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「仕事とは関係ねぇんだけどさ……」
豪が切り出すと、純は揶揄うように、ニィッと笑う。
「ん? さっそく女の話か?」
豪は奈美との事を、どう話そうか考える。
彼女との出会いがエロ系SNS、口淫だけの関係なんて事は、純には絶対に言えない。
なら何て答える?
『奈美とは合コンで知り合い、俺が彼女に一目惚れしたが、それっきりになってしまい、今日の工場見学で再会した』という事にしておこうか。
彼女に一目惚したのは事実だし、いいだろう。
だが純の事だ。
メッセージアプリの交換はしてないのか? と聞きそうな気もする。
一応交換はしてあるが、一度も連絡していない、と言えばいいか。
エロ絡みでの出会いが、こんなにも豪を考えさせ、悩ませるとは思いもしなかった。
「今日、工場見学した時…………以前から気になっていた女性がいた」
豪は純に目を合わせず、一口分残っているビールのジョッキを見やる。
「え!? マジか!! 誰だよ!?」
純が食い入るように身を乗り出してきた。
お前に言うのも癪だな、と前置きして、更に続ける。
「最後に見学した時にいた……検査作業やってた女性……」
「ああ! 高村さんか!!」
出会ってから三ヶ月ほど。
彼女の本名を、豪は初めて知った。
(奈美の苗字……高村っていうのか。本名は高村奈美……。いい名前だな……)
今日の奈美を思い返すと、顔がニヤけてしまいそうになる。
「ってか、高村さんと、どうやって知り合ったんだよ」
「…………合コン。一目惚れした」
「お前が一目惚れ? 意外過ぎだろ! つか、豪みたいなイケメンでも、合コンなんて行くのか。お前はお洒落なバーで女を釣りそうだけどな。連絡先は交換してねぇの?」
豪の予想通りだった事もあり、彼は微かに口元を緩ませる。
「メッセージアプリは交換したけど……一度も連絡してねぇな……」
これは嘘も方便ってヤツだ。
純が、もったいねぇな、とボヤいた後、聞き捨てならない事を耳にする。
「そういえば、ここ二〜三ヶ月くらい前からかな……。高村さん、すごく綺麗になったな……」
遠くに眼差しをやりながら、純がしみじみとした表情を浮かべていた。