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ギデオンに抱きしめられて目覚めること以外は、ここでの生活を快適に思っていたリオだったが、気になることがある。ケリーとゲイルのことだ。 馬の世話や庭仕事の手伝いをしている時は、ケリーやゲイルに会うことはない。しかし鍛錬に参加させてもらう時に、ケリーに会うことがある。
ケリーはリオを見かけると、必ず近寄ってきて、親しく話してくる。
リオは人懐っこいので、余程の嫌な人ではない限り、誰とでも仲良くなる。この一ヶ月で、親しく話す人がずいぶんと増えた。そういう人達に見せつけるようにして、ケリーが親しげに話してくるのだ。まるで自分が一番リオと仲が良いと言わんばかりに。
リオとしては、歳の近いアトラスとの方が仲が良いと思っている。アトラスは明るくて面白くて、話していると楽しい。騎士と庶民で身分が違うけど、友達だと思っている。
ケリーは何を考えているのかわからない。なぜリオに親しげに接してくるのかもわからない。絶対に裏があると思っている。だから話しかけられれば話しかけられるほど、不信感が募っていく。
それにケリーは、リオが鍛錬をしている間、ずっと見てくる。まるで監視されているかのような視線が、とても不快だ。全く気づいていない振りをするけど、鍛錬に集中できなくて困る。最近では、困るよりも腹が立っている。腹が立った勢いで鍛錬に励んでいたせいで、少し…ほんの少し、筋肉がついた気がする。
「ギデオン、ほら見て。筋肉ができた!」
「……そうだな、頑張ったな」
「うん!」
就寝前にギデオンに腹を見せたところ、少しの間をおいてギデオンが頷いた。
なんだその間は…と気にはなったけど、ギデオンが褒めてくれたのだ。
リオは嬉しくなって、ベッドに飛び乗ると、アンの頭を撫で自らギデオンに近寄って目を閉じた。
一方、ゲイルとは、あまり会うことはない。
朝にギデオンの部屋にゲイルが挨拶に来る時と、一日の仕事が終わりギデオンが部屋に戻って来る時に、一緒についてくるゲイルと会うだけだ。
リオとは特に会話もないが、朝には「おはようございます」と、夕刻には「お疲れ様です」と、リオに対しても声をかけてくれる。だからリオも、同じ言葉を返している。
ただ、最初の印象通りに、相変わらず怖く感じてしまうのだけど。
でもケリーのように絡んで来ないだけ、ゲイルの方が接しやすいのかもと思っている。