テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#闇バイト
るしゅ
847
油味噌
17
2,331
翠
36
「お前の母親は」
父さんが言った
「全部知っている」
その言葉が。
頭から離れなかった
俺は美咲を見る
美咲も。
父さんを見ている
「……私の母が?」
美咲の声は震えていた
「何を知ってるの?」
父さんは答えない
「父さん」
俺は言った
「美咲の母親は何を知ってるんだよ」
「……」
「Rのこと?」
父さんは黙ったまま
「俺と蓮のこと?」
それでも。
答えない
「じゃあ何なんだよ!」
俺は叫んだ
「どうしてみんな黙ってるんだ!」
「俺だけ何も知らない」
「俺が生まれた日から何かが始まってた」
「蓮は生きてる」
「Rは俺の近くにいる」
「美咲の母親まで関係してる」
俺は父さんを睨む
「それなのに」
「俺には何も教えないのかよ!」
父さんは。
しばらく黙っていた
そして。
小さな声で言った
「美咲」
「……はい」
「お前の母親は」
「昔から嘘が上手かった」
美咲の顔が曇る
「……どういう意味ですか」
「お前には」
「何も話していないはずだ」
「Rのことも」
「悠真のことも」
「蓮のことも」
美咲が拳を握る
「じゃあ」
「母は何を知ってるんですか」
父さんは答えなかった
「教えてください」
「……」
「教えて!」
美咲の声が大きくなる
父さんは。
ようやく口を開いた
「お前の母親は」
「俺と一緒に」
「Rを終わらせようとした」
俺と美咲は。
同時に顔を上げた
「……え?」
「Rを?」
俺が聞く
父さんは頷く
「昔」
「俺たちは」
「Rというものを終わらせようとした」
「俺たちって」
「俺と」
「お前の母親だ」
美咲が息を止める
「母が……」
「Rを終わらせようとしてた?」
「そうだ」
「じゃあ」
俺は聞いた
「どうして失敗したんだ」
父さんは。
答えなかった
その代わり。
俺を見る
「お前が生まれたからだ」
「……え?」
俺の背中が冷たくなる
「どういう意味だよ」
「Rを終わらせるためには」
「誰かが犠牲になる必要があった」
「犠牲?」
美咲が聞く
父さんは頷く
「Rを受け継ぐ人間を」
「消す必要があった」
俺は。
言葉を失った
「じゃあ」
「俺は?」
「蓮は?」
父さんは。
目を伏せた
「二人とも」
「Rの候補だった」
俺は息を止める
「生まれた時から?」
「そうだ」
「だから」
「俺とお前の母親は」
「二人を守ろうとした」
「でも」
「Rは」
「二人を手放さなかった」
俺は写真を見る
幼い俺
その隣にいる蓮
「じゃあ」
「俺が知らないところで」
「ずっと俺たちは狙われてた?」
父さんは答えない
それが答えだった
美咲が。
ゆっくり口を開く
「……母は」
「私を守るために」
「悠真を監視してたの?」
俺は美咲を見る
「え?」
「私の母」
「悠真のことをずっと知ってた」
「写真にも」
「記録にも」
「何度も出てくる」
美咲の目に涙が浮かぶ
「じゃあ」
「私が悠真と友達になったのも」
「偶然じゃなかったの?」
俺は。
言葉を失った
その瞬間
父さんが言った
「違う」
美咲を見る
「お前と悠真が出会ったのは」
「偶然だ」
「じゃあ」
「母は?」
「お前の母親は」
「お前に何も指示していない」
美咲は少し安心したように見えた
でも。
俺には。
別の疑問が浮かんだ
「父さん」
「何だ」
「じゃあ」
「美咲の母親は」
「何のために俺を監視してたんだ?」
父さんは答えない
「俺を守るため?」
「それとも」
「Rにするため?」
その瞬間
父さんの顔が変わった
「……違う」
「じゃあ何だよ!」
「お前を」
父さんは。
言葉を止めた
「お前を」
「Rから遠ざけるためだ」
俺は。
息を止めた
「……美咲の母親も」
「俺を守ろうとしてた?」
