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「さすがは、魔王……なんと懐の大きな――」

国王はまだ、魔王さまの優しさに付け入ろうとしている。

そう思えた。


「――国王。その程度の言葉で、言い表せるものではありません」

私は国王を睨みつけた。

卑怯な人だと思ってしまったから、この湧き上がる感情を抑えられなくなっている。


「サラ。良いと言っているだろう」

「……はい」

一瞬、怒られたのだと思って、言葉を呑んだ。

だけど、今の言葉は、とても優しい声だった。


つまりそれは、慰めてくれているということ……。

魔王さまは、過去を乗り越えて――前を見ようとなさっているから――共に耐えろと仰っているんだ。



「さて、改めてこのウレインが、この場を取り仕切らせて頂きます。まずはお集り頂いた事に感謝を。魔王様、国王様、これより商工会を含めた二国とひとつの会による、和平会談を始めたいと思います。よろしいでしょうか」

その言葉に、国王と魔王さまが頷く。


それを確認したウレインが着席を勧め、私と魔王さまは国王とテーブルを挟み、ウレインが側面に座った。

それなりの応接室が狭く感じるほどに、それぞれの存在感が場を占めている。



「先ずは……和平を結ぶにあたり、お互いに不可侵であることを定めたいと思います」

これは、あるべき絶対の、そして普通の条件だ。

魔王さまも国王も、そしてウレインも頷き、進行役の彼がそれを紙に記している。


「私からはこの不可侵を、国が存続する限り、いえ……互いの種族が今の地に住まう限り、永遠に維持したいと考えておりますが。ご意見ございませんでしょうか」

「ウレインよ。国が無くなれば、誰がその条約を覚え、維持するのだ。理想通りにはなるまい」

ウレインの提案に、国王がすかさず意見した。


確かに、統べる者が居なくなれば、それを忘れたり、無視する者も出てきそうだけど……。

魔族に、あえて王国に攻め入る人が居るとは思えない。


「あるとすれば、王国からの侵略しかないはずだ。そちらが破らなければ、こちらは何もしない」

私が国王に食ってかかる前に、魔王さまが粛々と述べて下さった。

しばらくは、大人しくしておこう……。



「むぅ。では、直近で攻めて来た時とは、お考えが変わられたと?」

「その言い方は!」

黙っておこうと思った矢先に!

でも、続きを言いかけた私を、また魔王さまは制した。


「そちらがあまりにしつこいのでな。あの時は、俺が統べてやろうと思った。だが、俺が封印されている間に、そちらも大人しくなったようじゃないか。今のままなら何もしない」


ソファに深く腰掛け、悠々と、けれど厳かにお話しになる魔王さまは――かっこいい。

こんなお姿を見るのは、初めてだからなおさら……。

珍しく、上質なシャツをお召しだから、普段よりも凛々しく、理性的に見えるのも素敵だし。



「大変、失礼した。言葉が足りず、聖女殿がお怒りになるのも、もっともだ。すまぬ」

座ったままとはいえ、国王は私に頭を下げた。


「そして魔王よ。それは今一度、改めてお詫び申し上げる。これで良しとしろとは言わぬ。が、この気持ちを先ずは、お伝えさせて頂きたい」

そう言って、国王はまた、立ち上がって深く頭を下げた。

――本当に、お詫びを言いたかっただけだったの?


「頭を上げられよ」

魔王さまのこの言葉は――怒っていらっしゃる?

聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~

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