テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
目の前に待ち焦がれていた駿が居る事で、梓は硬直してしまう。
「よ、よっ!あ、梓・・・」
駿は優しく控えめに手を上げる。
「ねぇ?つかさ先生?どーゆー事?」
梓はつかさに尋ねる。
「黙っててごめんなさい!金森さん!実は私・・皆川先生と・・その・・連絡取ってたの・・・」
つかさは梓に深々と頭を下げる。
「え?何・・それ」衝撃の事実を目の当たりにした梓は、その場に立ち尽くす。
「うっそ!?まじで?」
「全然知らなかった・・・」
隠れて様子を伺う聖奈と沙月は互いに顔を合わせて驚く。
「信じらんない・・ならさ!私が不安で不安でたまらない時・・つかさ先生はどんな気持ちだったの?私をどんな目で見てたの?」
「そ、それは・・・」つかさ口ごもる。
「待ってくれ梓!雛形先生を責めないでくれ!俺がお願いしたんだよ!梓には黙っててくれって!」
「何で黙ってたの?」
「俺さ・・高校辞めてから塾講師の仕事を始めたんだけどさ・・軌道に乗るまで、梓を迎えに行く事を躊躇ってた・・安定して稼げるようになるまで・・その時が来るまで雛形先生には黙ってもらってだんだ!」
駿の話を梓は黙って聞く。
「雛形先生にも最初は断られたんだ!さすがに連絡しないのは可哀想だって言って・・けど・・それをしたら俺の決心が鈍りそうだったから・・だから」
「何ふざけた事言ってんの?」
我慢の限界に達した聖奈と沙月が皆の前に出て来る。
「あなた達・・待ってなさいって言ったでしょ?」つかさが口を開くが「うるさい!つかさ先生は黙ってて!」聖奈はつかさを押しのけて駿の前に立つ。
「駿くんさ・・お母さんが行方不明で寂しくて辛い思いをしてた梓の事・・間近で見てた筈だよね?なのに何で同じ事が出来るわけ?」
「お、同じ事?」
「そうだよ!駿くんは、生きてるのか死んでるのかさえも分からない状態で、梓の前から姿を消してたんだよ?これじゃ・・あのおばさんとやってる事同じじゃん!」
駿は聖奈の言葉を聞き黙ってうつむく。
「それに決心が鈍りそうだったって何?そんなの駿くんの自己満でしょ?自己満の為に梓を犠牲にすんなよ!少しは梓の気持ち考えてやってよ!駿くんはもう梓の彼氏なんでしょ!?」
聖奈は涙を流しながら駿の胸を両手で小突く。
「いいよ・・ありがとう・・聖奈」
梓はそう言うと聖奈の横を通り過ぎて、ゆっくりと駿に近づく。
「いや良くないじゃん!駿くんは梓を」
「大丈夫だから!」梓は声を張り上げ、駿を黙って見つめる。
「梓・・・その・・ごめ」
梓は駿の言葉を遮るように、平手打ちをする。
「梓・・・」そんな梓を聖奈は黙って見つめる。
「馬鹿にしないで!子供扱いしないで!」
「いや、梓・・俺はただ・・」
「私・・駿に養ってもらおうなんて思ってない!」
梓は涙を流しながら声を張り上げる。
「もう・・駿におんぶにだっこだったあの頃の私じゃないの!社会に出てお金を稼いでる大人なの!私だって・・ぐすっ・・駿の支えになれるの!」
梓は声を殺して泣きながら駿の胸に顔を埋める。
「梓・・・」駿の目から涙が溢れ出る。
「駿・・ひとりで抱え込まないで!そんな事しちゃったら・・駿・・ぐすっ・・壊れちゃうよ・・」
「こ、壊れる?」駿は首を傾げる。
「覚えてない?駿が初めて私を家に泊めてくれた時に、私に言ってくれた言葉だよ?」
駿は過去を思い返してハッとする。
「自分だけが耐えればいいって、そういう我慢ってさ、長くは続かないんだよ!頭では大丈夫!平気!って思ってても、心がそれについて来なくなって、耐えれなくなって壊れちゃう日がきっと来るんだよ! 」
「駿・・私の為に自分を犠牲し続けてきたんだよね?分かってる・・駿の気持ちが分かるからこそ・・私は悔しいの・・・私だって駿の支えになれるのに・・もう・・子供じゃないもん・・」
梓は涙を流しながら震えた声で言う。
「そうだよな・・俺・・間違ってたよ・・ぐすっ
・・梓はもう・・大人なんだよな・・」
駿は梓を力強く抱きしめて頭を撫でる。
「ごめんな?梓・・俺の自己満のために梓に辛い思いをさせた・・孤独に苦しんでた梓を知ってる筈なのに・・俺ってヤツはホンッットダメなヤツだな・・ぐすっ」
「でもいい!こうして約束通り迎えに来てくれた!でしょ?駿❤︎」
梓は駿を見上げて微笑む。
「ああ!もう絶対に梓から離れていかないし、絶対に梓を離さない!絶対に!約束する!ずーっと一緒だよ・・ぐすっ」
ホテルのロビーで2人な泣きながら抱き合う。
「うわぁぁぁ(泣)あずざぁぁ」
聖奈は涙を流しながら大声で泣き叫び、梓の背中に抱きつく。
「ちょ!聖奈!泣きすぎだよ!もう!」
「だっでぇ〜!梓が幸ぜになっでぐれで・・うれじいがらぁ〜うわぁぁぁ(泣)」
聖奈は涙と鼻水をダラダラと流しながら泣きじゃくる。
「バカ・・泣きすぎでしょ・・笑顔で喜ぶとこでしょ!」沙月も耐えきれなくなり涙を流す。
「金森さん・・よかった・・」つかさもそんな皆に涙腺を刺激され、涙を流す。
それから皆はロビーのソファに腰を下ろして談笑をする。
「え?なら駿・・また先生になれるの?」
「ああ!運良くこの近くの紅葉 学園高校で採用してもらってさ!」
「紅葉学園って確か、教員が望まない限り異動は無いって方針でしたよね?」
つかさが駿に尋ねる。
「ええ!だからずっと梓の側に居れるぞ」
「やったー❤︎」梓は満面の笑みで駿に抱きつく。
「じゃあさ梓?今日は先に帰ったら?」
「そうだよ!せっかく駿くんと再会できたんだからさ!」
聖奈と沙月が梓の肩をポンポンと叩く。
「でもみんなに悪いし・・・私だけ先にって言うのは」
「何言ってんのよ!ウチらなんて気にしなくて良いよ!それに駿くんと梓って、今までは教師と生徒だったから、2人きりのデートってした事ないじゃん?」
「あ!それもそっか!」聖奈に言われ、梓は思い出したように声を張り上げる。
「でも今は1人の男と1人の女!ホテルだって行けちゃうよ?きゃー❤︎」
「ホ・・ホテル・・・」聖奈の言葉に駿と梓は互いに顔を赤くする。
「ちょっとあなた達!」つかさが立ちあがろうとするが。
「はいはい!つかさ生徒には邪魔させませ〜ん!」沙月はつかさを無理矢理座らせる。
「そうそう!もう駿くんと梓はただのカップルなんだから!つかさ先生引き止める筋合いないでしょ?」
「ま、まぁ・・確かに・・そうね」つかさは聖奈に言われて観念したのか、大人しくソファに座る。
「だからさ!梓!行って来なよ!2人の時間を楽しんどいでよ!」
「ありがとう!みんな!なら駿!行こ❤︎」梓は聖奈に言われ、駿の手を引き、皆に見守られながら、ロビーから小走りで出ていく。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!