テラーノベル
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第1話 1964年のペン先
アーケードの端にかかった古い旗が、ゆるく揺れる。
肉屋の揚げ物の匂い。
八百屋の箱からはみ出した葉の匂い。
自転車のベル。
下駄の音。
どこかの家から流れてくる野球中継。
磁馬は、その全部を一度に見ようとして、ゆっくり瞬きをした。
「いいなあ」
小さく言って、肩掛け鞄を抱え直す。
知らない町だった。
けれど、知らない町ほど、磁馬は少し安心した顔になる。
知らないということは、まだ描いていないということだった。
道の両側には店が並んでいた。
米屋。
履物屋。
乾物屋。
薬屋。
レコード屋。
レコード屋の前で、磁馬は足を止めた。
店先には、円盤の入った紙袋が何枚も立てかけられている。
若い歌手の顔。
映画音楽の題字。
見たことのない楽団の名前。
店の中から、針が走る音がした。
ざり、と小さく鳴ってから、歌が流れる。
磁馬はそれを聞いて、鞄からスケッチ帳を取り出した。
店の軒先に腰を下ろし、膝の上に紙を広げる。
ペンケースを開ける。
細いペンが何本も並んでいた。
一本を選び、先を確かめる。
アーケードの先では、夕日が斜めに入り込んでいた。
人の足もとが伸び、店の看板が少しずつ暗くなる。
磁馬は、線を置いた。
まず、レコード屋の軒。
次に、店先の木箱。
その横に立つ少年の肩。
少年は、いつのまにか磁馬の横にいた。
「おじさん、何してるの」
磁馬は手を止めずに言った。
「描いてる」
「何を」
「ここ」
少年は店と道を見た。
「ここって、ただの商店街だよ」
「ただの商店街は、いい」
少年は少し考えてから、磁馬の手元をのぞいた。
「細かいな」
「細かいものは、あとで逃げる」
「逃げる?」
「うん。今あるものは、あとでない」
少年は意味がわからない顔をした。
磁馬は線を足した。
レコード屋の入口。
木枠のガラス。
店の奥にいる男の背中。
それから、少年の足もと。
「名前は」
少年が聞いた。
「磁馬」
「ジバ?」
「うん」
「変な名前」
「よく言われる」
少年は少し笑った。
その時、店の奥から声がした。
「透、店番してろ」
「してるよ」
少年、透は店の中へ顔だけ向けた。
それからまた磁馬を見る。
「おじさん、絵描き?」
「たぶん」
「たぶんって何」
「描いてるから」
透は納得したような、していないような顔をした。
磁馬はペンを替えようとした。
ペンケースを膝に乗せ、細いペン先の箱を開く。
その瞬間、店の前を自転車が通った。
チリン、とベルが鳴る。
風が一枚のチラシを持ち上げる。
磁馬の袖が揺れる。
ペン先の小箱が、少し傾く。
ころ。
小さな音だった。
けれど、磁馬の耳には大きく聞こえた。
ころころ。
ペン先がひとつ、箱から転がり出た。
磁馬はすぐ手を伸ばした。
届かなかった。
ペン先は店の前の板の隙間を越え、道の端へ転がり、夕方の影の中へ消えた。
磁馬は固まった。
透も固まった。
店の中の歌だけが流れていた。
磁馬はゆっくり立ち上がった。
鞄を肩にかける。
スケッチ帳を閉じる。
ペンケースを押さえる。
そして、地面を見た。
「落とした」
透が言った。
「落とした」
磁馬も言った。
「探すの?」
「探す」
「小さいよ」
「小さいから探す」
磁馬は膝をつき、道の端を見た。
板の隙間。
排水の溝。
店の台の下。
新聞紙のかげ。
透はしゃがみこんで、同じようにのぞいた。
「どんなやつ」
「細い。先がとがってる。小さい」
