テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
1,231
#ワンナイトラブ
溶けちゃいそうなくらい甘い声で、極上の笑みをくれる常葉くん。
その声が鼓膜を震わせて胸に溶けて染み込むと、途端に視界が滲んで至近距離にあるはずの顔がぼやけていく。
「も、もっかい」
震える言葉を零せば、ぽろ、と溜まった涙が頬を伝った。
常葉くんの親指は、その涙を優しく拭う。
「好きですよ」
「もっかい……」
「はいはい。好きだよ、」
擽るみたいにそう言うと、一度だけ、軽く唇が触れ合った。
「依愛」
鼻先が触れる距離で私を呼べば、首を傾けて覆うように唇を塞いだ。
常葉くんの体温は私と溶け合って、息までも呑み込んでいく。
唇が離れると、小さくその顔を見上げる。
「わたし、まだ常葉くんの家に居ても良いですか?」
「好きなだけ、どうぞ」
「……っ、ずっと居ますよ、だるくないですか?」
「そうですね、ダルそうですね」
「や、やっぱりダルいんだ」
「あんた帰ってくるの遅いから、ひとりで待つのがダルいですね」
不意打ちに、乾いた瞬きだけを何度かして、「え?」と声を漏らしてその顔を覗くけれど、常葉くんは何故か、それを隠すように私の頭に顎を乗せた。
……だから、最近残業多いのかな。
同時に、ある仮定が生まれた。
「あんたの味に舌が慣れてきてんのもダルいし」
…いつも何も言わずに全部食べてくれるのも
「逃げんなって言うのに逃げるし、捕まえるのもダルいですね」
…………いつも、見付けてくれてたのも
ダルいんじゃなくて、本当は…………
「だ、だってそれは、常葉くんが好きになるなって言うから」
「ごめんね、可愛すぎたから」
何となく思ってしまったけれど、言うと不機嫌になってしまいそうなので心の奥に閉じ込める。
「じ、じゃあ……許します」
「許してもいいけど」
今度こそ、その瞳は完璧に私を捉えると、ちらりと覗く鎖骨をゆるやかに指でなぞった。
「もう俺、我慢しないからね」
片方だけ口角をくっとあげて、色っぽく見つめられれば心臓は一瞬で早鐘を鳴らし「は、い……」と、何とか返事をするしか出来なかった。
◆
常葉くんのベッドに身体を預けるのは、記憶しているだけで三度目の経験だ。
2人で家に帰り着いた途端、玄関先で抱き締められると
「早く、抱かせて」
なんて、余裕ない声を聞かせるから、すぐに寝室へ向かった。
甘い香りが充満する常葉くんの寝室。キスひとつせずに丁寧に抱き抱えられ、窓際の大きなベッドに寝かされた三分前の私。
視界が大きな影に遮られ、髪を撫でてくれると耳元までその手が落ちて眼鏡を奪い、それすら大事そうに閉じて腕時計と共にサイドテーブルへ置いた二分前の常葉くん。
そうして私の額に軽くキスを落とすと、常葉くんはネクタイを緩め、するり、と、滑らかに拘束を取る。気持ちだけが逸るから何処を見ていいのか分からずに、もじもじと足を擦り合わせる一分前の私。
くい、と、顎が持ち上げられて、その深い黒の瞳と視線が合えば、甘い不安が襲いすぐに息があがった。引き合う糸みたいに吐息が重なり、唇から熱が溶け合うと、境界線が無くなった今の私たち。
服もひとつひとつ綺麗に脱がされて、簡単に下着姿に変われば、まるで違う扱いに少しだけ戸惑ってしまって胸の前で小さく手を結んで見上げた。
何度かこんな事をした時は、私の気持ちなんてお構い無しに触れていたのに、なんだって今日の常葉くんはこんなに優しいんだ。
…………それだけが、違う。
昨日までの私たちとは確実に、関係が変わった証。
大事に扱ってくれてる、たったそれだけなのに、年柄にも無く照れくさくて、緊張もする。
だからその綺麗な顔は見れるわけなくて、視線は天井やカーテンへ向かって泳ぐ。
ぎこちない私に気付いてか、常葉くんは脇腹をちょん、と擽るみたいに触れる。「ちょっと」と笑い混じりに答えると突然唇が塞がれて、笑い声も口の中に消えれば次第に甘い吐息へと変わった。
緩やかにしなる柔らかい髪を撫でて頭ぜんぶを抱くように包み込むと、次第にキスが深くなり、舌先が柔らかく触れ合う。
食むように何度もキスを落とされると口の筋肉が解けて、緩んだ口元からだらし無く唾液が漏れた。
それすら舐めとるように舌で掬われ、顎、首筋、鎖骨、ざらついた舌先が伝っていく。
「と、常葉くん、」
「何?」
「電気、消そ?」
「やだ」
やだって何、やだって。
そんな一言にも、ふふ、と、口元が緩めば、気に食わなかったのか、触れていた胸の膨らみを寄せると先端を一気に口に含むので「はぁ、」と長めの吐息が口から漏れた。