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(深澤視点)
うるさい…..うるさいうるさいうるさいっ!!!
なんなの!?さっきから….ずっと….!!
『…..!!…か…!!』
『…….だ…!?お……ら…..!!!』
『……!….ない….!!!』
『……る….!!』
外からの声…..
何言ってるのかわかんない声が聞こえてくる。
耳塞いでも、聞こえてくる…..!!
「….やだ…..やだっ….!!」
嫌だ….
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…..
なんで!?
なんでなの!?
誰が….誰の声なのかもわかんないのに….!!!
『…..ふっか….!!!』
「……ッッッ!!!」
最、悪だな……
知りたく、なかったよ…..
「ひかる……」
俺は、まだ….
照に、救われたいって思ってんだ…..
俺は、もう照の隣に立つなんて…..
そんなことできない….
照だけじゃないよ。
もう、俺はSnow Manとしてみんなと一緒に戦う資格なんてないよ。
だから、やめてよ。
もう、やめて。
「あはは…..もう、いいのに….」
ほら、見てよ。
あんなに完璧に笑えてたのに、もう、できなくなっちゃった。
すっげー歪んだ笑顔!わら
こうやって、頑張って指で口角を上げないと笑えないの!
それに、役たたずだよ?
なーんもできないの!
みんなだって知ってるよね?
今までの力は俺じゃない。
大烏の力だよ?
俺って、こーんなに役たたずなの!
もうさ….
ふっかなんていらない!
….って言ってよ。
そしたら、少しは楽になれるからさ….
「…..お願い…だから….」
もう、俺のことを見ないで….
こんなにも醜い俺を….
(岩本視点)
ふっか、今度こそ、今度こそは絶対に、ふっかの内側にいくらね。
だから、もうちょっと待っててね。
多分、あと少しなんだ。
もう少し龍の様子を見て、”隙を見つける”。
それが見つかるまで、俺は….俺たちは声をかけ続ける。
ふっかの魂に届くまで。
聞こえてるんだよね?
でも、きっとお前は、聞こえないふりしてる。
聞こえたら、救われちゃうって思ってるんでしょ?
それが嫌でしょうがないんだろ?
ほんと、お前らしいんだよ….
いつも、自分だけで抱え込もうとして….
….そんなこと、させてやんない。
強引にでもその荷物を俺が奪う。
俺も一緒に背負う。
それが、何であっても…
俺はふっかの”隣”で、一緒に背負って歩ってくよ。
〖見つけたぞ。〗
大烏は岩本を乗せて、一気に龍に接近する。
「照!!!行け!!!」
佐久間が、岩本が深澤の元へ行くことに気づいて叫ぶ。
「照…..頼んだよ….」
阿部は、佐久間とは対照的に、静かに岩本を見つめる。
「…..任された。」
岩本は、小さい声で、大きいものを抱えて、龍の中へ、入っていった。
「….佐久間!大烏!5人のサポートに行くよ!」
岩本が龍の中へ入っていったことを確認して、阿部が指示を飛ばす。
そして、2人と1匹は龍から離れる。
岩本への信頼を残して。
(深澤視点)
嫌な、予感がした….
この空間に、何かが侵入してきた気配。
あー….
「嘘だよねぇ…?わら」
まさか、こんなとこに来るわけない。
こんなとこに来てまで、俺のとこに来るわけない。
わかってる。
わかってるよ….!!!
なのに….
なんで、胸の中にある期待が消えないの….?
「…..面倒だな….」
外では、男がため息を吐いていた。
新たな力を見つけて、龍を追いかけたはいいが、近づけなかったのだ。
龍の周りにドームのようなものが張っており、誰も近づけようとしなかった。
だから、男はここで退散しようと思ったら….
「絶対ボコる….」
「お前だけは、絶対ゆるさへんかんな…!!」
男担当の5人に逃げ場を潰されたのだ。
「無駄な戦いはしない主義なんだよ。君たちとの戦いは、まさに無駄….やる気が湧かないな。」
この状況でも、男は相手を見下すことを辞めない。
心底どうでもいい。
せっかく新たな力を目にして、手に入れようとしたのに、結局近づけない。
男にとって、この場は”無価値”なものへと変わっていたのだ。
「無駄….?戦闘に無駄なんて存在しねぇんだよ。」
目黒は、怒りを露わにしながら言う。
目黒は、たしかに深澤のことを傷つけられたことに怒ってる。
だが、それ以外にも怒りの理由がある。
力しか見ていない男が、目黒は嫌いだった。
目黒も強い力には憧れる。自分もああなりたい!と思う。
だが、他人を利用した強さは好きではない。
実力で勝負ができないような人と戦いはしたくない。
それに、力が弱い者を”弱者”として軽視してる態度も癪に障る。
つまり、男と目黒の力に対する考えは、全く違う。
強い力に憧れるもの同士だからこそ、目黒は男が許せなかった。
「…..そうかい….」
男は、目黒の射抜くような視線を受けて、呆れたように息を吐く。
「….なら、戦ってあげようか….」
男は、心底興味が無さそうに、小さく片手を掲げる。
「……っ!!!」
繰り出される攻撃。
…..おかしい….
