テラーノベル
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百合は、葦翠館の荘厳な廊下を抜け、和樹に導かれて彼の部屋のドアを開けた、その瞬間、思わず息を飲んだ
「え?なにここ?・・・ホテルみたい・・・」
と声を上げ、目を輝かせながら部屋を見渡した、彼女の視線は、まるで未知の空間に迷い込んだ探検家のように、部屋の隅々を忙しく動き回る
和樹の部屋は、広さにして一流ホテルのスイートルームのような空間だった
床は黒檀のフローリングで、壁はマットなチャコールグレー、荘厳な屋敷とは一変して、現代的でモダンな雰囲気を強調している、部屋の中央には、キングサイズのベッドが堂々と鎮座し、おそらく使用人が管理してるのだろう、紺色のベッドリネンが皺一つなくパリッと敷かれている
ベッドサイドには、ガラスとスチールで出来た、ミニマルなナイトテーブルが左右対称に配置され、その横には大きな皮張りのソファーセットが設置されていた、ウォークインクローゼットも大きく、百合の1LDKマンションの三倍はあった
次に百合の視線は、部屋の一角に据えられた巨大な湾曲型のLEDスクリーンに引き寄せられた、スクリーンは壁に埋め込まれたようなデザインで、まるで映画館のような臨場感を放つ、その下には、黒いラッカー塗装のロングコンソールがあり、最新型のゲーミングPCと複数のモニターが整然と並んでいる
そして一番奥に和樹のPC部屋・・・
黒いスチールフレームのデスクには、MacBook ProとiPad Proが置かれ、さらにデスクトップPCのキーボードとマウスは、RGBライティングが施されたカスタムメイドのものだ、スタンドに吊るされているヘッドホンもカスタムメイドだった
「あなた・・・ゲームするの?私の家では全然そんな素振りしなかったわ・・・」
と興奮気味に尋ねると、和樹は照れ笑いを浮かべながら「まあ、たまにね」と答えた
その奥には、ガラス張りのスライドドアで仕切られた小さなバスルームとトイレがある、バスルームのドアを開けると、百合は再び驚きの声を上げた
床と壁は白と黒の大理石で覆われ、洗面シンクはマットブラックのセラミック製だ、シャワーブースは全面ガラス張りで、レインシャワーとハンドシャワーが完備されている
トイレは最新型のウォシュレット付きで、壁にはタッチパネルのコントロールが埋め込まれている、バスルームの一角には、モノトーンのタオルが整然と畳まれて置かれ、まるで高級ホテルのアメニティを思わせる
「・・・こんなバスルーム、うちの家全体より豪華かも・・・あなたよくうちで満足してたわね」
と笑いながら百合が言う
「そんなことないよ、僕は君の家が好きだ」
百合は鏡に映る自分をチラリと見た、部屋の照明は、スマートホームシステムで制御されており、百合が入室した瞬間、自動で柔らかな間接照明が点灯した、窓には電動のブラックアウトカーテンが備わり、ボタン一つで六甲山の夜景を隠したり現したりできる
「たしかに証明はうちの方が明るいわね、こんなに暗いと目が悪くなるわ」
難癖をつける所がないけど、悔しまぎれで百合がそう言うのを聞いて和樹が笑う、彼の部屋は、葦翠館の荘厳な雰囲気とは対照的に、若者のエネルギーと現代的なセンスが凝縮された空間だった
「こんな部屋に住んでるなんて・・・なんかあなたが別世界の人みたい・・・」
とソファーの端っこに委縮して座る百合に、オレンジュースを渡して和樹が隣に座った
「でも、僕と結婚して親父が死んだら、ここは君のものになるんだよ?」
「和樹・・・」
そっと百合の髪を撫でる
「バイト・・・辞めてくれて嬉しいよ・・・」
「私、あなたの嫌がる事はしたくないと思ったの」
ああ・・・やっぱり彼女は素敵な娘だ・・・僕の事をこんなに考えてくれている
「キャァ!」
「今夜は寝かさないぞ!」
そう言って百合を抱き上げ、ベッドに放りなげる、クスクス百合も笑う、ああ・・・この殺伐とした部屋に百合がいる、今日からは毎日一緒だ
和樹が百合に覆いかぶさり、着ていたキャバドレスを脱がせて、ブラジャーもパンティもはぎ取る
クスクス・・・
「あなたも脱いで」
「今すぐに」
勃起しすぎて、トランクスを脱ぐのにひっかかる、その時バタンッと和樹の部屋のドアが開いた
「和樹!お前こんな時間に帰って来て!煩いぞ!今月のクレジットカード何に使ったか説明しろ!」
突然、父の隆二が怒鳴り込んで来た、ウィスキーを片手にドア枠にもたれかかっている、目は血走り、フラフラしている、父は今夜も酔っぱらっている
「わっわっ!父さん!今彼女がいるんだ!!遠慮してよ!!」
和樹がデニムを慌てて履いて、入口の父の所へ駆け寄る
全裸の百合はゆっくりシーツをひっぱって起き上がって隆二を無言で見つめていた、驚きも恥じらいも無い・・・その表情は冷たい無表情だ
隆二が和樹と向き直り、グラスを口に含んだ時に、和樹の肩越しにベッドに起き上がった百合の姿が映った
途端に隆二の手からグラスが落ち、床に当たってグラスは粉々に砕けた
琥珀色の液体が床一面に飛び散った
「わぁ!もう父さん!酔ってるんだね!」
和樹がウィスキーを被らない様に飛びのいた
隆二は唇を震わせ・・・呻くようにつぶやいた
「・・・リーファン・・・」
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