テラーノベル
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全国ツアーの初日終了後。ホテルの部屋に戻った深澤辰哉は、シャワーを浴びる気力すらなく、ベッドに突っ伏していた。
「……あー……、腰イテェ……」
MCで声を張り上げ、トラブルを回収し、メンバーのボケを全部拾う。
精神的な疲労は、肉体的なそれを凌駕していた。
泥のように沈み込んでいると、静かにドアが開く音がした。
「……ふっか。風呂沸いてるぞ」
岩本照だ。
同室の彼は、すでにシャワーを浴びてスッキリした様子で、タオルで髪を拭いている。
「……むり。照、先行っていいよ……俺、ここで朽ち果てるわ……」
「何言ってんだ。明日もあるだろ」
岩本は呆れたように笑うと、ベッドサイドに腰掛けた。
そして、うつ伏せになっている深澤の腰に、大きな手を当てた。
「……ここか?」
「……っ、うぁ……そこ……」
岩本の親指が、凝り固まった筋肉を的確に捉える。
ジムトレーナー並みの知識と技術を持つ岩本のマッサージは、プロ顔負けだ。
「……お前、今日動きすぎ。MCでも気を遣いすぎなんだよ」
「……それが俺の仕事だもん……」
「そうだけどさ。……もっとメンバー頼れよ」
岩本の声が優しくなる。
グッ、グッとツボを押されながら、深澤は枕に顔を埋めたまま口元を緩めた。
「……頼ってるよ。……特に、お前にはな」
「……ん」
短い返事だが、指先の力が少しだけ優しくなったのを感じる。
しばらく無言の時間が流れる。
この沈黙が心地いいのが、いわふかのシンメたる所以だ。
「……よし、だいぶ解れたな」
岩本が手を離すと、深澤はようやくのっそりと起き上がった。
しかし、起き上がった勢いでバランスを崩し、目の前にいた岩本の胸にコテンと頭を預けてしまった。
「……おっと」
「……悪い、まだフラフラするわ」
「……ふっか」
岩本は深澤を突き放すことなく、自然に背中に腕を回して支えた。
筋肉質な胸板の温かさ。
リーダーとしての頼もしさと、パートナーとしての甘さが同居している。
「……お前がみんなを守ってくれてるのは分かるけどさ」
岩本が深澤の耳元で、低く囁く。
「お前のことは、俺が守るから。……だから、俺の前ではカッコつけんな」
「……っ、」
その言葉に、深澤の目が潤む。
グループのために道化になり、三枚目を演じる深澤を、一番近くで見て、認めてくれている男。
「……照には敵わねーな、マジで」
「当たり前だろ。……俺の奥さん務まるのは、お前しかいねーよ」
「誰が奥さんだ。……ま、旦那が優秀なのは認めるけど」
深澤が照れ隠しに軽口を叩くと、岩本は嬉しそうにクシャッと笑い、深澤のおでこにコツンと自分のおでこを合わせた。
「……ほら、風呂入れてやるから。立てるか?」
「……おんぶ」
「はあ? 甘えすぎだろ(笑)」
「いいじゃん、夫婦なんだから」
文句を言いながらも、岩本は背中を向けてしゃがんでくれる。
その広い背中に飛び乗りながら、深澤は思った。
この男がいる限り、どれだけ疲れても自分は最強でいられる、と。
シンメの夜は、とろけるほど甘く、穏やかに更けていくのだった。
next…らうふか 1/21
コメント
7件
スノ箱推し様、お久しぶりです。 ほんっと全然コメもできてないし作品も読めてなくてすみません..(*T^T) ほんと書くのがうますぎます✨💗 シンメ最高👍✨
さすがいわふか夫婦!空気感がたまんない~!続き待ってます!