「それ、いっぱいあるんじゃないの」
「でも、あれはあれ」
透は少し笑った。
「変なの」
「よく言われる」
磁馬は指で埃を寄せた。
小さな紙くず。
乾いた葉。
折れたマッチ。
古い切符。
ペン先はなかった。
店の奥から、透の父が出てきた。
「何やってんだ」
「この人、ペン先落としたんだって」
父は磁馬を見た。
磁馬は膝をついたまま軽く頭を下げた。
「すみません。少し探します」
「踏まれたら危ないな」
父はそう言って、店先の木箱を少し動かした。
埃が舞う。
磁馬は目を細めた。
そこにもない。
透は道に出て、夕方の人波を見た。
「誰かに踏まれたかな」
磁馬は首を振った。
「踏まれても、いる」
「そういうもの?」
「そういうもの」
透は商店街の奥を見た。
「こっちに転がったかも」
磁馬はうなずいた。
「行こう」
透は店の中へ振り返った。
「父ちゃん、ちょっとだけ」
「遠くへ行くなよ」
「行かない」
透はすぐに歩き出した。
磁馬はその後ろを、少し遅れて歩く。
夕方の商店街は、人の声が重なっていた。
豆腐屋のラッパ。
魚屋の包丁の音。
買い物かごを持った人の足音。
子供の笑い声。
磁馬は歩きながら地面を見ていた。
透は店先ごとに足を止める。
「ここは?」
「ない」
「この下は?」
「見てみる」
磁馬は果物屋の台の下をのぞく。
店の人が笑った。
「何か落としたのかい」
「ペン先です」
「そりゃ細かいねえ」
店の人は台の奥をほうきで軽くかいた。
乾いた葉が出てきた。
紐が出てきた。
小さなボタンが出てきた。
ペン先はなかった。
「ありがとう」
磁馬は礼を言った。
果物屋の人は、透を見た。
「透ちゃん、手伝ってるのかい」
「うん。なんか帰れないんだって」
磁馬は少しだけ透を見た。
透は言ってから、首をかしげた。
「帰れないんでしょ?」
「うん。見つかるまでは」
「なんで」
磁馬は地面を見たまま答えた。
「そう決めてる」
「決まり?」
「うん」
透は、それ以上聞かなかった。
二人はまた歩いた。
商店街の夕方は、少しずつ濃くなっていった。
磁馬は、時々顔を上げる。
看板の角。
店先の裸電球。
遠くの屋根。
空に伸びる電線。
見れば見るほど、描きたくなる。
けれど、今は探す。
決まりごとは、磁馬の足もとに杭みたいに打たれていた。
持っているものは、絶対に落とさない。
落としたら、見つかるまで戻らない。
磁馬はそれを、誰かに言われたわけではない。
自分で決めた。
だから、破れなかった。
透は先に行って、古い側溝のふたを見た。
「ここ、落ちたら終わりじゃない?」
磁馬は横にしゃがんだ。
隙間は細い。
暗い。
磁馬は鞄から小さな折りたたみの道具を出しかけて、すぐに手を止めた。
透が見ている。
磁馬は道具を戻した。
「何それ」
「何でもない」
「見せてよ」
「だめ」
透は目を細めた。
「ケチ」
「うん」
「うんじゃないよ」
磁馬は少し笑った。
それから、近くの竹ひごを拾い、側溝の隙間に入れてみた。
何も当たらない。
透も別の棒を持ってきて、同じようにつついた。
「ないね」
「ない」
「じゃあもっと奥かな」
透は走り出した。
磁馬は慌てて追いかけようとして、鞄を押さえた。
もう何も落とさない。
そう思って、足を速める。
けれど速めても、磁馬の歩き方はどこか遅かった。
透は商店街の真ん中で待っていた。
「遅いなあ」
「走ると、物が落ちる」
「もう落としてるじゃん」
「だから、走らない」
透は笑った。
その笑い声が、店の灯りに混ざった。
やがて二人は、小さな広場のような場所へ出た。
