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今回の事件で張られていた結界。それによって施設内の全員を閉じ込め、鏖殺し、魂を纏めて奪おうとしていたのだろう。

問題は、そうして集められた膨大な魂は何に使われるのかだ。


「まさか、ただ悪魔の餌になる訳じゃないだろうな」


何かしら儀式に使われるか、大規模魔術に必要な魔力に変換されるか、恐らくはそのどちらでもない。


「ソロモンは、魂を糧に完全復活しようとしている」


どんな形でソロモンがこの現代に蘇ったのかは分からないが、完全な力を持って蘇ったというなら少し不自然だ。


「預言を信じるならば、ソロモンはこの世界の支配を目標にしている」


だとすれば、こんなチマチマしたやり方をしているのはおかしい。これだと自分の存在に勘付かれる危険性があるだけで、世界の支配は全く進まない。悪魔の召喚も出来るなら同時に全員召喚すれば、幾ら東京でも壊滅するかも知れない。


「今のところ、最高位の悪魔は召喚されていないんだよな」


その理由は恐らく、コストがかかるからだ。悪魔の召喚にも当然、供物と言ったものが必要になる。小悪魔程度なら家畜を一頭から数頭、低位の悪魔なら人やその魂。高位ならばその量や質が更に求められる。それに加えてかなりの魔力が必要になるが、これはよっぽどの悪魔でない限り集められるだろう。


「ソロモン七十二柱、か……」


その脅威は今と昔、どちらの方が上なのか。今は少し調べるだけで彼らについて知ることが出来るが、今の人類はソロモンが王であった頃の人類より弱いかもしれない。


「……どうする」


俺には選択肢がある。ソロモンを殺すか、ただ普通に暮らすかだ。正直、俺個人はソロモンが幾ら暴れようが死にはしないだろう。それに、今の俺にはこの世界を守る義務なんて、責務なんて無い。


何もしなければ、このまま俺は誰にも期待されずに生きていける。


責任を負うことも無い、ただの人間として生きていけるんだ。人が幾ら死のうが、責められることも恨まれることも無い。それを、俺は望んでいる筈だ。


「……あぁ、分からないな」


もう夜だ。寝てしまえば良い。









少し、リスクを冒した甲斐があった。


「結界を調べることはしなかったか……迂闊な奴だ」


調べたとして、俺にまで辿り着いていたかは分からないが、それでも奴は、気付かれているということに気付いていない。


「あれは、ただの結界ではない」


あの結界は外から中への移動と中から外への移動を妨げるという基本的な機能の他に、結界内の情報を全て記録する機能が付与してある。前回のような想定外が起きた際に、その事象を把握する為だ。


「今回は、ある意味で幸運だったな」


魂の収穫こそ出来なかったが、あの実力者を早期に発見できたのは幸運だ。正に、不幸中の幸いという奴だろう。


「顔を晒して呑気に買い物をしていたようだが……」


顔さえ分かれば簡単だ。協会のデータベースから簡単に照合することが出来た。尤も、協会に登録したのはかなり最近だったようだが。


「見つけたぞ、老日勇」


アミーを殺したのは、他でもないこの男だ。間違いない。協会内部ではこの男が悪魔の召喚者であるという疑いが立っているらしいが、それは有り得ない。寧ろ、悪魔を殺した者こそがこの男だ。


「ナベリウスをああも容易く殺すとは思わなかったが……」


悪魔の爵位がそのまま強さを表す訳ではないが、それでも大体の指標にはなる。その上で、侯爵のナベリウスを赤子をあしらうかのように殺されたのは驚異だ。


しかも、ただ殺しただけでなく消滅だ。アミー、グラシャラボラス、イポス、ナベリウス。この四体の再召喚は出来なくなったことを意味する。


「コストはかかるが、不死身の駒。その認識は改める必要があるな」


少なくとも、老日勇の前では侯爵級の悪魔もただのインプも変わらない。使い捨ての駒同然に消し飛ばされることになる。


「……まだだ」


老日勇。この男は無視すれば良い。監視を付けて常に位置を把握し、今後はこの男が居ない場所で行動を起こす。


「まだ、足りない」


東京以外で動くのは色々と不都合も多いが、許容するしかない。


「奴を殺すには、まだ……全く、足りていない」


老日勇。こいつはイレギュラーだ。だが、殺す必要は無い。ソロモンにとっては邪魔になるだろうが、俺にとっては違う。ただ、盤面の外に置き続ければ良いだけだ。



「――――力が」



俺の目的は、ただ復讐のみだ。俺から全てを奪った一級の狩猟者……奴を殺すことだけが、俺の生きる理由だ。世界の支配など、勝手にやっていればいい。


「ソロモン……精々、俺を利用した気になっていろ」


お前の企みはもう分かっている。その上で、今は利用されてやる。


「だが、時が満ちた時……俺は、お前の知恵の全てを利用して目的を果たす」


所詮、ソロモンは契約に従うしかない過去の遺物だ。俺が供物を捧げれば奴は俺に知恵を渡さなければならない。

ソロモンが完全に復活すれば俺は邪魔になり殺されるか、魔術によって支配されるかの二択だろう。だが、そうなる前に目的を終えれば良いだけの話でしかない。


「待っていろ、竜殺し」


どんな手を使ってでも、俺はお前を殺してやる。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

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