テラーノベル
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洗濯物たたみながら。
「すちー、これどこ」
「それ俺の」
「パーカー多くない?」
「落ち着くから」
「全部似てる」
「違いわかるし!」
平和。
なんでもない会話なのに、
空気がやわらかい。
すち、畳み終わった服抱えて歩く途中、
ラグに足引っかかる。
「うわ」
みこと、反射で腕つかむ。
転ばない。
距離、近い。
「……どんくさ」
「助けた側が言う?」
でも手はまだ離れてない。
数秒そのまま。
すちが先に視線そらす。
「……ありがと」
声ちっちゃい。
みこと、ちょっと笑う。
「どういたしまして」
二人で昼ごはん作る。
すちが野菜切って、
みことが焼く係。
「猫の手!」
「やってる!」
「指もってかれるぞ」
「もってかれない!」
すち、真剣すぎて眉寄ってる。
みこと、横から見て思う。
(この顔、好きだな…)
言わないけど。
代わりに。
「ほら」
口元に付いたソース、
指で軽く取る。
すち、フリーズ。
「……なに」
「ついてた」
「い、言って!」
顔あつい。
みこと平然。
「言うより早い」
「心臓に悪い」
二人同時に止まる。
「え」
「誰も呼んでない」
ドア開けたら。
らん・なつ・いるま。と、こさめ
「遊び来たー!」
「近く通った」
「差し入れー」
すち、即姿勢正す。
「い、いらっしゃいませ…!」
急に敬語。
みこと吹き出す。
「なんで接客モード」
「ひ、人来るの久しぶりで…!」
らん小声で言う。
「かわいいなこの子」
すち、さらに固まる。
みんなくつろぐ。
でもすちは端っこ。
姿勢いい。
「お茶いれます!」
「落ち着け」
みこと腕引く。
隣座らせる。
「ここでいい」
「で、でも」
「いいの」
すち、おとなしく座る。
ちょっと安心した顔。
なつがニヤニヤ。
「距離近くない?」
二人、同時に固まる。
「ち、ちが…!」
「普通」
言い方真逆。
空気ちょっと笑いに包まれる。
ドア閉まって静かに。
すち、その場に座り込む。
「……つかれた」
「敬語使いすぎ」
「むり」
みこと隣座る。
「でも」
すち、小さく笑う。
「なんか、楽しかった」
「だろ」
「ここに人来ても、怖くなかった」
みこと少し驚く。
でも嬉しそう。
「進化してるじゃん」
すち、ちょっと照れ。
「……みことがいるから」
言ってから固まる。
みことも止まる。
数秒。
「……それ、甘すぎ」
「言わせたのそっち!」
ソファで並んで座って。
テレビ見ながら。
すち、眠くなってきて。
こて。
みことの肩に頭。
無意識。
みこと動かない。
起こさない。
「……重くない?」
半分寝ながら。
「軽い」
「うそ」
「ほんと」
すちは安心したみたいに目閉じる。
みこと、静かに思う。
(守る、とかじゃなくて)
(ただ、隣にいさせてくれればいい)
部屋は静か。
でも心は満たされてる。
これがきっと、
“必要”のやわらかい形。
学校….
昼休み前の廊下。
すち、教科書抱えながら歩いてる。
前より少しだけ姿勢がまっすぐ。
でも人の多い場所はまだ緊張する。
ざわざわした音に、
肩が無意識にこわばる。
そのとき。
後ろから軽く袖引かれる。
「置いてくな」
みこと。
すち、ちょっと安心した顔。
「置いてない」
「歩幅早い」
「普通」
並んで歩く。
それだけで、
呼吸が楽になる。
教室入る前。
すち、ぽつり。
「……学校、前より怖くない」
みこと少し目を細める。
「そっか」
それだけ言う。
でも嬉しそう。
放課後、家。
ソファで宿題。
すちは問題集に集中してて、
眉間にしわ。
みこと、横で見てる。
「そこ違う」
「え」
顔近づけてノート覗く。
距離ゼロ。
すち固まる。
「……ちかい」
「見えない」
「見えてるだろ」
でもどかない。
すちの耳赤い。
みこと気づいてる。
でもあえてそのまま。
「ここ、こう」
手、ノートの上からすちの手に少し触れる。
すちの心臓、うるさい。
「……わかった」
声ちっちゃい。
みこと、ふっと笑う。
「素直」
「いま余裕ないだけ!」
でも逃げない。
前なら離れてた距離。
今は、そのままいられる。
ピンポン。
空気が変わる。
すちの肩、びくっと揺れる。
みこと、すぐ気づく。
「俺出る」
ドア開けると。
すちの父親。
空気が冷える。
「ここにいるんだろ」
声は低い。
みこと、ドアの前に立つ。
「帰ってください」
はっきり言う。
「家族の問題だ」
「今は違います」
父親、苛立つ。
腕を強く掴もうとする。
みこと、振り払う。
強いけど、暴れない。
ただ、目が真っ直ぐ。
「これ以上近づいたら、ちゃんと対応します」
声は震えてない。
すちは部屋の奥で聞いてる。
足がすくむ。
でも。
逃げずに見てる。
みことは怒鳴らない。
でも一歩も引かない。
「この人はもう一人じゃない」
静かな言葉。
父親は舌打ちして去る。
ドアが閉まる。
静寂。
みこと、深呼吸して振り向く。
すち、立ってる。
少し震えてる。
でも目は逸らしてない。
「……ごめん」
反射みたいに言う。
みこと、すぐ否定。
「違う」
近づく。
でも急に触らない。
「怖かったな」
すち、うなずく。
涙目だけど、泣いてない。
「でも」
小さく続ける。
「……逃げなかった」
みこと、少し笑う。
「すごいじゃん」
すちはゆっくり息を吐く。
そして。
自分から、みことの服の袖つかむ。
弱い力。
でも自分から。
「……そば、いて」
みこと、優しく答える。
「いる」
夜。
同じ部屋。
すちは思う。
前の「必要」は、
縛る言葉だった。
今の「必要」は、
守るでも縛るでもなく、
一緒に立つって意味。
怖い夜だった。
でも。
隣にいる人は変わらない。
それだけで、
世界は崩れなかった。
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cx@v9rxA
えもい とうとい かんどうようそあり すこし「ふふ、笑」となるようそあり え、てんさいだね え、てんさい(にかいめ)