ずっと疑問に思っていたが、明らかにおかしいことを理解する5人。
男の能力は、洗脳のはずだろう?
なぜ、”洗脳以外の能力”も使える?
その答えは、分からない。
考える余裕もなかった。
「…..あっぶね….!!」
「まずいよ…..」
5人は、焦っていた。
男が、5人を”敵”として見てる。
つまり、男は5人に集中している。
隙の無い攻撃の連続に、5人は逃げるしかできない。
「正直、舐めてたね…」
ラウールが、失敗した、と悔しそうに呟く。
男と本気で戦ったことがなかったのに、見くびっていた。
それが今、仇となっている。
「……どうすれば….」
早く、阿部と佐久間と大烏が合流してくれれば…
「佐久間…..俺のお願い、聞いてくれる?」
大烏の背中に乗り、移動している途中に、阿部は佐久間にとあることを話していた。
「お願い?あべちゃんの?」
唐突な顔で、佐久間はキョトンと阿部を見つめる。
「うん。佐久間にしか頼めないんだ。」
「……うん…..わかったよ、あべちゃん….。」
阿部の頼み事。
思わず、佐久間は顔を歪めてしまった。
が、すぐに笑ってみせる。
「ありがとう、佐久間。」
阿部が、柔らかく微笑んでいたから。
佐久間が阿部を、不安にさせないように。
〖いたぞ〗
大烏の言う通り、前を見てみると、男の攻撃から逃げる5人を目視した。
「行くよ、佐久間。」
「…..うん!!」
阿部の合図で、2人は大烏の背中から”飛び降りた”。
「…..っ!?」
2人の、まさかの登場の仕方に5人は息が止まる感覚を覚える。
飛び降りるなど、ありえない。
そもそも着地はできるのか?
2人と地面との間の距離が短くなるにつれ、5人は焦る。
助けた方がいいのか?
だが、なにか意味があるかもしれない。
2人意図が分からずに困惑する5人よそに、阿部と佐久間の間では、”秘密の会話”が行われていた。
阿部は、落ちている時にしっかりと佐久間の背中に手を置く。
「……佐久間….お願いね。」
そして、置いた手に力を込めて、佐久間の為に最後の力を振り絞る。
「….あべちゃん….任せて….」
佐久間は、ゆっくりと息を吐き、”着地の準備”をする。
阿部は、安心したように微笑み唱える。
hack、と……
「….!!congelare!!」
宮舘は、落ちる2人を見て急いで氷の坂を創る。
阿部が、着地の準備が出来ていないことに気づいたから。
それに気づいた目黒も、
「Hedera!」
能力で阿部の身体を捕らえる。
2人の連携のおかげで、阿部が着地に失敗し、大怪我をすることはなかった。
だが….
「阿部ちゃん!?」
「おい!しっかりしろ!!」
向井、渡辺が急いで阿部の元へ駆け寄るが、
「……」
阿部は、力を使い果して気絶していた。
阿部の、佐久間へのお願い。
それは、阿部が最後の力を佐久間に託す作戦だった。
「佐久間にしか頼めないんだ。」
阿部が真剣な瞳で、佐久間を見つめる。
「俺にしか…?」
佐久間は、何となく嫌な予感がした。
阿部は、何かとんでもないことを考えてる気がした。
「俺の、hackをもう一度使って欲しい。」
「…..っ!?」
佐久間は、言葉を失う。
hackは、体力の消耗が激しいため、1度しか使えないと言っていたのに、どういうことだ。
「俺には….あと1回分の力が残ってる。それを、佐久間に使うよ。」
「……うん。」
それだけなら、それだけなら良かったのに….
「それで、5人のとこに着いたら大烏の背中から”飛び降りる”。」
「…..へ?」
先程から、阿部は何を言っているのだろう?
そんなこと、できるわけが….
「佐久間なら、着地できるよ。俺のhackで、”男の力だけ”をコピーするから。」
「いや…..いや、待ってよ!それは分かったけど….あべちゃんは!?」
毒を以て毒を制す。
阿部の作戦は、佐久間に男の力を最大限にコピーさせるものだった。
「俺のhackは、男にバレてる。それに警戒されてる可能性もある。だから、能力を使ってるのを隠す。」
その通りだ。
男は、阿部のことを危険だと認識している。
普通に能力を使おうとしたらバレてしまう。
そしたら、意味が無くなるのだ。
「…..だからさ、俺のことを”助けないで”。」
阿部は、柔らかく微笑んで佐久間に言う。
「…..っ!」
『こっちだって命かける覚悟できてるんだから。』
岩本に言っていた言葉。
本当に、阿部は命をかける覚悟ができていたのだ。
それも、佐久間に….
