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任務のためと腹を括って狭い掃除用具入れに男二人
「動くなと云ってるだろう中也」
「ンなこと云ったってここ狭ェんだよ」
掃除用具入れの錆びた金属壁が二人の体温を逃がさず閉じ込めている
中也の背中が太宰の胸に強く押しつけられ太宰が呼吸する度にその胸の鼓動が中也の肩越しに直接響いた
外は敵の足音と冷徹な静寂
見つかれば即座に蜂の巣だが今の二人にとっての脅威は外の敵よりも目の前の「密着」そのものだった
「…おい太宰、手前の心臓さっきからうるせぇぞ」
「君のせいだよ。こんな狭い場所に獣のような体温の人間と一緒にいれば誰だってこうなるさ」
太宰の声はいつもより低く湿り気を帯びて中也のうなじを撫でる
太宰の細い指先が逃げ場を求めて中也の腰に回された
服の布越しでもわかる中也の引き締まった肢体の熱
それが太宰の理性を静かに、だが確実に削り取っていく
「獣だと?………っ、手前どこ触ってやがる」
「静かに。敵に聞こえるよ?」
耳元で囁かれた吐息に中也の体がびくりと跳ねた
中也は太宰を突き飛ばそうと腕を動かしたが狭い空間では逆に太宰の首に腕を回すような格好になってしまう
「誘っているのかい?」
「やめろ変な空気にすんじゃねぇ」
中也の瞳が暗闇の中で潤みを帯びて揺れる
太宰はその細い首筋に自身の額を預けた
太宰の瞳は底知れないほど昏く、獲物を定める捕食者のそれだ
「中也、今ここで私が君の声を奪ったら君はどんな顔するかな」
太宰の手が中也の顎を強引に上向かせる
重力の使い手がただ一人の男の腕の中でその重力さえ忘れたように硬直した
カチリと外で誰かが銃の安全装置を外す音が聞こえる
だが二人の世界では重なり合う拍動の音だけがすべてを支配していた
「…殺すぞ」
震える声で紡がれた拒絶はあまりにも熱く甘い誘い文句のようにロッカーの中に溶けて消えた
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