この世界では、
「本当の気持ちを隠す」と、その人の言葉がひとつずつ失われていく。
たとえば、
“好き”という気持ちを隠せば、「す」から始まる言葉が言えなくなる。
“君に触れたい”という願いを押し殺せば、「た」や「ふ」の音が消えていく。
誰もが知らぬ間に、
“言えなかった想い”の数だけ、夜空に星が生まれる。
それは消えた言葉の記録であり、
心に秘めた想いの証。
だからこの世界では、
夜空を見上げることは、
「誰かの想いを覗き見ること」と同じだった。
『声のない空』
放課後の屋上。
沈みかけた夕陽が、風のように赤く流れていた。
柵にもたれて空を見上げているぷりっつの横顔は、
まるで星が生まれる瞬間を見ているみたいに静かだった。
「……なぁ、ちぐ。おまえ、最近“言葉”減ってへん?」
その問いに、ちぐさは小さく笑った。
でも、喉が詰まって何も出てこない。
言葉が、ひとつ、またひとつ消えていく。
ぷりっつの声がやわらかく風に混じる。
「無理して話さんでもええけど……心配や。
“ほんまの気持ち”隠してるんちゃうかって思うから」
ちぐさの胸が痛んだ。
“ほんまの気持ち”──それを言えたら、こんな苦しくなかった。
でも、“好き”と言おうとすると喉の奥が痛む。
もう、「す」の音が出せなくなっていた。
ぷりっつの制服の袖を、
小さく、ちぐさが掴む。
沈む夕陽が二人の影を溶かして、
世界がゆっくりと夜へと変わっていく。
「なぁ……」
ぷりっつが言葉を探すように続ける。
「おまえ、誰かを……」
その先は、風に消えた。
かわりに、空にひとつ星が増える。
それは、ちぐさの中で消えた言葉のひとつ。
──『ぷりちゃんが、すき。』
夜空のどこかで、
その想いが静かに瞬いていた。
次の朝、ぷりっつは気づく。
空が、昨日より少しだけ明るいことに。
そして、
「すき」と言えなくなった自分の喉にも、
同じ痛みが残っていた。
最近♡貰えなくて萎えてます😭😭
他の物語も全然♡指定値いってないので、良ければしていって下さい🙇♀️🙇♀️
コメント
5件
ちょっと切ない感じが最高すぎん!? 書き方好きすぎる😍 あと、♡押し忘れてた時あったかも… これからはたくさん押します!(?)
最高すぎるよぉ!!🩵🫶🩵 あと、儚すぎん?(儚いの大好き星人) お互い『すき』を言えなくなったの辛すぎやろ🥺 次のノベル作品も楽しみにしてるよ〜!✨🫶🩵