商店街の道が少し広がり、ベンチがひとつ置かれている。
そこでは、紙芝居屋が片づけをしていた。
子供たちがまだ少し残っている。
磁馬は地面を見た。
透も見る。
紙芝居屋が声をかけた。
「何か探し物かい」
「ペン先」
透が答えた。
「そりゃまた小さい」
「そう。小さいのに、この人、帰れないんだって」
紙芝居屋は磁馬を見て、にやっと笑った。
「大事なもんなんだな」
磁馬はうなずいた。
「大事です」
「絵描きかい」
「たぶん」
「たぶんか」
紙芝居屋は笑い、箱の下を持ち上げた。
「ここ見てみな」
磁馬はのぞいた。
小石。
砂。
飴の包み紙。
曲がった釘。
ペン先はなかった。
透が釘を拾おうとしたので、磁馬は手を出して止めた。
「危ない」
「おじさんのペン先も危ないじゃん」
「うん。だから探してる」
透は釘を置いた。
紙芝居屋は荷物を引いて去っていく。
夕方はさらに沈んだ。
店の灯りが、ひとつ、またひとつと点く。
磁馬は広場の端に座り、少し息を吐いた。
透が隣に立った。
「疲れた?」
「少し」
「腹減った?」
磁馬は透を見た。
「減った」
「やっぱり」
透は笑った。
「うち、レコード屋だけど、裏におにぎりあると思う」
「それは」
磁馬は少し迷った。
「いいの?」
「母ちゃんが多めに作ってる」
「でも」
「探すなら食べたほうがいいよ」
磁馬はしばらく黙っていた。
商店街の向こうから、焼き鳥の匂いが来る。
その後ろに、味噌汁の匂いが混ざる。
磁馬の腹が、小さく鳴った。
透が聞いていた。
「ほら」
磁馬は負けたようにうなずいた。
「じゃあ、少しだけ」
二人はレコード屋へ戻った。
店の前には、さっき描きかけた景色がまだあった。
けれど夕方は進み、影は長くなっている。
透の父は、店の奥でレコードを紙袋に入れていた。
「見つかったか」
「まだ」
透が答えた。
「この人、腹減ったって」
「お前が言わせたんだろ」
父は奥へ行き、皿を持って戻った。
おにぎりが二つ。
たくあんが少し。
「食べな」
磁馬は両手で皿を受け取った。
「ありがとうございます」
「ペン先が見つかるまで、倒れられても困るからな」
透が笑う。
磁馬は店のすみに座った。
おにぎりを一口かじる。
米がほどける。
塩がきいている。
磁馬は目を細めた。
「うまい」
透は少し得意げな顔をした。
「普通のおにぎりだよ」
「普通はうまい」
磁馬はまた食べた。
店の中では、古い歌が静かに回っていた。
透の父は針を替え、音を確かめる。
透は棚の前に座り、磁馬のスケッチ帳を気にしている。
磁馬は気づいて、膝の上にスケッチ帳を置いた。
「見る?」
透はすぐ近づいた。
「いいの?」
「うん」
磁馬はページをめくった。
橋。
市場。
見たことのない駅。
古い宿。
未来のような建物。
雨の道。
笑っている女の人。
眠そうな犬。
屋台。
透は息を止めて見た。
「これ、どこ?」
「遠いところ」
「外国?」
「もっと遠い」
「じゃあ、どこだよ」
磁馬はおにぎりを食べながら、少し考えた。
「歩くと遠い」
透は納得しなかったが、ページから目を離さなかった。
ある絵の前で、透の指が止まった。
古い駅を描いた絵だった。
ホームに人が立っている。
線路の向こうで、朝の光が伸びている。
けれど、絵の中の光は、ほんの少し動いた。
透は目をこすった。
「今、動いた?」
磁馬はおにぎりを飲み込んだ。
「たぶん」
「絵が?」
「うん」
「なんで」
磁馬は首をかしげた。
「そう描いたから」
透は磁馬を見た。
冗談を言っている顔ではなかった。
透はもう一度絵を見る。
