テラーノベル
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直樹の同僚たちを地獄へ送り届けた、数日後
私の元に、検閲済みであることを示すスタンプが押された一通の手紙が届いた。
差出人は、直樹。
「……まだ、何か残っているの?」
私は、吐き気を抑えながら封を切った。
便箋には、刑務所のボールペン特有の、筆圧が強すぎる歪んだ文字が並んでいた。
『詩織。俺の仲間たちも潰したそうだな
お前は昔から、一度火がつくと冷徹で執念深い。
……でも、忘れたのか? お前が今の「清廉潔白な母」という顔をしていられるのは
俺があの時、お前の“罪”を一緒に隠してやったからだろ』
心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。
手紙を握る指先が、わずかに震える。
『10年前、お前の実家が経営破綻しかけたとき……お前が必死でかき集めた「あの金」
出所がどこか、陽太や今の会社の人間にバラされたくなければ
俺の控訴審で「精神的に不安定で、嘘の証言をした」と証言しろ』
……直樹。
あなたは、本当にどこまでも卑劣な男。
私が人生をやり直すために、一番触れられたくない「傷」を、最後の切り札として切ってきたのね。
10年前
父が騙されて多額の借金を背負い、家族が路頭に迷いかけたとき
若かった私は、ある「グレーな手段」を使って資金を工賃したことがあった。
それは決して褒められたことではないけれど、家族を守るための必死な選択だった。
それを知っているのは、当時、私の相談に乗るふりをして近づいてきた直樹だけ。
「……だから、私を支配できると思ったのね。一生、逃げられない共犯者として」
私は手紙を握りつぶし、ゴミ箱へ投げ捨てた。
直樹は、私が過去の汚点を恐れて、再び彼の足元に跪くと信じている。
けれど、彼は一つ大きな計算違いをしている。
私もあの人も1円の誤差も許さない
自分の過去の「負債」さえも、正しく計上し、利息をつけて支払う覚悟はとうにできている。
私はすぐに、現在お世話になっている弁護士に連絡を入れた。
「先生、私の過去について、自白したいことがあります。……直樹がこれを脅迫の材料に使い始めました」
「彼が動く前に、私の方からすべてを公表し、法的に清算したいんです」
『詩織さん、それは……今のあなたのキャリアに大きな傷がつくかもしれませんが、いいんですか?』
「構いません。泥を塗られたまま生きるより、自分の手で泥を洗い流して、裸足で立ち上がる方を選びます」
直樹
あなたは私を「同じ泥沼」に引きずり戻そうとしているけれど
私はその泥を燃料にして、あなたを焼き尽くす炎に変えてみせる。
私は、陽太が学校から帰ってくる前に、鏡の前で深く息を吐いた。
ここからは「自分自身の過去」との戦い。
秘密を抱えたままの勝利なんて、私の家計簿には相応しくない。
【残り71日】
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