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ノベルってやっぱ需要ないんかなぁ……
まあ結局自分のやってることは自給自足だったりするので評価とか求める方が野暮な気はしますけどねぇ~
いよいよ話もクライマックス!ぜひお楽しみください!
では、どうぞ~
「じゃあ、戦おうか」
まるで「天気がいいから買い物に行こうか」とでも言っているかのような自然さでの発言に、日帝は若干動揺していた。
しかしこれは向こうからわざわざ殺されにやってきたも同然のこと。
(嗚呼、やっとだ)
______やっと、散々俺たちを苦しめてきた鬼畜米帝の首に手がかかる。
日帝の胸は歓喜で高鳴っていた。
日帝はパラオを投げ捨てると、二振り手にしていたうちの一振りを鞘に仕舞った。
今手に取っているのは「朝藤」という名の刀。日帝の気に入りの刀の一つで、幾度も使ってきたからか手に馴染む。
(肉体も、生前の俺と同レベルだ)
あの時高熱を出したのは日本の身体を生前の日帝のものに置き換える為であった。
日帝は刀を構え、目の前にいる宿敵をしかと目に映す。
「来いよ、日帝chan?」
拳銃を突き付けて勝った気になっているアメリカの馬鹿さ加減に笑いが込み上げてくる。
日帝は、呼吸を整えた。
静かに目を瞑り、身体全体に意識を集中させる。
そして、日帝は、「朝藤」、その刀の名前の由来にもなった一節を、口にした。
「春は、あけぼの」
足が独りでに動き、するりとアメリカの拳銃の間合いから消える。
と同時に回転してアメリカを斬り付ける……が、流石にこれは躱されてしまう。
「やうやう白くなりゆく山ぎは、」
唱えるだけで勝手に体が動く。頭は何も考えていないが、手は容赦なく米帝を狙っていた。
「すこし明かりて、」
銃口が目の前に迫るが、横を抜けてひらりと躱す。
「……これは……」
イギリスは目の前に広がる光景に唖然としていた。
「まるで踊っているようだ……」
眼前で行われているのは確かに命を懸けた戦いのはず。
それなのに、きっちりと軍服を着こなしている敵は、戦いなど感じないような優雅さで足を運んでいる。
その小柄な身体がターンするたびに日除けがふわりと風を含んで広がる。
何も考えていないような虚ろで儚げな瞳だが、刀は容赦なくアメリカに迫っている。
アメリカも拳銃で対応しようとしてはいるが、狙いを付けた瞬間、照準からするりと抜けてしまう日帝に苦戦していた。
______まるでシルクの如きなめらかで殺意を感じさせない戦い方。
イギリスは一瞬、日帝の周りに桜が舞っているような幻影を見た。
「紫だちたる雲の、」
米帝は紙一重で躱しているようだが、先程頬に小さな傷が出来ていたのを見逃しはしない。
この戦い方は、時間がかかるうえに場所も取る。複数相手で使えないわけじゃないが、数十人を一気に相手できるだけの力はない。効率的な戦い方ではないと戦時中は蓋をしてきた。
しかし、毎晩感覚を叩きこんでいたお陰で今もすべらかに足が進んでいる。
初めて完全体で使った際、まるで絹を纏っているかのような、舞姫のような感覚になったため、「絹舞殺刀」と名付けた。
実戦で使うのは初めてだったが、思いの外効いているようで安心する。
「細くたなびきたる」
春が終わったところで、朝藤を鞘に仕舞い、手早く床に置いてあった刀を手に取る。
先程よりも刀身の長い刀は、同じく枕草子から「雨蛍」と名付けた。
自分はこういった名付けが好きなようで、打った刀一つ一つに名前を付けては愛でていた。
基地にはまだ、一度も振るっていない刀もいくつかある。
これからまだ戦うのだ。
(沢山、使おう)
そう心に決めた。
「夏は、昼」
ここは、我が御国に合わせて言葉を一部変えた。
(ここで仕留める。)
夏に合わせて足捌きもテンポが良く素早いものにしていく。
草木が青々と生い茂り、蝉が鳴き交う、清廉な夏。
夏は滝行をするのに丁度いい季節だった。
勢いよく落ちてくる水の冷たさを思い出す。
同時に、私達に眩い光を投げかけてくれる日の光を、思い出した。
天照大御神よ、どうか。
日の本を背負う我が御国に、御加護を。
「白日の頃は更なり!」
刀が斬った感触を捉えた。
肩から斬り下ろす、袈裟斬り。
骨までは断つことが出来なかったようだが、出血量の多さを見て殺したと悟る。
その瞬間、ぼんやりとしていた視界がはっきりとし、米帝の表情もより見えやすくなった。
「……何故、笑っている」
日帝は釈然としない思いを抱え、その場に倒れ伏すアメリカを見つめた。
見れば、アメリカは血交じりの咳をしながらも笑っている。
「いや?これで終わった気になってる日帝chanが可愛くて、つい、ね」
サングラスの奥の目が笑っている。それを見た瞬間、日帝の怒りは増幅した。
「貴様、ふざけるなよ……!」
雨蛍でとどめを刺そうとした、その瞬間。
手にしていた雨蛍が遥か後方へ吹き飛ばされていた。いたはずのパラオも消えている。
先程までいたのを考えると、今の一瞬で抱えて連れて行ったのだろう。
「イギリス、パラオを恃む」
「分かりました。」
目の前にいたのは______
「なぜ……?」
日帝と全く同じ色の軍服を身に纏う人物がいた。
背丈や体格は全くと言っていいほど同じで、只一つ違うのは、その瞳。
濁った瞳とは正反対に、高潔で清廉な光を湛えて居る。
「何故も何もあるか、この雑魚霊魂が。」
目の前の人物は冷酷に、日帝の首に刀の切先を向けている。
「それと、偽とはいえ俺のことをふざけた呼び名で呼んだアメ公は後で処す」
「ひどくね?!」
アメリカが悲鳴を上げる。が、傷が深いのか、呻き声を上げる。そして、いつの間にかいたフィンランドに回収されていった。
「ナイチかっこいい!」
イギリスに支えられて立っているパラオが子供のようにぴょんぴょん跳ねながら目を輝かせている。
「傷に障りますから、あんまり暴れないでくださいね」
度が過ぎたのか、イギリスに窘められていた。
「貴様はパラオに傷をつけてくれたからなぁ……」
その人物の口角が上がる。
「楽に死なせてはやれなさそうだ、すまんな」
全く悪びれもなく言い放つのは______
「”偽”大日本帝国?」
大日本帝国その人であった。
着地成功!!!やったね!!!
ずっとこの流れにしようと思っていたのですがここまでちゃんと上手く行くとは思ってなかったのですごく嬉しいです!
そしてやはりナチスとイタ王が空気に……推しの人大変申し訳ございません!!
刀・技名の読み方!
朝藤→あさふじ
雨蛍→あまほたる
絹舞殺刀→きぬぶさつとう
そのまんまですが無い頭で必死に考えたのでお見逃しください……