父さんは頷いた
「でも」
俺は写真を見る
「じゃあ」
「どうして俺は」
「こんなことになってるんだ」
誰も答えなかった
その時
美咲のスマホが鳴った
着信
表示されている名前
**母**
美咲の顔が固まる
「……出ないの?」
俺が聞く
美咲は首を振った
「分からない」
「でも」
電話は鳴り続ける
美咲は。
ゆっくり通話ボタンを押した
「もしもし」
返事はない
「お母さん?」
無音
そして。
数秒後
声がした
『美咲』
「……うん」
『今どこにいるの?』
「家じゃない」
『誰といる?』
美咲が俺を見る
「悠真と」
電話の向こうで。
息を呑む音がした
『……悠真?』
「うん」
長い沈黙
『すぐに帰ってきなさい』
「どうして?」
『いいから』
「嫌」
美咲が答える
『美咲』
「私は何も知らない」
『……』
「お母さんが何をしてたのか」
「悠真のことを知ってたのか」
「Rって何なのか」
「全部教えて」
電話の向こうで。
母親が黙る
そして。
小さな声で言った
『……誰から聞いたの?』
美咲の表情が変わる
「自分で調べた」
『違う』
母親の声が。
明らかに震えていた
『誰から聞いたの?』
「だから」
「自分で――」
『悠真と一緒にいるの?』
美咲は答えない
その沈黙だけで。
母親には伝わった
『……そう』
「お母さん?」
『美咲』
母親の声が低くなる
『その人から離れなさい』
俺は。
思わずスマホを見る
美咲が俺を見る
「どうして?」
『その子は』
母親が言った
『危険だから』
俺の胸が。
嫌な音を立てた
「私の友達だよ」
『違う』
母親は言った
『あの子は』
少しの沈黙
『神谷家の人間だから』
電話が切れた
「……」
俺は。
何も言えなかった
美咲も。
スマホを握ったまま動かない
父さんだけが。
静かに呟いた
「……やっぱり」
俺は父さんを見る
「何が?」
父さんは答えない
「父さん」
「何だ」
「今の電話」
「どういう意味だよ」
父さんは。
俺を見た
「お前の母親は」
「美咲の母親を信用していなかった」
「……え?」
「そして」
「美咲の母親も」
「お前の母親を信用していなかった」
俺は。
言葉を失う
「二人は」
「最初から」
「敵だったの?」
父さんは。
首を横に振った
「違う」
「じゃあ」
「仲間だった」
俺は。
さらに混乱する
「仲間だったのに」
「どうして?」
父さんは。
静かに言った
「一人の子供を」
「どちらが守るかで」
「二人は」
「対立した」
俺は息を止める
「一人の子供?」
父さんは。
俺を見る
そして。
その言葉を口にした
「お前だ」
その瞬間
美咲のスマホが。
もう一度震えた
今度は。
母親からじゃない
知らない番号
美咲が画面を見る
俺も覗き込む
そこに表示されたのは。
一通のメッセージ
**『美咲のお母さんを信じないで』**
俺は息を止める
送り主は。
表示されていない
その下に。
もう一行
**『神谷悠真』**
俺の名前が書かれていた
美咲が顔を上げる
「……悠真」
「何?」
「これ」
「誰が送ったの?」
俺は。
答えられなかった
でも。
一つだけ。
嫌な予感がした
これは。
Rじゃない
蓮でもない
もっと別の誰かだ
そして。
その人物は。
俺たちのことを。
ずっと見ている
(第五十話へ続く)
コメント
1件
うわ、この展開……一気に核心に迫ってきた感じがしますね。美咲の母親がRを終わらせようとしてた、しかも悠真の父親と一緒に。そして「二人を守ろうとした」結果が今の状況って、胸が締め付けられます。最後の『美咲のお母さんを信じないで』ってメッセージ、しかも悠真の名前で送られてくるのが不気味すぎる……Rでも蓮でもないってことは、また別の第三者が動いてるってことですよね。設定が複雑に絡み合ってきて、読み応えがすごいです。続きが気になりすぎます!