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時刻は12:19
いつの間にか手に乗せられた名刺をポッケに入れ、遠くへ走っていく彼女の滑らかな黒髪に見惚れる。
杏奈が見えなくなって、数分間おのれの拳を見つめる。
今、恋が始まったと感じた。スマホを取り出して時間を確認するも否や、すでに外出して2時間経っていた。一向に起きる気のない白目を向いた悪男を横目に、空腹を感じる
「あーお腹すいたぁー」
怠そうに足をすりながら、どこか近場の良さそうな店を探す。
___カランカラン
カフェによくあるオシャレなドアチャイムを、玄関ドアを開けると鈴蘭のような可愛い音が鳴った。
仕事でニコニコな店員さんに反して、俺は海外から来て間もない頃のようなカタコトで話してしまう。
そのせいか、苦笑いをする店員さん。
一応裏路地で血まみれになった手は、寝転んでた男の袖で綺麗にしたので問題はない。ただ、久々の外食と初恋の余韻により緊張した。
テーブルの上に優しく置かれたパンケーキとブラックコーヒーを眺めながら、ナイフとフォークを持ってお上品にパンケーキを食べる。
口内に広がるふわっとした食感と、シロップの甘さが重なって、なんともうまい。
これは裏路地にて彼女を救った恩恵なのかと疑ってしまうほどに。
コーヒーを飲んでいる最中に、渡された名刺をふと思い出す。このあと忘れたまま洗濯してしまう前にと、曲がってない綺麗な名刺に目を通す。
だが、会社名を見てもシックリとこない。失礼をかますが、どうも実に胡散臭そうである。
「国家、、、な、なんて、??」
些か簡単そうな名前だが、読むのにとても苦戦する。例でいえば、GHQの正式名称みたいなもの。
俺もマッカー◯ーのような権力を持ち得ていたらなぁ、、、そう考えているうちに、昔中学校にて、将来の夢について聞かれたのを思い出す。“優れた技量の持ち主になりたい”と言ったのを思い出した。いわば、ハイスペック男子になろうとして格好つけたのだ。
今は高校の中で平均的な頭してるし、特にイケメンってこともない。外見至上主義の世の中でいうと俺はモブだ。
そんなのしったこっちゃない。憤懣やるかたない気持ちを捨てて、カフェのインテリアを眺めながらランチを取った。
「ありがとうございましたー」
店のドアえお開けると、外のぬるい温度をした空気が纏わりついてくる。さっきの名刺を拳に握りしめ、その名刺に書かれた場所へと向かうことにした。
なぜこんな危なっかしそうな真似をするかだって?気になるから。
そのまま目的地まで、スマホを見ながら歩き続けて約1時間半ものを費やした。
時刻は15:25
この時間帯はやけになにするか考えにくい時間だった。スニーカーの鳴る鈍い音を鳴らしながらその目的地に立ち向かう。