駅の光は、さっきより少しだけ長くなっている気がした。
透は急に小さな声になった。
「おじさん、変だね」
「よく言われる」
磁馬は皿を返した。
「ごちそうさまでした」
父がうなずいた。
「で、探すんだろ」
「はい」
磁馬は立ち上がった。
透も立つ。
店を出ると、商店街は夜に向かう途中だった。
まだ明るさは残っている。
でも、昼ではない。
その間の、ほんの短い時間。
磁馬は立ち止まった。
アーケードの奥に、夕方が溜まっている。
人が通るたび、灯りと影がほどける。
店の看板が浮かぶ。
自転車の車輪がきらりとした。
磁馬はスケッチ帳を開いた。
透が驚いた。
「探さないの?」
「探す」
「じゃあなんで描くの」
「今じゃないと、描けない」
透は文句を言いかけたが、磁馬の顔を見てやめた。
磁馬は立ったまま線を引いた。
レコード屋の前。
透の父の背中。
店の灯り。
商店街の奥へ伸びる人波。
買い物かご。
曲がった看板。
紙袋を抱える女の人。
走る子供。
店じまいの音。
ペン先をひとつ失ったせいで、線は少し太かった。
それでも磁馬は描いた。
透はその横で、地面を見ていた。
「おじさん」
「うん」
「描きながら探せるの?」
「無理」
「じゃあ描くなよ」
「でも、夕方が行ってしまう」
透は空を見た。
太陽は建物の向こうに落ちかけている。
商店街の灯りが、だんだん強くなる。
透は少しだけ黙り、それから言った。
「じゃあ、僕が探す」
磁馬の手が止まった。
「いいの?」
「うん。おじさん、描いてて」
透はしゃがみこんだ。
レコード屋の前。
板の隙間。
側溝のふた。
木箱の下。
何度も見た場所を、もう一度見る。
磁馬は透を描いた。
夕方の中で、地面に顔を近づける少年。
半ズボンの膝。
曲がった襟。
真剣な目。
透は知らない。
自分が今、絵の中に入っていることを。
磁馬は線を重ねた。
透が顔を上げる。
「ないなあ」
「うん」
「でも、転がるなら、坂になってるほうかな」
透は店の前の道を手でなぞった。
ほんの少しだけ、道は商店街の奥へ傾いている。
「こっちだ」
透は歩き出した。
磁馬は描きかけのまま、後を追う。
二人はまた商店街を進んだ。
夕方は、もう終わりに近かった。
八百屋が箱を片づけている。
魚屋が水を流している。
肉屋は揚げ物の最後を紙に包んでいる。
透は一軒ずつ聞いた。
「小さいペン先、見ませんでしたか」
魚屋の主人が笑った。
「魚なら見たけどな」
肉屋の女の人は、店先の紙箱を動かしてくれた。
薬屋の人は懐中電灯を出してきた。
光が地面をゆっくりなぞる。
磁馬はその光を見て、また描きたくなった。
けれど今は探した。
薬屋の前にはなかった。
透は唇を曲げた。
「どこ行ったんだよ」
磁馬は道の真ん中にしゃがんだ。
小さなものの気持ちになる。
転がる。
跳ねる。
止まりかける。
また転がる。
どこかで何かに当たる。
磁馬は顔を上げた。
商店街の真ん中に、レコード屋の宣伝看板があった。
木の足がついた小さな看板。
風で少し斜めになっている。
その足もとに、細い隙間がある。
磁馬はゆっくり近づいた。
透もついてくる。
看板の下をのぞく。
暗い。
磁馬は指を入れた。
届かない。
透が薬屋から借りた懐中電灯を向けた。
光が入り込む。
何かが光った。
「ある!」
透が叫んだ。
磁馬は息を止めた。
看板の足の奥。
埃の中。
小さなペン先が、横向きに引っかかっていた。
磁馬は鞄からピンセットを出した。
透が見ている。
これは見られてもいい道具だった。
ゆっくり差し込む。
つまむ。
引く。
