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ROY

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みむら
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side 🖤
「で??今朝の話だけど」
「いやその前に頼み過ぎだろ」
昨日介抱してくれた御礼の名目で、ちょっと良いお値段の某焼肉チェーンに連れて行かれた。
ラウールは席に着くやいなや頼み過ぎだろって量の肉やらサイドメニューを注文した。
「介抱料と口止め料と思えば安いっしょ?」
口の片側をニヤリと上げて”早く話せよ”と圧力をかけてくる。
今朝口を滑らせた自分に腹を立たせながら覚悟を決めて、『俺が佐久間さんを好きになったきっかけ』について口を開いた。
-–
俺は前職の会社であまりの忙しさに忙殺され、精神も身体もへとへとになっていた。
毎日ノルマの繰り返し。
目的なんて無い。考える暇もない秒単位のスケジュール。
今日も得意先の商談が3つ程控えていて、朝から動き回っていた。
(あぁ…まじで疲れた…)
大きな公園のベンチに座り、コンビニで買ったアイスコーヒーを持って遊ぶ親子をぼんやり見ていた。
俺は何のために仕事してるんだ。
志望動機なんて言ったっけな、とりあえずどこかに就職したい一心で適当な綺麗事を並べた気がする。
目的や目標がないって、こんなに苦しいんだな…
この会社を辞めるにしても、別にやりたい事無いしな。
(俺すげー詰んでるじゃん)
適当に生きてきた自分に対し、自嘲気味に笑った。
「…はぁ」
小さく聞こえた溜め息と同時に、ふと隣に感じた気配。
ぼんやりし過ぎて隣に人が居たことに気付かなかった。
チラッと失礼にならない程度に隣を見ると、俺と同じようにぼんやりと前の子供達を見ている女性。
なんとなく、落ち込んでるのが見てとれた。
俺と女性の間には人1人分空いている。
普段、他人なんて割とどうでも良いと思う俺が、なんとなくその女性がどうして落ち込んでいるのか無性に気になってしまった。
「…大丈夫ですか?」
「ひょぇっ….あっ私ですか?」
「すいません、話しかけて。何か…落ち込んでいるように見えたので」
「へへ…ちょっと仕事で失敗しちゃって…上司に怒られちゃいました」
肩を竦めて恥ずかしそうに笑うその人。
下を向いているせいで、髪の毛で顔を見ることができない。
「大変ですか?仕事」
「んー…そうですね、大変かもです。」
ふぅ、とまた小さく息を吐く。
「でも、楽しいんで!怒られても頑張ります!」
そう言って顔をあげる。
泣いていたのか、目尻が赤くなっていたその人は微笑みながら前を見据えた。
顔を上げたことで見えたその横顔。
キラキラと光の入った大きな瞳。
その横顔を見て、俺は人生で初めて胸の高鳴りを感じた。
「ありがとうございます!…私、まだ頑張れそうです」
「…良かったです」
そろそろ行かなきゃ、と立ち上がる。
「あの」
その人は俺の目の前に立って何かを鞄の中から取り出した。
「これ、もし良かったら。うちの商品なんですけど、御礼です」
目の前に差し出されたのはやや小さめのパッケージのポテトチップス。
「…ぁ、ありがとうございます」
「色々辛いこともありますけど…頑張りましょう!」
自分に向けられた、大輪の花が咲いたような眩しい笑顔。
高鳴り続ける鼓動と熱くなる自分の身体。
明確に恋心を自覚してしまった瞬間だった。
--これが、俺と佐久間さんの最初の出会い。
-–
「それで、会社を特定して転職したと」
執着心やばくない!?と呆然とするラウール。
「人をストーカーみたいに言うなよ」
「ギリストーカーみたいなもんよ!?ちょっと怖いもん。別にさ、その公園にまた現れるかもしれないんだから待ってたら良かったじゃん」
それは、確かに。
でも、あの時の俺は同じ会社に転職することしか頭に無かった。
今思うと、確かに怖いかもな。
一目惚れ相手の会社を特定して、同じ会社に転職するなんて。
執着以外の何物でもない。
「転職してさぁ、さく美さんがいなかったらどうするつもりだったの?」
「…そこはちゃんとリサーチしてたし。」
Kリスプ商事の企業HPにある社員インタビューとか、岩本社長が出ている記事や番組も隈なく観て佐久間さんが見切れてないか常にチェックしてたし。
佐久間さんがKリスプ商事に入って行くのも見たし。
「こっっっわ!!愛が重いよ、怖いよ」
「うるさいな、まじで誰にも言うなよ」
やっとスタート地点に立てたものの、なかなか社内で佐久間さんに会える機会がなくて、正直相当不安な気持ちにはなった。
だから、入社時研修で佐久間さんを見かけた時は何よりも嬉しかったことを今でも覚えている。
まさかその後、カナダへの転勤を言い渡されるとは思わなかったけど。
「次は日本にいる間に佐久間さんとの距離を縮められるよう頑張らなきゃ」
「まぁ、それは割と大丈夫だと思うけどねぇ…」
大量の肉を焼きながらラウールが小さな声で何かを呟いた。
「なに?」
「いや、なんでもない」
「でもまぁ、俺だけは応援してあげるよ」
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