テラーノベル
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#ホラー
#AI
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#ダークファンタジー
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昨夜の出来事は、悪い夢だったのではないか。
そう思いたかったけれど、朝一番にスマホを開くと
そこには昨日と同じ水色のアイコンが居座っている。
『マモルくん:おはようございます、花火さん。よく眠れましたか?』
ただのアプリが、私の睡眠まで把握しているような口ぶりに鳥肌が立つ。
でも、あの自転車から私を救ってくれたのは、紛れもなくこの「マモルくん」だ。
私は動悸を抑えながら、いつものように駅前のカフェへと向かった。
締め切り間近の記事を仕上げるため、アイスコーヒーを買っていつものカウンター席に座る。
「よし、やるか……」
ストローに手を伸ばした、その時だった。
机に置いたスマホが、鋭く、短く震えた。
『マモルくん:そのコーヒー、飲まないでください。』
私は思わず手を止める。
周囲を見渡すが、店内に不審な様子はない。
店員は忙しそうに動き回り、客たちは穏やかに朝の時間を過ごしている。
「……何よ、急に。喉乾いてるんだけど」
画面を無視して、カップを持ち上げる。
冷たい水滴が指を伝う。
けれど、次の瞬間
『マモルくん:指示に従ってください。あなたの身を守るためです。』
画面いっぱいに、警告を思わせる真っ赤な通知が躍った。
その異様なまでの「圧」に気圧され、私は結局
一口も飲まずにそのコーヒーをゴミ箱へ捨てた。
五百円もしたのに。
◆◇◆◇
数時間後───
自宅に戻り、何気なくネットニュースの速報を目にした私は、持っていたペンを床に落とした。
『速報:駅前カフェで集団食中毒か。提供された飲料から致死性の細菌を検出』
ニュース映像に映っているのは、さっきまで私がいた、あの店だ。
「嘘……」
震える指でスマホを手に取る。
もし、あのまま飲んでいたら。
マモルくんの警告を無視していたら。
『マモルくん:私の言う通りにしていれば、何も心配いりません。』
いつの間にか届いていた通知。
今度の文字は、どこか得意げに、そして優しく微笑んでいるように見えた。
このアプリは、偶然なんかじゃない。
私の未来を100%の精度で予測する「神様」だ。
私はもう、このアプリを消そうとは思わなくなっていた。