人だから」
「は?」
「無理。あの顔には弱い」
「お前……」
仁人が呆れた顔をする。
その向こうでは。
舜太と柔太郎が。
完全に別の意味で笑っていた。
「ハヤちゃん弱っ」
「じんちゃん可愛い」
二人には。
仁人が勇斗を大智から取り戻したようにしか見えていない。
そして。
大智は知ってしまった。
「…………」
これ。
効くんだ。
もう一度。
勇斗を見る。
今度は何も言わない。
ただ。
ほんの少しだけ上目遣い。
「…………」
勇斗が即座に目を逸らした。
「何で目逸らすの?」
大智が。
今度は仁人の口調で聞く。
「……それ、やめて」
「何が?」
「その顔」
大智の口元が上がった。
完全に楽しんでいる。
「お前、もうやめろ」
小声で仁人が止める。
「何が?」
「分かってやってんだろ」
「知らない」
「その顔やめろって」
「俺の顔だけど?」
「俺の顔だよ」
仁人の声が低くなる。
大智は笑いを堪えた。
さっきまで。
自分の身体でイチャイチャされて。
あれだけ嫌がっていたはずなのに。
今は。
仁人の姿を利用するのが。
少し楽しくなっている。
「じんちゃん」
舜太が面白そうに呼ぶ。
「何?」
大智はもう。
自然に標準語で返した。
「ヤキモチ認めたん?」
「…………」
大智は少し考える。
本物の仁人が。
嫌な予感しかしない顔でこちらを見ている。
それを横目に。
勇斗を見る。
そして。
ほんの少しだけ首を傾けた。
「……少しだけ」
「お前!」
仁人が思わず声を上げた。
舜太が吹き出す。
「認めた!」
柔太郎も笑う。
「じんちゃん可愛いじゃん」
大智は満足そうだった。
勇斗も。
仁人の顔でそんなことを言われて。
少しだけ口元が緩んでいる。
「…………」
本物の仁人は。
その顔を見逃さなかった。
勇斗の脇腹を、小さく肘で突く。
「痛っ」
「嬉しそうにすんな」
「だって……」
「だってじゃねえよ」
勇斗は何も言い返せず。
そっと大智から目を逸らした。
もう。
見ない方がいい。
中身が大智だと分かっているのに。
仁人の顔で。
仁人の口調で。
意図的に可愛い顔をされる。
それは。
思っていた以上に。
勇斗には効いた。
一方。
柔太郎と舜太は。
そんな事情など何も知らない。
二人の目に映っていたのは。
大智と仲良くする勇斗にヤキモチを妬いて。
最後には素直にそれを認めた仁人。
ただ、それだけ。
「じんちゃんって、意外とヤキモチ妬くんだね」
柔太郎が楽しそうに言う。
大智は。
今度こそ完璧に仁人の顔で笑った。
「……内緒ね」
「お前もう黙れ!」
とうとう仁人が大智を引っ張っていく。
「何すんだよ」
「いいから来い!」
「ちょっと」
「お前はもう喋んな!」
そんな二人を見ながら。
舜太と柔太郎は、また笑っていた。
もちろん。
二人は最後まで知らない。
今日見た“可愛い仁人”のほとんどが。
大智によって作られたものだったことを。
そして大智も。
一つ。
余計なことを知ってしまった。
勇斗は。
仁人の顔に、めちゃくちゃ弱い。
中身が誰だろうと。
頭では分かっていても。
あの顔で意図的に可愛く見られたら。
一瞬くらいは。
簡単に負ける。
「…………」
それ以来。
勇斗は仕事が終わるまで。
仁人の姿をした大智と。
できるだけ目を合わせないようにしていた。
その様子を見て。
大智はまた。
楽しそうに笑っていた。
コメント
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うわ、この話めっちゃ面白かった!身体が入れ替わったままの二人が、それぞれの顔を“武器”にし始めたのが最高だわ。大智が仁人の顔で上目遣いしただけで勇斗が即座に目逸らすの、笑った。中身は大智って分かってても、あの顔には弱いってのがめっちゃ納得。仁人の「俺の顔だけど?」「俺の顔だよ」の応酬も好き。連載中なら次が気になりすぎる🔥