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「…は?」
今、この黒猫…喋ったのか?
「おい…お前ーー
あれ…佐藤さんの親がさっきまで泣いてたのに…その声が聞こえてこない。
さっきまで色々な音が聞こえていたはずなのに…それすらもだ。
『この世界の時間は今、止まっている。』
猫は表情を変えることなく、淡々と話す。
『君はその目で何に気づいた?言いようのない違和感から何を感じた?』
「…もし、今までの違和感が鍵なら…この光景はもしかして実際に起こったこと…なんじゃないか?」
『…………。』
猫からは何の返事もない。これで正解…ということだろうか?
『…不正解だ。』
「…え?」
少し、残念そうな顔になった…こいつ…
「じゃあ、この世界は何なんだよ…俺が気づくまでずっとこのままなのか?」
『違う、この世界はお前の夢の中だ。』
「…夢?」
どういうことだ…?夢…?じゃあ、俺はただ少し長い夢を見ているだけなのか?
『それも違う。君は…ずっと眠っている。』
「心を読むなよ…ずっと眠ってるって、何が…」
…あ…そういうことか…
今までの違和感の全てに納得がいった。
『気づいたか。』
「…お前と会うの、初めてじゃないよな、俺。」
『……。』
そうだ、僕はこの夢を何度も繰り返して…
何度もこの”事実”に直面している。
「…何回目だ?この暗い夜を見るのは。」
『…分からない、でも数えるのも億劫なほどに…だ。』
病室の中から、光の届かない夜を見て、そう言った。
『ああ、そうだな…この夜が明けることは無い。残酷な事だが…』
「分かってる。」
そう、俺は分かっている…この病院での光景も、あの交差点で事故に遭ったのも…
全部、”僕”なんだ。
『君は現実では植物状態の人間だ。
その目はずっと開かないだろう。
それまでこの夜をずっと…ずっと…
それでも…夜を繰り返しても、いつか…
また君が朝を見る日が来るかもしれないな。』
「…さあな。」
病室にはいつの間にか、誰もいなかった。
また、この夢を繰り返すのだろう。
その度に僕は真実に辿り着く、何度でも…
目を閉じる直前、またあの鈴の音が聞こえた気がした。
チリン