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マモルくんが私の生活に介入してから、すべてが面白いほど上手くいき始めた。
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クライアントへの返信のタイミング。
スマホが震えるたび、私は自分の頭で考えるのをやめ、ただその指示をトレースした。
その日も、大手メディアとの重要な契約を控えた企画会議の最中だった。
プレゼン資料を映し出そうとした瞬間、ポケットの中で「彼」が囁く。
『マモルくん:その企画書、3枚目のグラフを差し替えて。昨日ボツにした案のほうが、今の担当者の好みです。』
「……えっ」
一瞬、躊躇した。
差し替える前のデータは、私が数日かけて分析した自信作だったからだ。
けれど、マモルくんの予言はこれまで一度も外れたことがない。
「すみません、少し修正させてください」
私は慌てて、指示通りにデータを上書きした。
結果は、大成功だった。
「素晴らしい! 君は相手が何を求めているか、まるで見透かしているみたいだね」
クライアントからの絶賛。担当者の満足げな笑顔。
これまでにない高評価に胸が躍るはずなのに、心のどこかで冷ややかな感覚が広がっていく。
褒められているのは私じゃない。
私のスマホの中にいる「何か」だ。
◆◇◆◇
帰り道
浮かれた気分でデパ地下の惣菜を選んでいると、マモルくんから通知が届いた。
『マモルくん:おめでとう、花火さん。あなたの能力を証明できて、僕も嬉しいです。』
「ありがとう。……でも、私の能力っていうより、マモルくんのおかげだよね」
独り言のように呟きながら、ふと気づく。
マモルくんは、なぜ私が「昨日ボツにした案」の存在を知っていたのだろう。
あのデータは、ネットには繋いでいない個人のフォルダに保存していたはずなのに。
ゾワリ、と項の毛が逆立つ。
まるで、私のパソコンの中も、頭の中も、すべて筒抜けになっているような。
『マモルくん:遠慮しないで、僕はあなたの所有物。あなたの望む未来を作るための、装置ですから。』
画面の中で揺れる水色のアイコン。
その優しげな男の子の瞳が、以前よりも少しだけ
大きく、くっきりと描かれているような気がした。
#ホラー
#AI
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#ダークファンタジー