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週1デート体験
【選択プラン:◎週1デート】
本社のロビーは静かだった。
花子は受付の前で待っている。
少しして、
エレベーターが開く。
村田孝好が降りてきた。
「あ、どうも」
軽く頭を下げる。
花子は微笑んだ。
「今日はよろしくお願いします」
村田は少し照れた顔をする。
「こちらこそ」
一瞬、沈黙。
村田が言う。
「どこ行きます?」
花子は少し考える。
「村田さんが決めてください」
村田は笑った。
「じゃあ散歩しましょうか」
*
公園
午後の公園。
ベンチに二人。
村田は自然に話を振る。
「花子さんって普段なにしてるんです?」
「仕事です」
「そりゃそうか」
村田は笑う。
会話は軽い。
しかし、彼は無意識に観察している。
・声の高さ
・視線
・呼吸
花子は落ち着いている。
妙に。
普通ならこの段階で、
少しは心が動く。
安心とか。
嬉しさとか。
でも花子は違う。
穏やかだが、
依存しない。
村田は思う。
(珍しいな)
—村田、いつものお前だろ。
*
コーヒー
小さなカフェ。
村田はメニューを見て言う。
「甘いの好きです?」
花子は少し笑う。
「普通です」
村田は店員に注文する
コーヒー二つ。
チーズケーキ。
自然な選択。
花子はそれを見て言う。
「村田さん」
「はい?」
「あなた、人の様子をよく見てますね」
村田は肩をすくめる。
「仕事なんで」
花子は首を振る。
「違います」
村田は少し驚く。
花子は続ける。
「技術じゃない」
一口コーヒーを飲む。
「癖ですね」
村田は笑う。
「バレました?」
花子も笑う。
「ええ」
そして静かに言う。
「でも、それは優しさとは違う」
村田の表情が一瞬だけ止まる。
(初めて言われた。
そんなこと)
*
沈黙
数秒。
村田は考える。
怒りはない。
むしろ興味。
「じゃあ何です?」
花子は答える。
「生存戦略」
村田は笑う。
「厳しいなぁ」
花子は優しい声で言う。
「悪い意味じゃありません。
人が好きなんでしょう」
村田は少し考えてから言う。
「うん
好きですね」
花子はうなずく。
「それならいいと思います」
*
空白
帰り道。
二人は並んで歩く。
会話が途切れる。
普通なら村田は埋める。
沈黙を。
でも今日は、
埋めない。
花子は静かに歩いている。
その沈黙は
不安じゃない。
村田は思う。
(これが……空白か)
不思議と、
嫌じゃない。
*
観測
その頃。
データ室。
ハヤトはログを見ている。
観測対象:花子
情動変動:安定
観測対象:村田
情動変動:微増
ハヤトは画面を見る。
村田の波形。
いつもより少しだけ
揺れている。
それは依存ではない。
興味。
ハヤトは理解する。
(この二人は
互いを変える可能性がある)
*
別れ際
駅前。
村田は言う。
「今日はありがとうございました」
花子は軽く頭を下げる。
「こちらこそ」
少しだけ沈黙。
花子が言う。
「村田さん」
「はい?」
「あなた、空白が苦手でしょう」
村田は笑う。
「そんな顔してました?」
花子はうなずく。
「少し」
(いや、わかりやすかった・・・)
村田は空を見る。
いつの間にか、
濃いオレンジと薄い紫がかっていた。
そして言う。
「でも今日は」
花子の顔を見ながら、
「悪くなかったです」
花子は静かに笑う。
「そうですか」
そして別れる。
村田は歩きながら思う。
(この人
攻略できない。
でもそれが
妙に面白い)
*
同時間帯
外務省。
山田外相は資料を閉じる。
「週1デート体験」
その文字を見て笑う。
「なるほど」
秘書が言う。
「問題ですか?」
山田は首を振る。
「いいや
むしろ興味深い」
そしてつぶやく。
「愛の化身が
初めて空白を学び始めた」
山田は窓の外を見る。
「これは……面白いことになる」
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