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「うんめー、、、♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪」
さっきまでのシリアスな雰囲気をかっ飛ばすように、トーストをばくばく食べる。まるで令嬢たちが集まり優雅なティータイムを楽しむかのように。
俺しかいないけど。
ついさっきまでとんでもねぇモンを聞いたというのに、なぜこんなにも落ち着いていられるだろうか。
そこが気になって仕方がない。その仕方がない思考も勉強に活用したかったものだ。
朝食を終え、窓から入ってくる日差しに照らされながら食器を洗う。キュッキュッと甲高い音を鳴らし、水で泡を流し、タオルで拭く。ここまでは至って普通の日常と言える。
だーが、今日はそうじゃない。
さっきもテレビにうつっていたのを見た以上、普通行っていた学校が燃えてしまったせいか、騒がしい朝も存在しない。
手を後ろにまわしてエプロンを取る。見えない蝶々結びを解くのに苦戦しながらもスタンディングコートラックに掛ける。
ついでにと、出掛ける用の長年着てきた黒色のカーディガンを手に取り、身支度をする。
現在10:37
必要最低限の物を斜め掛けバックにぶち込む。玄関で式台に座り、靴紐を結ぶ。斜めに曲がったりもせず綺麗な蝶々結びに出来た、今日はすこぶる調子良いかもしれない。
「なにしよー」
玄関を出て、微かに吹く風を感じながら空を見上げる。
せっかく外に出たのはいいものの。特に用もないので歩いては立ち止まってはを繰り返している、そんな姿は側から見たらただの晴天の太陽に照らされるぎこちない不審者にしか見えない。
適当にほっつき歩いて数分後、見覚えのない知らん裏路地に居た。
わあ、誠に草である。
なんだここ、きみ悪いなぁと思いながらも、ヤンキーが座り込み界隈しそうな裏路地を進む。
2、3歩あるくと、数メートル先に横から人が出てきて、俺のいる裏路地に全力で走ってきた。
「、、、っどぇ!?」
俺めがけて走ってくるもんだから、反射的に身構えてしまう。
「ちょ、ちょっと、、、た、すけてください!」
猪突猛進してきた人がちょっと大きな声でさけび、俺のすぐ横を通り抜けては背後に隠れる。声的に女性、、、か、?
少し経つと。俺の背後に隠れている女性のあとをついてきたと思われるそれらしき人物が来る。
『おいおい。そこの僕君どいてくんねぇなぁ?』
訛りのある口調で身長約180cmもあるスラっとした体型、明らかに悪者そうな人が俺の前に仁王立ちして見下ろしてくる。
一方追われた女性のほうはフードを深く被っていてよく顔が見えないが、俺の袖を強く掴み震えている手を見ると、相当怯えていることが分かる。
え、てかなんで俺巻き込まれてんの?
疑問を頭の片隅に置きながら、どうしようと考える。そうしているうちに、その悪者っぽそうな人の子分らしき奴らが汗をかきながら走ってきた。
『はよどけやぁ』
「え、無理ですほんと。逆に退いてください」
『は?お前関係ない奴だろ。巻き込まれてもいいのかよwww』
はぁぁ”ぁ”???!なんだよこいつぅぅ!
んだよ初対面な癖に敬語使えや!なんともムカつく野郎!
若干イラっと来てしまい無意識に眉を顰める。
あーいや、裏路地なんだここは。殴ってもバレなきゃ犯罪じゃない。
そう頭の中で結論づけた瞬間に、腕を前に勢いよく振りかざして、相手のみぞおちにクリティカルヒットする。
《い”っ、?!て、てめぇ!》
俺のボディーブローを喰らった怒りを感じたのか、はたまた嘲笑する顔をした俺に見下されていると感じて、プライドが許さなかったのか。
距離を置いてタックルしてくる。
〔きゃっ!〕
勢いよく突っ込んできた頭を腰と腕の間に挟み、フロントチョークをかける。
後ろに隠れていた女性が小さく悲鳴を上げては後ろに一歩引き下がる。
悪男(悪者っぽい人)は俺から距離を置くため、頑張って踠いている。が、それすら許さないように腕に力を込め、気管を圧迫。
汚い痰を吐くような声が苦しいと訴えてくるが、先にイラつかせたのお前だからな!
とうとう力を無くし、さっきまで抵抗していた腕が、ふりこのようにだらんとたらす。
その一部始終を見ていた子分らが驚いた顔をして、後さずりする。
「ひ、ひぃ、、、!」
アクション漫画でしか見たことない華奢な情けない声を出しながら、固まっている様子を見てまた苛立ちを覚える。
自分でオラオラ突っかかってきた奴らが日和ってどーすんの。悪男の首を掴んで、思いっきり腕を後ろに振り、ボールを投げるかのように力を込めて子分らにぶん投げる。
うがっ!と小さい声を聞くと同時に、背後に隠れていた女性を忘れ、子分らを殴り拳を赤く染めた。
〔ぁ、、、あの、、、〕
「え、あっ、す、すみません!思わず殴って、、、」
何度も顔面を殴っていた時、真横からか弱い声が聞こえ、ハッと我に帰る。
あー完全に俺を怖がったなこれ。そう思った
〔あ、、、ありがと!凄いじゃん、?!〕
「うぇっ?? 」
力を込めている血にまみれた拳を、その小さい柔らかい両手が覆う。
急に近くなったらことで同様しながらも、フード越しに見てくる女性の顔を見ると、この世の中で見たことのないほどに純粋な深紅の瞳を輝かせている。
2人を小さく照らす光と、その温かい手によって自然に拳の力を弱める。
〔えっと、場違いかもだけど、私は杏奈って言うの!〕
「あぁはい。俺は優斗っていいます。あ、久那山 優斗。 」
〔見た目的にも、未成年っぽいけど、、、〕
「17です」
〔え、ってことは高、、、1?!〕
「高2です」
〔が、がが学校は、?〕
唐突だなぁ。彼女、いや杏奈の動揺ぶりを認識したらなぜか落ち着いてきた。握られた拳に杏奈の手が力強くはいる。
「燃えました。学校」
〔、、、?あぁ、、、。ん?〕
〔だからこの時間帯に、、、って燃えた学校ってあのニュースに出てた高校であってる?〕
「そうですね。 」
〔、、、な、ならなんだけど、、、、そして!〕
杏奈はなんとか納得した様子で、今度ははっきりと優斗の目を見て、大きな声で言う。
〔突然で申し訳ないんだけど、!もしよかったら、私のところに来ない、?!〕
「、、、??え、、、あ、はい!」
彼女の真剣な眼差しとはっきりとした声にやられ、思わず承諾してしまう。
〔い、いいの?でも、一応これ渡しておくよ?本当にいいならいいんだけど、、、〕
「え、あぁ、はい」
〔じゃあ私はこれで!本当にありがとう!〕
あれ、てっきり家に招かれるのかと思った。
どこか照れくさそうに言う姿に、昔の初恋を思い出した。いや、今に新たな恋が始まった。