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人々が寝静まった深夜。
再度フルーユ湖の島へと向かい、地面の下に隠れていたボス魔物のヒュージスライムと戦っていた俺・テオ・ネレディ。
ヒュージスライムにとどめを刺そうとした瞬間、別荘に残してきたはずのネレディの娘・ナディが現れ、「いじめちゃ、だめなの!」と両手を広げて立ちふさがった。
大人3人がただただ呆気にとられていると、ナディが「え?」と後ろを振り返って何やら喋り始めた。
ナディの視線の先にいるのは、戦闘開始時とは比べ物にならないほど小さくなったヒュージスライムだけ。
本来ならば警戒しなければならない状況のはずなのだが……スライムはぷるぷると怯えるように震えていて、みじんも敵意が感じられない。
「……ね、ねぇこれ、何が起きてるの?」
「いや俺も何が何だか……」
スライムに向かって1人で喋るナディに混乱し、小声で喋るネレディとテオ。
そんな中、俺にはこの状況《イベント》に心当たりがあった。
つい俺がつぶやいたところで、話を終えたナディがこちらへ向き直る。
「ごめんなさい、ナディかんちがいしてたの! お母さまたちは、この子をたすけてくれてたのねっ!」
「……ナディ、なんでそう思ったの?」
ネレディが何とか頭の中を整理しようと話しかけると、ナディはスライムを指さしながら笑顔で言った。
「あのね、この子が教えてくれたのー!」
さらに混乱するネレディとテオ。
いったん2人を放置し、俺はナディに聞く。
「ナディちゃん、スライムの言葉が分かるんだよな?」
「うん!」
「いつから分かるようになったんだい?」
「んっと、さっきだよ! 頭のなかにヘンなこえがきこえて、それからなの!」
「変な声ってもしかして、『魔物使いがどうの』って言ってなかったか?」
「あ、いってた!」
「やっぱり……」
1人で大きくうなずく俺。
「わかったわかった、ちゃんと説明するって!」
ずいずいと詰め寄ってくるネレディとテオ。
まずは2人を落ち着かせてから、俺は口を開く。
「テオ、まずはナディのステータスを鑑定してくれないか。それで大体は理解できるはずだから」
「うん……」
言われた通りスキル【鑑定】を発動しナディの現在のステータスを確認するテオ。
同じくナディのステータスを表示した俺は【アイテムボックス】から筆記具を取り出してナディの称号やスキルをサッと簡単に紙に記し、【鑑定】が使えないネレディへと手渡した。
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名前 ナディアンヌ・ロワ・フォートリエ・トヴェッタリア
種族 人間
称号 トヴェッテ王族:トヴェッテ王家の一員に与えられる
魔物使い:魔物に強く好意を持たれた者に与えられる
状態 健康
LV 3
■基本能力■
HP/最大HP 61/61
MP/最大MP 48/48
物理攻撃 13
物理防御 9+165
魔術攻撃 56
魔術防御 11+165
■スキル■
<称号『魔物使い』解放スキル>
意思疎通LV1:言語を持たぬ者と何となく意思を通わせられる
使い魔契約LV1:自らが契約主となり魔物と使い魔契約を結べる
<自ら習得したもの>
逃走LV3:逃げ足が速くなる
■装備■
シルクのネグリジェ:着心地がよい高級品
プリシラコート:物理&魔術防御力+165、薄手の外套、プリシラ製作、【防護加工LV3】【耐久加工LV3】【防汚加工LV3】【防水加工LV3】【防燃加工LV3】
レザーポシェット:斜め掛けの革バッグ、【防汚加工LV3】【防水加工LV3】【防燃加工LV3】
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「え、魔物使い? 【意思疎通】に【使い魔契約】? こんな称号もスキルも聞いたことないぞ……」
「私もよ……」
まだ戸惑っているテオとネレディ。
俺は話を続ける。
「……俺も、実際に見るのは初めてなんです。ただ『魔物使い』って称号や、その称号で解放されるスキルの存在だけは、元々知ってまして」
まぁ正確には、“この世界で見るのは初めて”ってことで、ゲーム内では間近で何度も見てたんだけどな……と俺は心の中で補足する。
実はゲームでもナディは、「ナディをパーティに入れた状態で魔物と戦い、戦闘中にナディになつく魔物が現れる」という条件をクリアすれば、称号『魔物使い』及び、その称号で解放されるユニークスキル【意思疎通】【使い魔契約】を取得できる。
ナディが聞いた「魔物使いがどうの」という変な声は、おそらく称号およびスキル取得を知らせる音声――ゲームでいうところのシステムボイス――なのだろう。
ゲームでの称号取得イベントと、先程の様子――スライムに向けてナディが1人で喋る――が、あまりにも似ていた。
ただしゲームでは『ナディになつく魔物』が現れる確率は非常に低い。
そのため今回の討伐中にこのイベントを発生させるのは無理だろうと考えていたため、先ほどの称号取得は俺にとっても予想外だったのだ。
そして、ゲームでの称号取得イベントにはまだ続きがある。
俺はそのイベントの流れを思い出しつつ、今度はナディとヒュージスライムのほうを向くのだった。