ペン先は、埃をまとって出てきた。
磁馬は手のひらに乗せた。
小さい。
本当に小さい。
けれど、そこにあった。
透は大きく息を吐いた。
「よかったあ」
磁馬はペン先を見つめていた。
それから、深く頭を下げた。
「ありがとう」
透は照れたように笑った。
「別に。落としたのおじさんだし」
「うん」
「もう落とすなよ」
「気をつける」
「絶対?」
磁馬は少し黙った。
「なるべく」
透はあきれた顔をした。
「だめじゃん」
磁馬は笑った。
二人はレコード屋へ戻った。
商店街の夕方は、ほとんど夜になっていた。
でも、磁馬のスケッチ帳の中には、まだ夕方が残っている。
レコード屋の前で、磁馬は最後の線を入れた。
見つかったペン先を付けたペンで、細い線を加える。
透の横顔。
店の灯り。
商店街の奥。
沈みきる前の光。
透は隣で見ていた。
「それ、完成?」
「たぶん」
「また、たぶん」
磁馬はスケッチ帳を少し離して見た。
絵の中の商店街では、人が歩いていた。
ほんの少しずつ。
肉屋の灯りが強くなり、レコード屋の中の影が伸びる。
透が息をのんだ。
「やっぱり動いてる」
磁馬はうなずいた。
「夕方だから」
「夕方だからって、絵は動かないよ」
「この夕方は、まだ帰りたくないのかも」
透は絵を見つめた。
そこには、自分も描かれていた。
地面を探している自分。
まだ小さい自分。
レコード屋の前にいる自分。
透は、少し恥ずかしくなって目をそらした。
「これ、持ってくの?」
「うん」
「そっか」
磁馬は透を見た。
「でも、こっちを置いていく」
そう言って、別の小さな紙を取り出した。
そこには、透の店だけが描かれていた。
レコード屋の軒先。
父の背中。
棚に並ぶ円盤。
入口に立つ透。
絵の中では、店の灯りが静かに揺れていた。
透はそれを受け取らなかった。
ただ見ていた。
「くれるの?」
「うん」
「いいの?」
「手伝ってもらったから」
透は両手で紙を受け取った。
薄い紙なのに、少し重く感じた。
店の奥から父が出てきた。
「見つかったか」
透は紙を胸に寄せた。
「見つかった」
磁馬はペン先をケースへ戻し、しっかり閉じた。
それから、鞄の留め具を確かめた。
一つ。
二つ。
三つ。
何も落ちていない。
磁馬は商店街の出口へ歩き出した。
透が追いかける。
「おじさん、どこ行くの」
「帰る」
「どこに」
磁馬は足を止めた。
アーケードの外には、夜が来ていた。
街灯がつき、道の向こうに薄い月が浮かんでいる。
「遠いところ」
「また来る?」
磁馬は少し考えた。
「来るかもしれない」
「ほんと?」
「たぶん」
透は笑った。
「たぶんばっかりだな」
磁馬も笑った。
「うん」
透は絵を持ったまま立っていた。
磁馬は商店街の外へ出る。
角を曲がる前に、もう一度振り返った。
透が手を振っていた。
レコード屋の灯りの前で、
小さな影になっていた。
磁馬は手を振り返す。
その手に、もう何も落ちなかった。
角を曲がる。
風が吹く。
次の瞬間、商店街の音が遠くなる。
レコードの歌。
自転車のベル。
店じまいの声。
透の笑い声。
全部が線になって、磁馬の背中へ吸い込まれていく。
磁馬は鞄を抱えた。
スケッチ帳の中で、1964年の夕方がゆっくり続いていた。
レコード屋の前では、少年がまだ探している。
そして、その少し先で、
ペン先を見つけた少年が笑っている。
同じ絵の中で、
時間が何度も、やさしく過ぎていた。
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