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#好き好き好き
Para★noia 🩵🪼
830
朧.
42
角砂糖レモン
100
26
最初に意識を取り戻したのは、メバルだった。
頬を冷たい風が撫でている。
目を開けると、青い空が広がっていた。
雲が、はるか下にある。
「……え?」
メバルは自分の足元を見た。
何もない。
地面がない。
木も、山も、建物も、すべて遠く下に見えている。
「えええええええええっ!?」
メバルの体は、空から落ちていた。
腕をばたつかせても、落下は止まらない。
風が全身に叩きつけられる。
なぜ自分が空にいるのか、まったく分からなかった。
覚えているのは、洞窟の中で巨大な装置から光線を浴びたこと。
仲間たちが次々に消えていったこと。
そして、自分も消えたことだけだった。
「なんで空なの!? どうして!?」
地面が、どんどん近づいてくる。
下には深い渓谷があった。
その底には、細長い水場が見える。
水に落ちれば助かるかもしれない。
しかし、落下速度は速すぎた。
「これ、間に合わないよ!」
そのとき、渓谷の縁を走る人影が見えた。
黒い服。
見慣れた姿。
K-Tだった。
「Kさん!?」
地上にいたK-Tも、空から落ちてくる人影に気づいた。
「メバルがなぜ!?」
K-Tは、渓谷の斜面を駆け下りた。
メバルの落下地点を確認する。
水場までは、まだ距離がある。
K-Tは迷わなかった。
斜面を蹴り、崩れる石を踏み越え、全速力で走る。
「Kさん、逃げて!」
「黙れ!」
K-Tは水場のそばまで到達した。
メバルの体が、すぐ上を通過する。
手を伸ばす。
届かない。
K-Tはさらに前へ踏み込んだ。
落ちてくるメバルの腕をつかむ。
勢いを殺せない。
K-Tはもう片方の腕をメバルの背中へ回した。
「つかまれ!」
「Kさん!」
K-Tはメバルを抱きかかえた。
二人の体が空中で回転する。
K-Tは、メバルを守るように抱えたまま、水面へ落ちた。
大きな水音が、渓谷に響き渡る。
二人の体は水中へ沈んでいった。
メバルは目を閉じた。
地面に叩きつけられたような痛みはない。
水が衝撃を吸収したらしい。
しかし、二人はそのまま水中深くへ沈んでいった。
K-Tは片手をメバルの胸元に回して抱きかかえ、もう片方の腕だけで水をかいていた。
装備を身につけたままの二人は重い。
片手だけでは、なかなか浮上できない。
メバルが目を開ける。
目の前に、K-Tの顔があった。
K-Tは苦しそうに息を止めながら、メバルを離さないようにしている。
メバルも水を飲みかけた。
息が苦しい。
視界が暗くなる。
K-Tは足を動かし、もう片方の腕で必死に水をかいた。
やがて、二人の頭が水面から出た。
「ぷはっ!」
メバルが大きく息を吸う。
K-Tも咳き込みながら、片手で泳ぎ続けた。
「Kさん、私も泳ぐ!」
「動くな」
「でも、Kさん片手しか使ってないよ!」
「お前を支えている」
「それは分かってるけど!」
K-Tは片手をメバルの胸元に回したまま、もう片方の腕だけで水をかいた。
メバルの体はK-Tの胸元に密着している。
その状況に気づいた瞬間、メバルの顔が赤くなった。
「Kさん……」
「何だ」
「私のこと、抱きかかえてるよね」
「これは正しい救助方法だった」
「知らないっ! 痴漢! 変態!」
K-Tは泳ぐ手を一瞬止めた。
二人の体が、再び水中へ沈みかける。
「……それは違う」
「何が違うの!」
「落下中の仲間を救助した」
「だからって、あんなにしっかり抱きかかえなくてもいいでしょ!」
「落下速度を考慮した」
「知らないっ! 私は覚えているからね!」
「忘れろ」
「絶対に忘れない!」
K-Tは黙って泳ぎ続けた。
やがて浅瀬へたどり着き、メバルを先に岸へ押し上げる。
続いて、自分も水から上がった。
二人は濡れた地面に倒れ込み、激しく咳き込んだ。
しばらくして、メバルが周囲を見回す。
「落ちたのに、痛くないね」
「水が衝撃を吸収した」
K-Tが答えた。
「このゲームでは、水に着地すれば落下ダメージを受けないらしい」
「じゃあ、次から高いところから落ちるときは、水を探せばいいんだ」
「浅ければ危険だ」
「分かった。深い水を探す」
「次がある前提で話すな」
メバルは立ち上がり、K-Tを見た。
彼の服は濡れている。
落下の衝撃で、呼吸も少し乱れていた。
それでも、メバルを抱きかかえていた腕は、最後まで離れていなかった。
「Kさん」
「何だ」
「正しい救助方法って言ったよね」
「ああ」
「知らないっ! 痴漢! 変態!」
メバルは顔を真っ赤にしたまま、K-Tの頬を平手で叩いた。
乾いた音が、渓谷の地下に響く。
K-Tはその場で固まった。
「これは、覚えているからねの分!」
メバルは手を振りながら言った。
K-Tの体が赤く点滅し始めた。
「え?」
メバルの顔から笑顔が消える。
「Kさん?」
K-Tは頬に手を当てたまま、ゆっくりと膝をついた。
「体力が……」
「まさか、ビンタで!?」
K-Tの体力は、レイナに貫かれた痛みや落下、水中での行動によって限界に近づいていた。
そこへ、メバルの攻撃が加わった。
赤い光がK-Tの全身を覆う。
「待って、Kさん! 今のは冗談!」
「……覚えておく」
「やだ、リスポーンしないで!」
K-Tの姿が赤く点滅した。
次の瞬間、彼はその場から消えた。
メバルは、しばらく何も言えなかった。
「……えええええええええっ!?」
渓谷の地下に、メバルの叫び声が響き渡った。
*
K-Tが次に目を開けたとき、そこは鉄の村だった。
鍛冶場の隣にある、小さな部屋。
K-Tは木製のベッドの上で上半身を起こした。
村人たちが、部屋の入口から様子を見ている。
「リスポーンしたのか」
K-Tは自分の体を確認した。
胴体の傷は消えている。
体力も回復していた。
ベッドの横には、持っていたアイテムが置かれている。
鉄鉱石。
青い鉱石。
工具。
そして、修理したガラケー。
すべて無事だった。
K-Tはガラケーを手に取った。
ひびの入った画面には、位置情報が表示されている。
そこに、新たな反応が一つ増えていた。
メバル。
K-Tが立ち上がったとき、村の入口から声が響いた。
「Kさ〜ん!!」
メバルが、村へ駆け込んでくる。
どうやら渓谷から、時間をかけて地上へ戻ってきたらしい。
「Kさん! さっきのこと、絶対に忘れないからね!」
村人たちが一斉にK-Tを見る。
K-Tはガラケーを閉じた。
「……武器を早く完成させる必要がある」
鍛冶場の炉では、赤い炎が静かに燃えていた。
コメント
1件
読了しました!第十二章、めっちゃ面白かったです! 空から落ちてくるメバルを「正しい救助方法」と言いながらギリギリで受け止めるK-Tさん、かっこよかったですね。でも直後の痴漢・変態呼ばわりからの平手ビンタでリスポーンしちゃうオチには笑いました(笑)。「覚えておく」の冷静さもK-Tさんらしい。 メバルの「絶対に忘れない!」の執着も可愛くて、このコンビのやり取り、毎回じっくり味わいたくなります。次の武器完成と新たな反応が楽しみです。