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金曜日。
本多君が駅で電車に轢かれて死んだ。
土曜日。
斎藤さんが農薬入りのお茶を飲まされて死んだ。
一家全員で死んだ。
日曜日。
長谷川さんが河で溺れて死んだ。
水泳部だったのにおかしいよ。
月曜日。
北町君が犬に襲われて死んだ。
体の半分は犬のお腹の中だって。
火曜日。
緑川さんがダンプに跳ねられて死んだ。
ねじ曲がって、車輪に巻き込まれた。
全部うちのクラス、二年五組の生徒。
一人ずつ、毎日死んだ。
「絶対おかしいだろっ!」
洋平君がなるみちゃんに食ってかかった。
「同じクラスの人間ばっかり五人も!」
「洋平、静かにしてよ」
休み時間。クラスはしーんと静まりかえっている。
「ジョンソンの呪いだ」
「だ、誰だっ! 今言った奴! 出てこいよっ!」
洋平君が怒鳴る。怒鳴る。怒鳴る。
外は曇り空、もう泣き出しそう。
誰も名乗りでない。
六人の虫食い穴。クラスがバラバラになる。
放課後、雨が降り出した。
私はピンクの傘を差して一人で帰る。
なるみちゃんは部活だ。剣道部。
帰り道、基地の東へ寄り道してみた。
一箇所だけある白い壁。
寄ってみる。沢山の名前がある。クラクラする。
こんなに呪ってるの? こんなに憎いの?
すごく気持ち悪い。
左の壁の所にそれはあった。
壁にたたずむ毒虫のようにひっそりとあった。
私は短い悲鳴を上げた。
祥雲中学二年五組と書かれていた。
私たちのクラスだ。
荒々しく肩を掴まれた。私は大きな悲鳴を上げた。
「お前が書いたのか、月寄っ!」
勢いよく壁にたたき付けられる。肩が痛い。肩が痛いよ。
鼻の奥がきな臭くなって、泣きたくないのに涙がぼろぼろ出た。
「ち、ちがいます」
同じクラスの高田君と吉村君と遠藤君。不良の人だ。
高田君たちはばつが悪そう顔を見合わせる。
「わるい。気が立ってんだ。泣くな」
高田君達は雨の中去っていく。
遠藤君がこっちを振り返って小さく頭を下げた。
雨足が強くなる。びしょぬれになったよ。
満月まであと四日。
水曜日。
今日は誰も死ななかった。
木曜日。
今日も誰も死ななかった。
金曜日。
今日も大丈夫。
偶然、だったのかなあ。
土曜日。
香川君の家が焼けた。
一家全員焼け死んだ。
先生から連絡があって、明日警察の方から事情聴取があるので、昼から学校に来なさいだって。
日曜日なのに嫌だなあ。
日曜日。
お昼ご飯を食べてから制服に着替えた。
学校に向かおうとしたら、玄関でお姉ちゃんに呼び止められた。
「鏡子、今日は満月だから早く帰ってらっしゃいね」
「うん、わかった。お姉ちゃん、行ってくる」
私はたまに満月に魅入られて記憶が飛ぶ事がある。
お姉ちゃんは遺伝だとか言ってたけど、結構面倒。
まあ、知らない場所に立ってたりするだけなんだけどね。