佐久間が、阿部を見殺しにするということへの反抗はある。
むしろ、その感情の方が大きい。
だが、
「……」
阿部の、柔らかい笑顔を見て思い直す。
(あべちゃんは、俺のことを信頼してるからこそ頼んでる…..なら、俺に断る理由はない。ここで断って、あべちゃんに不安な思いさせない….!)
佐久間も、何とか笑って答える。
「……うん…..わかったよ、あべちゃん….。」
(….よかった….)
佐久間は、宮舘と目黒によって大怪我を免れた阿部を、視界の端で捉え、安心する。
これで、集中して男と戦える。
それに、佐久間はこの男に勝てる気がしてた。
なんとなくもあるが、佐久間は、男以上に男の”特性”について理解した。
(あべちゃん。これが、”宝の持ち腐れ”ってやつかな?)
佐久間は、前に阿部に教えてもらった言葉を思い出す。
男は、自分で特性を理解していない。
理解していないまま使っている。
たしかに強い。
だが、理解することによって本領を発揮する”洗脳の能力”とは違うもの。
阿部のhackによって、その特性までもコピーし、本質を理解した佐久間は、負ける気がしなかった。
“男の特性”。
さすが、かつての能力争いの中心となった人物の”子孫”と言ったところか。
男は、今まで見てきた能力を使うことができる。
(誰かを利用してしか強くなれないてめぇにピッタリだよ。)
佐久間は、心の中で毒づく。
それは、男もなんとなく理解しているだろう。
そして、もうひとつ。
佐久間と、恐らく阿部のみが理解しているもの。
“錬金術”。
これも、力を求める男にはピッタリだ。
『錬金術っていうのはね、様々な物質とか人間の肉体、魂を対象として、それらをより完全な存在に錬成することを言うんだよ。』
かなり前に、阿部が教えてくれた。
佐久間の質問に、阿部はなんでも答えてくれた。
(これを、あべちゃんの力のおかげで使えるんだよ….)
佐久間は、氷点下よりも冷たさを秘めた瞳で男を射抜くように見る。
(……やってやるよ…)
佐久間は、右手を前に出し、
「……っ!?」
男を吹き飛ばした。
(何が…起こった…!?)
男は、佐久間の”大きすぎる”力に驚愕していた。
先程まで、こんな膨大な力はなかった。
たとえ、阿部の能力を使ったとしても、ここまでの力を持つなど…
「ありえない…!!」
男は、初めて”格下の相手に見下される感覚”を覚える。
それは、男にとって、腸が煮えくり返る程のものだ。
一方で、佐久間の頭は冷えていた。
脳に血液がものすごい勢いで流れている。
佐久間は、男の力をコピーするのと同時に、”阿部の能力”もコピーしていた。
一度に複数をコピーするなど、危険なことだ。
場合によっては、重なる力に耐えきれずにおかしくなることもある。
自分を失う可能性もある。
それでも、佐久間はコピーした。
(俺だって……命、かけてんだよ…)
佐久間は、すぐに5人に向き直る。
「みんな、あべちゃんのこと、よろしくね。あいつのことは、俺に任せて。」
「え?ちょ、佐久間くん!?」
佐久間は、それだけを言い残して、ラウールの制止を聞かずに男の元へ向かう。
(あべちゃんの安全は問題ない。俺は、俺にできることをする。)
佐久間は、”宮舘の氷の能力”を使って移動する。
ずっと前から、氷の上を滑って移動する宮舘に憧れてたのだ。
(あいつは、多分怒ってんだろ。”弱者”の俺に吹き飛ばされて……ざまぁ。)
佐久間は、男との戦いについて考えていた。
それで、改めて思うことがある。
(あべちゃんって、ホントすごいよ…いつも、こんなに考えてくれてたんだね…)
阿部の能力を、完全にコピーできてるわけではない。
それでも、阿部は膨大な情報から何が必要かを判別して、メンバーに伝えていたのだ。
それが、どれだけ大変なことか。
阿部の能力がなかったら、佐久間はきっと多すぎる情報量にパンクしていた。
(あべちゃん…ありがと、そして、あとは任せて…)
胸の中の温かいものを抱きしめて、佐久間は、男の元へ辿り着いた。
「…….」
男は、何も言わずに佐久間を睨みつける。
男がとても怒っていることは一目瞭然だった。
「…..ふはっ…」
佐久間は、予想通りすぎる男の姿に思わず笑ってしまう。
今まで男の掌で転がされてた分、その様子が滑稽に感じる。
(全部、予想通りなんだよ。)
立場はすでに逆転している。
今度は…
(俺がてめぇを転がす番だ。)
佐久間が、この場の支配者だ。
(岩本視点)
「……」
龍の中は、真っ暗だった。
ここは、ふっかの精神世界のようなもの。
今、こんなに暗い中1人でいるんだな?
大丈夫だよ。
俺が1人にさせない。
「今から、行くよ。」
俺が、お前のことを迎えに行くから。